第275階 お父さんの技
「いくぞ、まずは受けながら相手への影響を覚えてほしい」
父との距離が縮まった。
もう、技が始まっている。
その事に気付くのに、時間を使い過ぎていた。
「天子牙&天子尾」
右手に握った《くろい まほう》に電撃の様な衝撃が走った。
受けた、攻撃を。
同時に目には見えなかった攻撃を左手の《しろい まほう》で受けた。
受けた?そう言えるの。
疑問を持ってしまうほどに吹き飛ばされる。
右手は痺れている。
「天丑牙&天丑尾」
追随する。
また右手に電撃の様な衝撃が場所がほんの僅かにズレて走る。
更なる攻撃を《しろい まほう》は受けるはずだった。
ーー《はやい わたし》《わたし はやい》
力の無さを速さで補う様にし、
《しろい まほう》で見えずらい
尾の様にしなやかな攻撃を逆にはじき返した。
「!!」
驚くお父さんを尻目に、私の歯車は噛み合い始めていた。
ーー天子牙
ーー天子尾
《くろい まほう》で電撃の様な鋭い一撃を、
《しろい まほう》でしなやかに湾曲し五感から逃れる一撃を
お父さんの《ニヒル》と《天夢々魂》にそれぞれ叩きこんでいた。
「な……」
それは確かな一撃だった。
お父さんは私の繰り出した技を
お父さんの斬撃を受けて後退る。
「見よう見まねで……」
お父さんは笑っていた。
その笑みは命の削り合いを好む笑み
自分を高みに引き上げてくれる者を尊重する笑み。
「天寅牙&天寅尾」
ーー天丑牙
ーー天丑尾
お父さんの新しい技に対して
私は一つ前の技で返していった。
ほぼ綺麗に打ち消し合ってくれる。
《くろい まほう》の【牙】と《ニヒル》の【牙】、
《しろい まほう》の【尾】と《天夢々魂》の【尾】。
剣撃が交じり合い、交差し、空間をねじ切り反発ではじき返す。
お父さんの卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥、子……
私の寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥、……
上がる、一巡、二巡、三巡と【世世】の感覚が研ぎ澄まされていく。
12の祈りの文字の変化、変化の終焉時に覚醒する。
お父さんは魔法は使えない、でも魔力を持っている。
それも最強と呼べるに相応しい量と質を両立させた純度の高い魔力。
その魔力が全身に巡っている。
その魔力の巡りと微細な動きを再現する様に
【世世】で構築していく。
それが私の戦闘スタイルの基礎で基本。
お父さんを真似する事、近付けていく事、呑み込む事。
私に重ねわせる事、強度を加える事、軽さを加える事。
「ふぅうううううううう」
目の前で二刀を構えるお父さん
お父さんの呼吸をする音が、魔力を練り上げる音が響いた。
練り上がる魔力は空間を揺らし、傷で抉る。
それは体内で留めていても、を意味している。
そう、それだけ本気で相手を、訓練をしてくれている。
私も構える、お父さんと同じように。
「突き技を、俺の編み出した突き技で、その二刀を貫く」
両方を重ね合わせて、片方を砕かれる。
その方が、え?《しろい まほう》を前に?
《しろい まほう》が語りかけてくるなんて。
「いくぞ」
それは必殺だった。
私は飛び込んで勢いで速さで殺すつもりだった。
駆け抜けていった、構えた《しろい まほう》を中心に。
「上方に逸らされた……?」
重ねた《くろい まほう》にも私は守られて。
私の後方が吹き飛んでいた。
お父さんの驚く顔が私が何をしたのか、物語っていた。




