3.一人目
滝沢 侑也……主人公。神の種を宿してる。
仲野 千鶴子……主人公の幼馴染。
キリコ……警察庁特務係。
チャコ……キリコの部下。
「まず君達が今まで生活していたのは表世界と言われる普通の世界だ。そして、これと背中合わせに裏世界というものがある。ただの名称なので別世界とかがあるわけではないのだが、ただ区別するためにそう呼ばれている」
キリコの話はいきなり現実とは思えない話だった。
「そうだな、先ほど滝沢少年に提示した宇宙人や幽霊のような存在は普段から身近にいるのだが、普通は見えないように共存している。それが何らかのキッカケで表社会に出てきてしまったのが目撃されてしまったものなのだよ」
「そんな……」
キリコの話は俄かには信じられなかった。
しかし、今俺はチャコの不思議な力で身体を拘束されている。頭ごなしに否定することができない。
「いきなり信じられないのは分かるが、このまま話を聞いてくれ」
キリコは俺の反応を確認することなく続けていく。
「それで裏世界にはそこに君臨する神という存在がいたのだが二千年近く空位になっている」
「えっ? 二千年も神様っていなかったんですか?」
「神と言っても君が想像した存在とちょっと違うのだけど、なんと言ったらいいか……裏社会のアイドル的な存在になるのか……とにかく、神が誕生するという神託があったのだ」
「え? 神託って神のお告げみたいなのですよね? それなら神様はいるんじゃないんですか?」
「君は細かいな……その通りこの神託を告げる書があるのだが、この方が君が想像する神に近い」
「なんだか、ややこしいですね。それでその神託と俺や仲野が何か関係あるんですか?」
「担当直入に言う。滝沢少年、君の種から産まれる初めの子が神になる、と神託書は告げたのだ」
「はっ?」
これは何のドッキリなのか?
カメラでも仕込まれてるんじゃないかと確認したいが、あいにくチャコの能力で首が回らない。
話についていけない。頭痛がしてきた。
「それで各種族から代表一人が君と子作りをする権利が与えられる。もちろん君にも選ぶ権利はある──」
キリコが言うにはこういうことだった。
一、俺の初めの子はこの世界の神という存在になる。
二、各種族から代表一名が俺に子作りを依頼する権利を持つ。
三、種族とその代表者は神託書に名前が記された者だけが可能。
四、先着で十の種族までとする。
五、不要な争いをしないために、俺や他の候補者や関係者に対して命の危険を感じるような直接的な危害はもちろんのこと、脅迫などの間接的な攻撃も禁じる。
この五つの条件のもとに俺を攻略しに来るらしい。
いや、そんなの急に言われても信じられないのだけど……
「キリコさん。仮にこれが本当だとして、もう十人は決まってるんですか?」
「いや、まだ一人だけだ。人間種だけだ」
「人間? それなら、もうその人に決めて他を断ることもできるのですか?」
「それもできるが、もし他の種族から魅力的な者が来たらどうするのだ? 例えで人間社会では天使のような可愛さという表現があるが、天使種からの使者があるかもしれないぞ」
それは魅力的な話だが、
「それって逆のパターンもありますよね? オークやゴブリン、それに自分の想像できないような訳の分からない種族……直接的や間接的な危害がなくても俺が断れないような状況になるかもしれないし……」
「その通りだ、滝沢少年は聡明だな」
キリコはそう言ってニヤリと笑った。
「で、その人間の方とは希望すれば会えるのですか?」
「会えるぞ。でも、そんなに急がなくても。それとも高校生は性欲旺盛で性行為ができると分かって速る気持ちを抑え切れなくなったか──」
「そんなのじゃないです!」
思わず大声になってしまった。
もし、訳の分からない化け物と結ばれることになるくらいなら人間と結ばれたい。
「そこまで言うなら会わせてやろう」
キリコのその言葉で身体が軽くなったように感じた。チャコの能力が解かれたらしい。首が動くようになった。
そう言えばキリコの話を聞いている間、何も言葉を発しなかった仲野はどんな感じで話を聞いていたのだろう。
首を動かして確認する。
仲野は顔を真っ赤にして下を向いていた。
熱でもあるのか?
「おい、仲野、大丈夫か? 顔が赤いぞ。保健室へ行った方が──」
「そんなのじゃなくて……」
「そんなのじゃなくて?」
「先に話を聞いていたけど、いざ本人を前に子作りとか言われると、やっぱり恥ずかしくて……」
仲野は何を言っているのだ……?
「人間種の代表は、仲野千鶴子。彼女だ」
キリコにその名前を告げられても、俺の頭はそれを理解するまで時間がかかった。
「仲間が候補ってどういうことですか? 言ったらなんですが、俺と一緒で今まで普通の学生だったんですよ?」
「彼女は超人に進化したのだ」
キリコの言葉は毎回毎回頭に入ってこない。超人ってなんだ?
「あのね、事件のこと何か聞いてる?」
バカな同級生達に襲われた事件のことだろう。
「あぁ、仲間が連れ去られて、その犯人達が悲惨な状態で見たかったっていうくらいは──」
「それ、やったの私なの……」
「えっ?」
いきなりの告白に俺はどう反応していいか分からなかった。
「すべてを見たわけではないから断定はできないが、彼女は襲われた時に何らかの形で頭を殴られた何かで脳に衝撃を受けた。その時に運動能力を制御する脳のリミッターが外れてしまったのだ」
「それで馬鹿力を得たと?」
「そうだ」
そんなことあるのか……
「それで、仲野少女に起こった事件と同時に神託書に名前が現れたのだ。どうせ普通の警察では解決できない事件だ。そこで警察庁特務係の私たちの出番ということで東京からやって来たのだ」
「そこでね、私は自分の力を制御ができなくなっちゃって、キリコやチャコさんの元で制御する練習してたんだ。上手く力を抑えないと何か触る度にモノを壊しちゃいそうだったから……」
「それくらい彼女の力は協力なのだ。もし今からでもトレーニングすれば陸上や水泳のような個人種目でやる競技なら全種目オリンピックでメダルが取れるぞ」
もう俺の想像できる世界を越えてきてるのだが、仲野が学校を休んでいた理由にはなる。
「えっと、そこまでが本当だとして、そんな超人になったというだけで人間代表になれるのですか?」
「理由は私たちの誰にも分からない。神託書が決めることだからな。もしかしたら幼馴染ということくらいは考慮されたかとしれない」
神託書ってそんな漫画のお約束みたいなのも考慮する存在なのか……?
それならそれで何か親近感が湧くのだが。
「というわけで、滝沢少年。望むなら私とチャコは退席するから、今からここで子孫を残すための性行為をしてもらっても構わない」
何言ってるんだ、この人? 頭がおかしいのか?
仲野は恥ずかしさが限界なのか顔を赤くして伏せたままだ。
「キリコさん、そういうのダメっスよ。今時の少年少女にはセクハラやモラハラって訴えられるっスよ」
「何故だ? 必要なことなのだぞ。世界を今後を決める行為と言っても過言ではない。そのための手続きのようなものだ。それを恥ずかしがってどうするのだ。性行為という言い方がダメなら、セック──」
「うちの隊長、ちょっと空気が読まないとこがあってごめんっス。これで今日は失礼するっスよ。これから細かく連絡することもあると思うっスが、どうぞよろしくっス」
チャコはそう言ってキリコの口を塞ぎながら部屋から連れ出した。何ならチャコの顔も赤く恥ずかしかったのではないか?
派手な身なりで性に奔放そうって言われたらそう見えても、チャコの中身は純粋なのかもしれない。
「それで、ユウくんは私のことどう思ってるの?」
「どうって?」
こんな話になるまで仲野のことを女として意識したことは無かったし、いきなりそんなことを言われても困ってしまう。
「彼女にしないの?」
仲野に迫られる。見た目は文句ないし、お互いのことをよく知ってる仲なのだが。
「いや、彼女とかどうとかなんて考えたことなかったし、それにあんな訳の分からない話を鵜呑みにするのか?」
「私のこと好きじゃないの?」
「いや、だからいきなりそんなこと言われても頭の理解がついていかないんだって」
「いくじなし」
仲野はそう言って部屋を出て行ってしまった。
そんなことを言われても俺だってどうしていいか分からないというのが本音なのだ。
仲野に迫られた時、どう言ったら良かったのだろうか?
今の俺には分からなかった。
お読みいただきありがとうございます。
まだ始まったばかりですが、20〜25話程度を予定しております。
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