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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編

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293/296

第292階 三度目の命の雫の目覚めの日 二人で

「試合を観戦させる方向性ももちろん考慮はしましたわ。ただ、戦いたくなってしまいそうですし」

 わたくしもラナンちゃんもと一言添えるオーニソ先輩。

エクレールを後にして私達はプロムナード・デ・ブリーズを利用して次の目的地へと向かっていた。

「ラナンちゃんに楽しんでもらって喜んでもらって、先輩としての力を魅せつけるのが今日の目的ですの」

 冗談なのか本気なのか、まぁなんでもいいわ。

私もプロムナード・デ・ブリーズに慣れてきていた、コツが掴めてきたみたいだわ。

「エクレールは、後日でも良かったのでは?」

 先を行っていたオーニソ先輩に追いついていた。

正直なところ、他のことの方が楽しめたような。

「一人で『魔女五傑(マレヴォレント)』に会うのは不安だったのですわ」

 耳元で囁かれた。

流れるような姿勢運びで一瞬で距離を詰められていた。

「ほんとうは?」

 オーニソ先輩は、私から少し距離を取って振り返った。

「『黎宙のエース候補』としてのオーニソガラムでした、エクレールでのわたくしは」

 そういうことなのね。

「良い表情ですわ、ラナンちゃん!

そしてこれからは『才能の魔王』も脱ぎ去ったオーニソガラムとしてラナンちゃんと遊びますわ!」

 着いてきてくださいな、なんて言いながらオーニソ先輩は

一筋の風のようにプロムナード・デ・ブリーズを軽やかに進んでいった。

次は何処に連れていってくれるんだろうなんて。

 実は楽しみにしている私を発見していたわ。

時々私を目線で気にかけながら進んでいくオーニソ先輩。

オーニソ先輩の背中を追いかけながら、視界に広がっていく。

 物理法則に魔法はおろか、神々の力でさえ届かない法則で構築された範囲の中心に浮かび居座る。

居城。

「『王宮グレル』ですわ。西の大帝国と謳われる私達の地の中心に座する

皇帝陛下がすべてを見渡すと民の間で語られる聖域」

 久しぶりね。

そう、アオナが心の中で呟く。

彼女(アオナ)は懐かしささえ感じている。

「あまり驚かないのですわね。なんだかしっくりきますけど」

 彼等彼女等がいる。

あの日、私の地に【トーラルカエ】へと侵攻してきた。

元気にしているのかしらね。

「直接訪れる機会があるとは思いませんでしたので、困惑していましたよ」

 オーニソ先輩に同行していたから辿り着けた。

そう考えるのが自然だわ。

「【黎宙】は上流貴族ですもの、拝見することは申請すればいつでもできますわ。

でも、これからは【黎宙のNo.2】の地位とも評される

【黎宙のエース候補】の権限で王宮内部に入りますわ」

 なぜか横からオーニソ先輩に抱きしめられる。

「あの?」

 オーニソ先輩は不安を吹き飛ばすような笑顔を私に近づけて来る。

「ラナンちゃんはもちろんわたくしの権限で連れていきますわ。

景色は大帝国内でも有数でとーっても綺麗ですけど」

 確かに綺麗だわ。

海のような宇宙のような異質ともいえる光景が回転しながら混じり合っている。

 ほんのり暗くて物静かさを美しいと表現するならオーニソ先輩の言葉通りだわ。



「裏から侵入とかではないですよね?」

オーニソ先輩は私の軽い冗談にケラケラと腹を抱えて笑っている。

「試みたことはありますわよ。先代のエースで皇姫であらせられるフルール様に捕まって、

ティーと甘いお菓子をたくさんいただいて返されましたわ」

 試みたことあるって。

皇姫フルール、真っ白な彼女も住まう地。

魔女五傑(マレヴォレント)】も出入りするのかしら。

「美味しかったですか?」

 虚を疲れたような顔を微笑みで隠していた。

でも、気になるのよね。

美味しいはとっても大事だわ。

「当時はこの世で一番美味しいものだと感じましてよ」

 余程高価だったのかしら。

オーニソ先輩と彼女(フルール)がお茶する光景ね、ちょっと想像つかないわ。

「いつか食べてみたいわ」

「王宮での用事のあとはお菓子を食べる予定ですわ、わたくし持ちで」

 直後オーニソ先輩が振り返り、私を守るような立ち位置へと手を添える。

世世(わたしのまほう)も強く反応していた。

「あら、その話しに私も一枚噛んでも良いかしら」

 足が歩を刻む。

静寂を汚さずに。

もう一歩、歩が刻まれていく。

「そう警戒されなくても良いじゃない。

『黎宙』のお二人さん」

もう一人は【魔女五傑(マレヴォレント)】。



 大きく開かれた入口を通り抜けていった。

王宮内の天井は遥か高く、空のような色を携えて、

先頭を微笑みながら歩く彼女(フルール)を讃え祝福しているようで。

「スズランと散歩していましたのよ。

ラナンキュラスにオーニソガラム」

 私のあとを歩きなさいと私が指名され、

オーニソ先輩が続き、しんがりを【魔女五傑(スズラン)】が務めていた。

「散歩が趣味なんて意外」

 彼女(フルール)はくすくすと笑っていた。

「えぇ、そうね。普段散歩はしませんし、面白い組み合わせの

お客様の心境が気になって飛び出しただけですよ」

 あぁ、そうかい。

からかわれていただけなのね。

複雑。

「オーニソガラムが訪れることは知っていましたし、

でも【黎宙】の連れが貴女なんて思いもよりませんでした、というのは本当のことですよ」

 貴女に会えて浮かれておりますのよ、これでも。

と風がかき消えるような声量が耳に触れていく。

「今日は剣は使わないわよ」

 感情的には使いたいかもだけど、気分的にはいまいち乗らないわ。

「本日はお客様として御相手しますから、安心して」

 ふーん。

「オーニソガラムからの要望を叶える方向でご助力いたしましょう、

ラナンキュラスを連れて来て下さるなんて」

 オーニソ先輩の要望?

【黎宙】に関連することなのかしら。

「私は『黎宙の新人』です」

「わたしと真面目に打ち合いしておきながら」

 彼女(フルール)は柔らかな笑みを添えて返してくる。

一瞬だけ横顔で。

綺麗な笑みだと思った、とても好意的な。

 それから私とオーニソ先輩はある一室に案内された。

移動の際に【王宮グレル】の仕組みとして時の魔法に拾われる感覚を感じている。

 それはもっと繊細で感情をスプーンで救われるように心に寄り添っている。

心身的な負担を減らすことを中心に構築されているみたいで、ほのかな清涼感もあったわ。

 私にはもちろん世世(わたしのまほう)の方が私にとって居心地が良いのには変わらないけれど。



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