2.俺にも事情が告げられる
昼休みになったと同時に仲野に声をかけられた。
「そろそろお昼食べに行こうか」
そろそろって言うか、今昼休みになったばかりなのだが、仲野はそう言って弁当袋を持って教室を出て行った。他の人に聞かれたくない話なのは分かっているのだけど、どこへ行くのかとか説明が欲しいものだ。
「ちょっと待って」
俺はコンビニで買ったパンを持って後を追いかけた。
しかし、うちの学校にそんな人に聞かれない話をできるような場所はあるのか。そもそも、入学したばかりで学校のことを俺もよく分かっていないのだが、それ以上に休んでいた仲野に分かるのだろうか。
何も説明がないので、そんなことを考えながら後を追う。
やがて着いたのは1階の来客用の応接室だった。1年の教室は4階なので、それなりに移動したことになる。だが、ただの生徒がいきなりこんな部屋を使っていいのだろうか?
「失礼します」
仲野はそう言って応接室のドアを開けた。
失礼します?
入室時にそうやって声をかけるということは中に誰かいるということだ。
内緒話をするはずなのに、応接室に来てさらに中にいるというのは予想していたのとは違う展開だ。
「失礼します」
俺も仲野に続いてそう声をかけて入室した。
応接室は応接というだけあって立派な革張りのソファーが置いてあった。ローテーブルも置いてあり、ここで校長先生とかは来客対応するのだろう。
そして、今日部屋の中にいたのはこの学校の教師や関係者ではなさそうだ。
二人の女性が立って俺達を迎えてくれた。
黒髪のロングヘア、切長な目をした長身の女性。きっちりしたパンツルックのスーツ姿でカッコイイ。
もう一人は茶髪のツインテールで薄手のパーカーにホットパンツ。ギャルかのかサブカル系女子なのか微妙なところだ。
というか、この対象的な謎の二人組は何?
仲野は入室時の様子といい多分知っている相手なのだろう。
「よく来てくれた。とりあえず座ってくれたまえ」
スーツ姿の女性に促され俺と仲野は着席する。俺達が座ったのを確認して彼女も座るのだが、もう一人のパーカー女性は座らなかった。
「あ、お構いなくっス」
そんな感じで立ったままだった。
「まずは自己紹介からだ。私は警察庁特務班のキリコと言う。業務上、コードネームみたいな感じなのはそういうものだと理解してくれるとありがたい」
キリコと名乗った女性は警察手帳を見せてきた。
「刑事さん?」
テレビのドラマでしか見ることのないような警察手帳を見て俺は反射的に反応してしまった。
「正確には刑事とかではないのだけど、そういうものだと思ってくれていい」
「私はチャコっス。キリコ先輩の部下っス」
えっ、このパーカーの女性も警察の人なのか。到底、そう見えなくて驚いてしまう。
「警察組織の中にはいるが一般的な警察とは違うからチャコの服装は気にしないでくれ」
気にしないでおかないといけないことが多いな。
「それにしても、その警察の人が何の用ですか?」
仲野の事件のことだというのは分かる。しかし、仲野もなぜ、何も言わず俺をこの部屋に連れて来たのだろう。
「担当直入に言う。滝沢少年、君は世界にとって最重要人物になった。そして、仲野少女もそれに並ぶくらい重要人物になった。私はそれを伝えにきた」
キリコの言ったことは全く理解できなかった。
「あの、何かのドッキリか何かなら教室に帰ってもいいですか?」
教室は教室で過ごしにくいのだが、こんな訳の分からない部屋にいるよりはいい気がした。
そう告げて立ち上がろうとしたのだが、身体が動かない。
チャコがいつの間にか俺の背後に移動しているのは気配を感じるが、首も動かせないので振り返って姿を見ることもできない。
身体が動かないのはチャコに物理的に抑えられているというよりは金縛りに合っているような感じだ。何だ、これは?
「せっかく出会えたんだ。そんなに急いで帰らなくてもいいではないか」
キリコは俺が動けないのは分かっているのだろう。
「ところで滝沢少年、君は宇宙人は信じるかい?」
「宇宙人……」
「そうだな、宇宙人、幽霊、怪物、妖怪、超能力者……それに天使や悪魔──あとは最近の流行りだと異世界転生者とか、まぁ、そういうものだ。信じるかい?」
「そうですね……漫画やアニメが好きなので、そういうのは頭から否定したくないというか、あったら面白いだろうな、くらいには思ってます」
キリコの質問の意図が分からないが、そういう未知なる存在に対して普段から思ってることを素直に伝えた。
「なるほど、それなら喜べ、滝沢少年。それらは全ているぞ。いや、今挙げたものでは足りないくらいだ。そして、それらの種族は全て君の嫁候補でもある」
一体、キリコは何を言っているのだろう。
頭のおかしい人間の話に付き合っていられない。しかし、立ち上がることができないので退席できない。それに仲野はこの話を素直に聞いているが状況は分かっているのだろうか。
「キリコさん、それじゃ滝沢っちは混乱したままっスよ。もうちょっと説明しないと」
「そうか、すまない。初めから説明すると昼休みだけでは足りないと思うが、なるべく昼休み内で説明が済むように終わらせよう。その場合、昼食を摂る時間は無くなると思うが構わないかね」
「私は事情が知ってるので、食事しながら聞きますね」
マイペースな仲野は「いただきます」と言い、自分の弁当箱を開けて食べ始めた。
「あの、俺も昼飯食べながらでもいいですか? 身体を動くようにしてもらいたいのですが……」
「逃亡の心配があるからダメっすよ。手だけ動かすとか器用な調整はできないから、男なら我慢っス」
後ろからチャコの声が聞こえる。逃亡の心配というが、さっきのこの世のものとは違う存在がいて、彼女達もそちら側の存在なら俺がこの部屋から逃亡しようとすぐに捕まるだろう。そもそも部屋から逃げ出すことすら無理なのではないだろうか──
「逃げないから身体動くようにしてもらえませんか?」
俺のこのお願いはスルーされて、キリコは話始めた。
お読みいただきありがとうございます。
まだ始まったばかりですが、20〜25話程度を予定しております。
ブックマークや評価をいただけると励みになりますので、お願いします。




