26.機巧種の繁栄
滝沢 侑也……主人公。神の種を宿してる。
仲野 千鶴子……主人公の幼馴染。人類代表の超人。
キリコ……警察庁特務係。班長。
チャコ……警察庁特務係。キリコの部下。影使い。
モニカ……精霊代表。雷の精霊。
林 さやか……滝沢の中学校の先輩。裏世界のことも知っている。
ハダリ……機巧種。裏世界の特級と呼ばれる二十人のうちの一人。
和久 妃美香……日本文化研究部、部長。兼、女子剣道部。
倉多 葉菜……日本文化研究部。
古橋 真由……日本文化研究部。
竹田……弓道部。男子生徒。
校庭までやっと辿り着くことができた。
仲野はハダリを捕まえていて、さやか先輩はそれを見ていた。
今日は快晴で月も星も見える。もはや学校には俺達しかおらず電気も付いていないが、空の灯りだけでも誰が誰かは判別できた。
それにしても五階から落ちた感じで校庭に集まっているので全員が上履きのままで、その光景がアンバランスで状況に合わずに俺は笑ってしまいそうになる。
「なんで急に逃げたのよ?」
ハダリを捕まえながら仲野が問い詰めている。
「お前がめんどくさそうだったからだ」
「どこがよ?」
「なら逆に聞くが、今、私を締め上げているのをどう思っているのだ?」
それはハダリの言う通りだ。
「別に逃げないから手を離しなさい」
「ほんとに?」
「本当よ。五階から飛び降りて逃げきれないとは思わないじゃない。私はね、無駄と分かったことはしないのよ」
ハダリのその言葉で仲野は手を離した。
そんなやり取りをしてるとやっとモニカも校庭に辿り着いた。
「五階からの衝撃を和らげるのでへろへろなのじゃ……落ちてから、さらに全力疾走なんて化け物しかおらんのか……」
ぶつぶつ文句を言いながらモニカが寄ってくる。
「で、全員揃ったから聞くけど、あなたは私に何を聞きたいわけ?」
「えっ? 私?」
「そうよ、部室から降りる前に聞きたいことがまだあるって言ってたでしょ?」
確かに仲野はそんなこと言ってたけど、ハダリに指名された仲野本人は分かっていないようだ。
「あー……そんなこと言ったっけ……必死で走ったら忘れちゃった」
本当、仲野は勢いだけだな。
「あの、仲野さんが聞きたいことだったか分かりませんが、私からハダリ先生に一つ質問があります」
さやかは仲野の代わりに聞きたいことがあるらしい。
「どうぞ。答えられることなら答えるわよ」
「ハダリ先生は神の子を産んでどうしたいんですか? 産まれてくる子は人間で機巧種ではありません。私のようにこの特殊な素材を受け付ける体質じゃなければ種は広がらないのに、何故──」
「これは想像というか、予想──いや、願望も混ざっているが、恐らく産まれてくる子は受け付ける。いずれ肉体が朽ち果てても私と同じように脳だけになっても生き続けるだろう。それと、神の力を手に入れたら神託書の謎、この不思議な素材の謎、どちらの解明にも近付けると思ってな。他の種族がどう考えているかは分からないが、私にはそういう目的がある。ただ、少し確認したいこともある。そこの警察の女、まだスマホは繋がっているか?」
「は、はいっス」
急に指名されたチャコは慌てて返事をする。
「この国の神託書はオリジンに限りなく近いのだろう? 会話はできるか?」
『あまり複雑なことは無理だけど、ある程度は。予言に関することや世界の核心に触れることは答えてくれぬよ』
「そんなことではない。この神の子の争奪戦についてのルールの確認だ」
『それくらいなら出来るだろう』
「それにしても、こんな小さな島国に天使種が持つオリジンに近い会話可能な書があるとは思ってもいなかったぞ」
『日本は八百万の神の国って言われてるし、他にも世界中で起こる不思議な現象は大抵この国でも起きている不思議な国なのだよ。そこにオリジンに近いものがあってもおかしくはないだろう』
「そんなものか……まぁ、いい。今回、私がもし滝沢の種を手に入れて保管してある受精卵と結合して培養装置で育てた場合は子として認められるのか?」
『はい、と出てきた』
「次に、林さやかは人間だが、現在、表と裏のどちらでも私以外で唯一機巧種となる素材を受け入れられる身体を持つ。彼女は機巧種として認められるのか?」
『それはルールに関係あるのか? と出てきた』
「ある」
『認める』
キリコの回答に全員がざわついた。
さやか先輩は二人目の機巧種になったのだ。
「ふむ、それではオリジンに質問する前にさやか、お前に質問がある」
「は、はい」
さやか先輩の緊張が走る。
それはそうだ、この緊迫した雰囲気の中でいきなり質問をされてもまともに受け答えできるか分からない。不安になるのも当然だ。
「私の代わりに機巧種の代表にならないか?」
「「「「「えっ?」」」」」
ここにいる全員が同時に同じ反応をした。
それはそうだ。急にこのよく分からない争いに参戦しないかと言われても困惑するのが普通だ。周りもだいたい同じ感想なのだろう。
「私は研究にこの身を捧げたいのだよ。別に色恋に興味はない。作業として淡々と種を手に入れて受精して子供を作れれば良かったのだが、この状況ではそれも難しくなってしまったからな。だが、さやかも機巧種と認められれば種を取る作業は私がやらなくてもいい。それに私がやるよりさやかに求められた方が滝沢もやる気が出るのではないか?」
ハダリは俺の方を向くがそんな生々しい話、同世代の女子がたくさんいる上にチャコのスマホの向こう側に何人いるか分からない状況でするのはやめて。
さやか先輩本人もいるし、肯定も否定もできない。
「それでオリジンに近いモノに次の質問だ。私の権利を林さやかに譲渡する。それは可能か?」
『……可能、そう出てきた』
スマホの向こうからの戸惑いの雰囲気が何となく伝わった気がする。
「だそうだ、さやか。どうする? お前が望まないなら私はまた次の作戦を考えないといけないが」
「私、ハダリ先生の代わりをやります! 滝沢君のことはまだ好きになれるか分からないけど、ハダリ先生は私の脚を治してくれた恩人だから、頑張りたい」
あれ? まだ好きになれるか分からないってことは今は何とも思われてないわけで、間接的にフラれたのか。初恋の人って言っても、その気持ちが継続してたわけではないし……いや、ちょっと悲しいな、これ……
「オリジンに近いモノよ、譲渡をしたい」
『機巧種 林さやか。神託書は書き換えられた』
チャコの持つスマホからキリコの声でそう告げられた。
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次で最終回になります。
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