第274階 お父さんの二刀流
「見事だ……ハツミ、かつての俺の師匠を完膚なきまでに打ち破るとは。
いやこんな日を夢見なかったわけではないが、夢じゃないんだな」
お父さんは私の頭を撫でてくれていた。
ゆっくりと大きな手のひらで。
私は癒されていた。
「私が可愛くてか弱い女の子だから諦めていたの?」
私は意地悪な事を言ったと思ったわ。
私は私を知っていた、きっと誰よりも弱く生まれてきた。
【集然】に気付くまでは私は普通さえも保てなかった。
「ハツミらしく生きて欲しいから、俺の我儘は忘れようとしたんだ
いつからか、いや忘れない。ショートソードを与えてから3日目からだった」
その日初めて魔皇の声を聞いた。穏やかで力強い炎の様な声。
初めて白亜剣を握った、白く美しかった。
初めて漆黒剣を握った、黒く吸い込まれそうだった。
「私も憶えてる!ずっと睨めっこしていた」
重すぎて持てないし、憎くて憎くて堪らなかった。
でも私はお父さんには成れない。
お父さんは目標だけど、私はお父さんに成らなくていい。
「難しい顔をしていたハツミが晴れやかな顔をしていたんだ。
その日からハツミは俺とナティラの目を搔い潜る様に行動し始めた。
不思議に思うと同時に嬉しかったんだ」
バレてました。
「ナティラには魔法の才が溢れていた、それをたっぷりと受け継いだんだなって」
お父さんは私に向けて笑っていた。
光が輝くような笑みだった。
私の心を温めて照らしてくれた。
「良いんだ、お父さんとお母さんの娘で」
私は満ちていた。
その心持から、自然と出た言の葉は
お父さんの表情を切ないものにさせていた。
「もちろんだ、ナティラも!
さぁ、始めようか、俺の二刀流を教える!」
私は【集然】を信じている。
右手に《くろい まほう》 《まほう くろく》 《くろく くろい》 《くろい ……》
左手に《しろい まほう》 《まほう しろく》 《しろく しろい》 《しろく ……》
魔皇が笑った様な気がした。
「あの時、戦った時よりも鋭く強くなってるな!
二刀流の方が強いなんて子供じみた事は言わない
それでも俺は伝えたいんだ、ハツミに、俺の愛娘のハツミリアに!!」
空気が裂けて駆け抜けていった。
何があったかは今は問わない、でも何かがきっけで一刀流に路線を変更した。
どっちが本物の才能か分からないぐらいには威圧感があった。
私は呑まれてしまいそうで忘れそうになった。
訓練だから、そんな甘えがどこかにあったわ。
剣を構えてもらって痛感する、神々の夢と謳われた大勇者。
《みらい わたし》で私自身の力を最大限に引き上げて、
《みらい わたし》《わたし めがみ》《めがみ いきる》《いきる ......》
《かむい とくい》で目の前のお父さんの能力を著しく下げていた。
《かむい とくい》《とくい てんの》《てんの ひかり》《ひかり ......》
技だけじゃない、お父さんの背負ってきたもの
すべてを受け継いで、この先を私は歩んでいく。
その覚悟が足りなかった、だから今この瞬間に創る。
これは【集然】じゃない。
私の心で気持ちで感情で、私の中心が問われる試練。
【集然】はお母さんのおかげで研ぎ澄まされた。
それでもお父さんが剣を二本握って立つだけで、
【集然】はひり付いていた。
危険視号を光らせていた。




