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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編

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294/295

第293階 三度目の命の雫の目覚めの日 四人で

「スズラン、お願いできるかしら」

「えぇ、もちろんです。フルール様」

 魔女五傑(マレヴォレント)彼女(スズラン)は微笑みながら踵を返す。

 私は彼女(フルール)の着いた席の前に案内され、オーニソ先輩は私の隣りへと。

オーニソ先輩の前には彼女(スズラン)が座るみたいで。

 戻ってきた彼女(スズラン)はティーを飲むためのセルヴィサテ・アンプル(紅茶器セット)ールを運んでくる。

 親指の先と人差し指の先を合わせて丸を作った時の大きさと厚みの物が四つと、親指の先と中指の指の先を合わせて丸を作った時の大きさと厚みの物が二つ置かれる。

 四つ置かれた物はタサテ・アンプル(ティーカップ)ールの底で。

円の中心部を指で軽く触れながら形をイメージすると、あら不思議。

タサテ・アンプル(ティーカップ)ールを創っていく。

100%純魔法による物だから、王宮で使用されている物って感じだわ。

 残り二つの内一つは私とオーニソ先輩の中心に置かれる。

微笑む彼女(フルール)によって。

「スズラン、私が選んでも良いかしら」

 その問いに返答は、当然とのことで。

「ラナンちゃん、飲みたいのはなーに?」

 私を覗き込みながら、大輪のように笑うオーニソ先輩。

これは、譲り返すなんてできないわ。

「訓練の時に飲んだあの飲み物が良いかな」

 2人も納得したような顔で見合わせる。

意外と有名なのかしら?

「こちらはオーソドックスなルテ・アンプル(紅茶)ールにしました。

フクジュソウのレ ジュドゥフリュイ・レギュムですね、【黎宙時代】を思い出しますわ」

 こちらも円の中心に触れてイメージすると、

テイエール・アンプル(ティーポット)ールが形成されて中身が注がれていく。

「『黎宙時代』の懐かしさが込み上げますね、フルール様。

それにしてもオーニソガラムはあんな風に笑うんですね。驚きました」

「スズラン先輩? わたくしは人形ではありませんわよ」

 そういう意味では。 と答える彼女(スズラン)(スズラン)。

「妬いちゃうわ、ラナンキュラスと親しそうなオーニソガラムに。

あの頃より笑っているとはそういう意味ですよ」

 ふふーんとオーニソ先輩が笑いながら、

なぜか私に腕を回して抱きしめられる。

あの? 何やってるのよ

「可愛いいでしょーーー! ラナンちゃん!と

このあとも、おデートです!!」

 目の前の二人は見合わせて微笑む。

「えぇ、同行しようかしら。私も笑顔を増やしたいわ」

 オーニソ先輩に強く抱き寄せられる。

あのさぁ? ダメダメと猫が彼女(フルール)に威嚇するような表情がちらっと目に入る。

「まぁ、フルール様は同行できませんけど。

オーニソガラムにえらく気に入られたましたね、ラナンキュラス」

 私に返答させたい意思があるのかしら? 真っ直ぐと。

ピンク系の色の瞳が催促するように私を見つめる。

「えぇ、オーニソガラムに良くして貰えて実に光栄だわ」

 オーニソ先輩の顔を視界に入れてしまった私。

 予想は出来たけれど涙を溜め込んで、とっても嬉しそうな表情で大輪を咲かせていたわね。

 いいわね。誰かに大切にされるって。

「だから、共にこの場を用意して御招き頂きくださり感謝しております、フルール様にスズラン様」

 彼女(フルール)は私の言葉を受け止めるように破顔した。

それは光輝くような神の光のような笑みだったわ。

「あら、無理言ったのにね。用意できる最高のものをお出ししますわ、ラナンキュラス。

貴女に祝福があらんことを」

 そう言って彼女(フルール)はそのダイヤモンドのようなほそい人差し指で空間を割いた。

そして親指で摘んで何かを取り出した。

「『黎宙の知書空間』でケーキというお菓子がありまして、

そちらを魔女五傑(マレヴォレント)と世間で呼ばれる彼女達と一緒に作りましたのよ」

 知らない見たこともない果物のような何かが、白い生地の上で花が咲くように色付かせている。

「もちろん第七世界の青き星の民が扱う材料と、すべて同じにしても意味がないですわ。

私達は人として最も発展していった民、何もかもが遥かな未来を歩み続けている」

 冷たくも燃え上がる誇りのような自信が底にはあって感じられた。

「もっと我々により最適な味への挑戦をした、ということなのよ。自信はあるわ」

 彼女(フルール)の言葉を彼女(スズラン)が繋いでいく。

 私とオーニソ先輩の喉が鳴る。

確かに漂う気配からとても美味しそうだわ。

「名付けを忘れてしまいまして、それでも食べていただけるかしら。ラナンキュラスにオーニソガラム」

 私とオーニソ先輩は目が合う。

未知への挑戦にほんの少しの不安と大き過ぎる好奇心が重ねられ、私達は頷き合う。

彼女(フルール)から差し出される風で創られたフルシェットゥヴ(フォーク)ォンを

手に取って準備は整ったわ。

 フルシェットゥヴ(フォーク)ォンは、斬りやすくて食べた後に霧散させられる。

それに少量の風と一緒に食べるため洗わなくていいわね。

 専用のラ・メール・エモシ(まほうすい)オンが

フルシェットゥヴ(フォーク)ォン入れに少量塗ってあり、

ラ・メール・ソンティ(まほう)モンの得意不得意はまったく関係せず、

フルシェットゥヴ(フォーク)ォン以外は作れないわ。

 フルシェットゥヴ(フォーク)ォン以外は作れない点が、

得意不得意はまったく関係しないに強く影響しているわね。

 ラ・メール・ソンティ(まほう)モンは心、思考、思いなので負担が極端に少なくなるということ。

ちなみに優秀な王院生は、自分で自分のフルシェットゥヴ(フォーク)ォンを作れる。

 彼女(フルール)の創ったフルシェットゥヴ(フォーク)ォンは

私の指に合わせて大きさに薄さを変化させていく。

それは彼女(フルール)のラ・メール・ソンティ(まほう)モンは

繊細で神域に達している意味も持っていると思ったわ。

 だって怖いわよね、相手側にこんなに繊細に影響を与えるってことは。

相手側の弱点を綺麗に撫でて影響を与えてしまうってことで。

 でも、ケーキは食べるわ。

横目で見るとオーニソ先輩が口に運んでいく。

私も追いかけるようにフルシェットゥヴ(フォーク)ォンで運んでいく。

 あ、これダメなやつかもしれないわ。

舌に甘みが浸透するわけないのに舌先に染みていく。

その上からふわりとしたスポンジが舌へとパンチする。

「正直に申し上げてよろしいでしょうか」

 あー、分かりますよ先輩。

頬がちょっと紅葉していますね。

私もおんなじ気持ちです。

「あら、いいわよ。ちなみにスズラン達には評判が良かったのよ」

 激しく頷く彼女(スズラン)

それは同意。

気持ちが通じ合うなんて!

「稚拙な表現にはなりますが、とても美味しいですわ」

 薄らと笑みを宿す彼女(フルール)は、私に目を添える。

ちょうどケーキが口の中で溶けていき喉奥を通り過ぎていたところで。

「ケーキかと言われるかというと違いますが、

まるで天の川が微笑むような優しさと甘さでとても美味しいです」

 彼女(フルール)は恥ずかしそうに自身の髪を掻き分ける。

どことなく頬も赤く染まっているわ。

「面白いわね、目を見れば分かるわ。きらきらと輝いて可愛いらしいわ、ラナンキュラス」

「ラナンで良いですわ」

 私は自然と口にしていた。

「えぇ、そう呼ばせていただくわ、ラナン。

そうだわ、これからはフルールと呼んでくださらない? ラナン」

 私は頷いた。

「フルール、始めないですか? 私とオーニソ先輩だけ先に食べてて」

 フルールと彼女(スズラン)は目を見合わせて微笑み返してくる。

「オーニソ」

 へ?

少し恥ずかしそうなばつが悪そうな、そんな感じで私は服の袖をオーニソ先輩に掴まれる。

「プライベートでは先輩をつけなくて良いですわ」

「分かりました、オーニソ」

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