表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

273/293

第272階 あの日

 私はあの日、転生を行った。

目的は色々あるけれど、知りたいという欲求が

炎のように熱く荒く滾り、膨れ上がっていたわ。


 その気持ちを冷ますように、彼ら彼女らの統治する

【西の大帝国】に【太陽人】に私は成った。

生まれ変わるはずだった。


 私は出会った。

生きる事を手放そうとしているあなた(ラナン)に。

あなた(ラナン)の心の中におじゃまするように。


 凍り付いた氷像の様に心も体も。

自らを凍らせて閉ざした、あなた(ラナン)に。

(アオナ)を見ても表情一つ変えずにこっちを振り向いた。


 その日、(アオナ)あなた(ラナン)の精神的な大きな傷痕が、

身体を侵食して巡っていって日常を奪っていた。

事を知ってしまった。


 心の空間で膝を抱えて座っている貴女を

私はほおっておけないと、そんな気持ちにさせた。

転生は精神を乗っ取り奪う魔法ではないわ。


 だから今回は不思議だった。

死に抱かれて連れ去られようとしている心を目の当たりにするのは。

彼女がラナンだった。


「貴女は生きたい?」


 彼女(ラナン)は私の問いに、目配せで私の問いに応える。その表情は重く暗いもの。

生の灯火の揺らめきは小さく、腕に付けられた治りかけの薄い傷が

死神の鎌から滲み出た毒となって全身に侵蝕している、そう感じた。


 特に心、精神には皮肉なまでによく効いているみたい。

彼女(ラナン)は首を振る様に小さくゆっくり、小刻みだと感じる様に

震わせている。


「もう……いいの。御父様も御母様も生きて欲しいと頑張っている。

でも、もう怖いの。私の右腕を斬ったあの男の顔が蘇って……夢幻(セクス)様……

貴女様に憧れているってお伝えしただけなのに」


 集然(わたしのまほう)が自然と揺らめく、

映し出したのは現代(天華)ルシファー(サー・サマエル)

(アオナ)が地極に幽閉し続けているあの塵屑か。


 もう大丈夫だと言ってあげたかった。

それでも、私の唇は閉じたまま、閉ざされていた。

凍り付いて、静寂を詠唱するように。


「ねぇ、貴女は女神様、それとも死神さん?身体を乗っ取りに来た幽霊さんかも。

次の人生はもういいの。私は海の様なお空に身を委ねてゆっくりと瞼を閉じるの

レサト御父様、ガーベラ御母様、ごめんね。弱い私でこんな娘で……!!」


 私は咄嗟に彼女(ラナン)の手を握り締めて私の両手で包み込んでいた。

どうしてそうしたのかは分からない、分からなかった。

でも、それでもそうしたかった。そうしてあげたかった。


「魂を吸い取ろうと…して…い…る……の?」


 彼女(ラナン)は私の手に額の温もりを押し付ける様に

顔を伏せた。

彼女は泣いていた。涙を流せない精神体で。


「助けて……あの男から……『命の雫の見続けている夢』の恋人から」


「大丈夫よ、私が!このアオナ・エカルラートが!!その男を地極(まおうのじごく)に送ったわ!

あの男は今も苦しんでいる!絶対に逃れられない!!貴女をこんなにも傷付けた罪を償わせる!」


 口が滑らかに動く。

集然(わたしのまほう)は、彼女(ラナン)の心と身体に敬意を表して、

私の口を閉じさせていたから。


 私の精神体は転生するにあたって、彼女(ラナン)の傷によって失われた部分に

結合を開始していた。だから補助的な役割に徹し、主である彼女(ラナン)

尊重する動きをしていたってことなのね。


 現代(天華)ルシファー(サー・サマエル)によってつけられた腕への傷、

外から見れば、完治済みに感じられるほどに回復している。

それでも精神体への影響は強く強く残っていた、そういう事。


「こんなのいけないこと……だと思うけど、安心した。

私を辛い目に合わせた男がちゃんと誰かに謝れるようになるなら

それでいいかも……」


 そうじゃない、とは言えなかった。

彼女(ラナン)は人の善性を信じきっている。

彼女(ラナン)自身が善性を、尊いものを持って生まれてきたから。


「いいのよ!私は貴女がどんな事を思って口にしても『そうだよ』と

伝える!何度でも、何回でも!」


 私の中で感情が滝の音の様に溢れてしまった。

溢れて零れて、言の葉として舞い散っていく。

包んであげたいと、そう感じた。


「優しいから幽霊はなさそうかな。やっぱり死神さんだね。

あの男をじごくに送れるのは女神様じゃないよね。

きっと神の国で一番強い死神さんなんだね」


「えぇ、どんな存在でも神様でも死を与えられるわ」


 神の国で一番強い死神さん、ね。

死、神への死か。そうね私は七大神王を葬った。

なにも間違えてないわ、肯定する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ