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1.神託書

 二千年以上、この世界の神の座は空位になっている。

 しかし、神の出現を告げる『神託書』がついに動いた。


 滝沢侑也の種から産まれる第一子を次期神とする──


 この書のお告げは絶対だ。

 この日から世界は動いた。


 ♢


 静岡県浜松市。

 静岡県第二の都市であり、政令指定都市のこの街で俺は生まれ育った。そこそこ発展していて、新幹線も停まることから外へも出かけやすい。

 そんな街で俺は今年高校へ入学した。


 中学でも目立つわけでもなく、しかしそれなりに楽しい生活をして、高校も地方の平均的な公立高校に通うことになった。

 きっと良いことも悪いこともありつつ、平凡に3年間を過ごし、卒業して、大学に進学して、またそこから平凡な人生が続いていくのだろう。そんなことを考えながら高校生活が始まった。

 はずなのだが、ある事件をきっかけに入学早々、ゴールデンウィークの休みを迎える前に浮いてしまいクラスだけでなく学年で孤立してしまった。


 なぜだ……バラ色とは言わなくても普通の高校生活を送るはずだったのに……


 その事件は同じ高校に進学して同じクラスになった仲間千鶴子という生徒に関することだ。

 幼稚園からの家族ぐるみでの付き合いで一般的に幼馴染というやつだ。

 黒髪でそこそこ長いのだが普段はポニーテールで、大きな目で可愛らしい顔立ちをしている。中学時代は陸上部の部長をしていた。

 そしてモテた。

 しかし、俺は幼馴染で存在が近過ぎて恋愛感情を抱くことがなかった。それら仲野の方もそうだったはずだ。よくアニメや漫画やラノベだと幼馴染と付き合う展開があるけど、実際はそうなることの方が少ないのではないかと俺は思っている。


 話を戻す。

 今回、仲野がモテた、というのが仇になった。

 中学の卒業時に仲野に告白してフラれた少し柄の悪い生徒に逆恨みされたのだ。

 その柄の悪い生徒とその兄、取り巻き二人に拉致されて強姦されそうになった。

 実際には未遂に終わったのだが、その現場が悲惨だった。

 その生徒は熊にでも襲われたのかというくらいに顔の半分が抉られていた。兄は両手が粉砕骨折、股間も潰されていて二度と性行為はできない状態。取り巻きの二人も主犯の生徒ほどではないにしても顔が腫れ上がるほど殴られて一人は失明していた。

 聞いた話なのでどこまで正確か分からないが、そういう状態で発見され、仲野はその凄惨な現場で保護された、と聞いた。


 では何故、それで俺がクラスどころか学年中から浮くかというと、その犯行を俺がやったという噂が流れているらしい。


 好意を抱いていた幼馴染を救出に向かったダークヒーロー。そういうことになっているらしい──


 って、ダークヒーローってなんやねん!

 熊に襲われたように顔を抉るってなんやねん!

 ただの高校生にできるはずがないだろう!

 思わず自分でツッコミを入れてしまう。


 一部、女子生徒からはカッコイイと思われてるような節もあるが、実際にそうなら怖いようで話しかけてこない。

 それはそうだ。

 俺が逆の立場でもそんな危ないかもしれない奴に話しかけない。令和の高校生はリスク管理がしっかりしているのだ。


 結局、仲野もそんな状態に男子生徒をできるわけがない判断され、無事に釈放はされている。

 ちなみに被害者生徒も誰が犯人なのか語っていないようだ。自分たちがレイプ目的で連れ去ったのにこんなことになるなんて想像もしてなかったのだろう。

 そもそも怪我も酷くまともに話せる精神状態でもないだろう。怪物に襲われた、みたいな証言もしているようだ。


「おっはよう! ユウくん、なんか浮かない顔してるねー」

 その声にクラスの中が少し騒ついた。

 仲野だ。

 被害者なので病院で検査もあったりしたのだが、不可解な事件ということもあり警察の事情聴取もあり学校は休んでいたのだ。

 被害者加害者は伏せられていたがテレビや新聞で取り上げられた。地方での死者も出ていないニュースだ。そこまで大きくなるような事件では無いはずなのだが、どこの誰か分からない人間がSNSにこの事件は不可解なところがある、と投稿したことで一部ネットメディアで話題になってしまった。そこから学校にも広まった。ネットで話題になるのがきっかけでも、学校内という狭いコミュニティには口コミで一気に広まってしまう。

 その書き込みがキッカケで俺も謎のダークヒーローになってしまいクラスで浮いてしまったのだ。


 そして、今日から学校に復帰した仲野はあまり事態を飲み込めていないのだろう。

 いや、飲み込んでいないのではなく、あえて気にしていないのか。中学の頃からそうだった。


「ふーん、なんとなく事情は分かるけどね。まぁ、私は気にしないけどユウくんは気にするよね」

 仲野は本当に気にしていないようだ。

「じゃあ、お昼ご飯一緒に食べようよ。私みたいな美少女とお昼食べたら元気になるでしょ? そこまで頑張って」

 仲野はそう言って自分の席へ戻っていった。

 彼女があんな感じの言い方をする時は何か込み入った話をしたい時だ。

 きっとそこで何があったか説明をしたいのだ。


 俺の謎のダークヒーロー疑惑が晴れるような話を聞けることを期待したい。

 僅かな期待を胸に午前中の授業を受けることにした。

お読みいただきありがとうございます。

まだ始まったばかりですが、20〜25話程度を予定しております。

期待を込めてのブックマークや評価をいただけると励みになりますので、お願いします。

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