第276階 大勇者の突き
魔力の伝導も断ち切って、濃度も著しく低下していた。
それだけお父さんの突き技はすべてを葬って存在を許さなかった。
それでも、それでも、それでも。
私は無傷で、汗さえ滴らず、身に付けている物も一切動いていない。
完封して受け流してしまった、事実が今この瞬間に広がっていた。
それでもお父さんは喜んでいた。
「自身は……あった。でも、それでもハツミは俺を越えていった。
『哭寂』は二刀で使う突き技の俺流の奥義だ。
敗れはしたが……参考までにな」
声が出ない、出て、出ろ!!
「私は使っていないよ!!」
叫べた!伝えられた!!心のままに。
「!!」
お父さんは驚いていた。
すぐに花の様に笑い、剣を二本の剣を置いた。
いたわる様に、気遣う様に。
「そうだな、使ってくれよ!」
私は思わず飛び込んだ。
お父さんの大きな胸の中で。
泣きじゃくった、幼いころを思い出すように。
「大切にする!!、お父さんの『哭寂』で悪い奴等を沢山葬る!」
「あぁ、楽しみにしている、その為に俺に放ってくれ」
当然といえば当然。
私は距離を取った、後方に移動して。
お父さんを視界に入れ見据えた。
ーー哭寂
お父さんは構えていた。
それはもちろん確認した。
速度が《しろい まほう》に乗った。
お父さんは受け止めた。
天夢々魂を前面にニヒルを重ねて。
勢いがあった、強い勢いが。
ニヒルに罅が入り亀裂が走って
砕ける音がした。
血が噴き出る音もした。
「はぁ……はぁ……」
天夢々魂と《しろい まほう》が打ち合い止まった。
私が《くろい まほう》で下方から止めた。
《しろい まほう》を上方に流すことによって。
「武器の強さも何もかも上、
魔法での身体強化も誰も届かない位置にいるんだな」
お父さんの息は上がっていた。
死を身近に感じた恐怖が宿っている。
それを隠すような笑み。
「私は私の魔法しか使えないから」
私はニヒルを再生させた。
お父さんは驚く表情を見せた。
でも、その事には何も言わなかった。
「ハツミだけが使える魔法……なんだな」
私は無言で頷いた、そう今は。
私は集然を使用する回路を授けることが出来る。
フォアローゼズのマスカリア、マテハ、マユナ、イムは私の影響である程度使用できる。
「こんな気持ちにさせられたのは、初めてかもしれねぇ…… !!
強くなりてぇなぁ」
「お父さんは強いわ、もう十分過ぎるほどに」
お父さんは小さく笑った。
「いや、言葉が良くなかった、嬉しいんだ。
愛する娘がそういう風な気持ちにしてくれて
何よりただただ、うれしいんだ」
そして頭を撫でてくる。
「大きくもなったんだな」
やっぱりお父さんの手は大きい。
温かくて、思いやりがあるわ。
私も成長して大人になったはずなのに。
「変わらないよ」
少し、驚くお父さん。
黄色い花の様に微笑んで。
私と同じ目線に視線を落とす。
「ちゃんと成長してる、子供が出来て
ちゃんと考えて思いやれていたら分かる
ハツミなら出来るし、分かる」
私は思い出に包まれた。
お父さんとお母さんが与えてくれたもの。
言葉に行動に日々が、優しい風の様に駆け抜けていった。




