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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編

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264/307

第263階 時鯨

「そういえば、ラナンさんは新人さんなのですね。

そして階級は上から漆番目の種でしたね。

早急ですが、魔法の色を見てみましょうか。テン!最初の共同作業です」


 時空を隙間から這い出るようにテンはぬるりと現れる。

人が呼吸をする様に時を操る時鯨。

テンは自身の目の前で白い球を膨らませていく。


「懐かしいですわ」


 オーニソ先輩は口元を緩めていく。


「プラは統一された虹色だった、魔女五傑(マレヴォレント)のキキョウは青みが強い虹色だった。

オーニソは緑の風の欠けた虹色だった、そして緑を風を補う様に大きかった。

アマランはどこまでも透き通りすべての青を連想させる青色だった」


 過去を懐かしむ様にユキさんは言葉を紡いでいく。


「先代のフルール様は、白く白く白いどこまでも広がるとてもとても大きく荘厳だった。

歴代の誰よりも早く入団した貴女の輝き、とくと拝見させていただきます」


 私は分かっている。

自分を試されること、だから。

ご期待には添えられない。


「ラナン…準備できたよ、触れてみて」


 心の中でうんと肯定した。

テンの気持ちを、払いのけたくはなかったから

それだけの大きな気持ちで、右手を近づけていって。


白い球に触れる。


 「「「「!!!」」」」


「何もない!?」


プラ先輩が。


「無くなった!?」


オーニソ先輩が。


「これはどういう?」


アマラン先輩が。


「分かりかねますね。生まれたての状態でも

色が付き、小さくとも変化が現れる」


 ユキさんが首を傾げ。


「透明…?」


 テンさんが言葉を絞り出す。


「無機質の空気でさえ色が変わる、実際に今回は白へと」


 その時だった。私達を何かが包み込む。

温かい腕に包まれていくように。


「ボクガ、ツクロウ」


 それはフユの腕で声の音だった。

彼の腕は私達を外界から遮断した。

伸びてくる二つの腕で透明な球が生成される。


「フユ、これはすべてを遮断させたのですね。

貴方の腕に触れている限り、私達は生きていられる」


「ラナン、ココロノママニ、オモウガママニ、キミハイキテイルヨ」


 それはそれは優しい音だった。

私は(ラナン)の腕にアオナを重ねるように。

透明な球に触れた。


 触れた瞬間。

恐怖と高貴が舞った、明確な形を持って。

第七世界の青き星の民ならば、龍という名の。


 それは雷よりも鮮烈で光を置いていくほどの速さで。

ここにいた全員を。

その生命の中心を駆け抜けて通り過ぎていった。


 それは彼女達に彼の冷や汗を見ればわかった。

私だけが涼しい顔をしている。

まるで歪な不協和音を奏でるような不自然さで。


 私以外を圧倒し、溢れ出ていつでも暴発しそうな恐怖と高貴も、

小さく小さく丸められていく。

男と女を象った相反する何かの手によって。


 そして形を持った。

男女は恐怖と高貴を包み込む様に手を握り合いながら

心臓を象っていく。


 その形は女神を連想させ、その女神は色を持った。

赤にも橙にも黄にも緑にも黄緑にも青にも紫にも、

黒にも白にも透明にも虹にもすべてと言い表せるほどに。


 色が様々に変わっていった。

常に同じ色はなく、すべて異なる色だった。

フユが魔法を解いたため、私以外は安堵していたわ。


「呑み込まれそうでしたわね」


 オーニソ先輩が少し疲れた表情で

小さく言葉を紡ぐ。


「えぇ、始めてです。先代のフルール様を超える事は…

未来永劫ないだろうと思っていたのですが、ちょっとどう比べていいのか

分かりません!!それにめちゃくちゃ怖かった!」


 ユキさんが涙目になっている。


「フユだけは知っていたんだろうね」


 テンさんが小さくつぶやく。


「あぁまでしないと見えないって事は

この国の才能の極致に座する皇帝達も

認識できないほどに深いって事なのか」


 プラ先輩が目を見開いて驚いている。


「えぇ、そういうことでしょうね。

私よりも深く…心の奥底のもう一人の

何かでさえ打ち震えていた」


 アマラン先輩が同意する。

そんなアマラン先輩の方向が一瞬だけ、

ほんの一瞬だけ小刻みに震えたような気がする。


「それは相当だな」


 プラ先輩が意味深に呟いた。

いつもより声色が重く響いた。

古い木造建築の扉が開くような。


 アマラン先輩が何か特殊な何かを

飼っている、封印しているのに気付く。

纏う雰囲気に神々しさを感じるのもそれの影響なのかしら。

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