25.仲野の回想
滝沢 侑也……主人公。神の種を宿してる。
仲野 千鶴子……主人公の幼馴染。人類代表の超人。
キリコ……警察庁特務係。班長。
チャコ……警察庁特務係。キリコの部下。影使い。
モニカ……精霊代表。雷の精霊。
林 さやか……滝沢の中学校の先輩。裏世界のことも知っている。
ハダリ……機巧種。裏世界の特級と呼ばれる二十人のうちの一人。
和久 妃美香……日本文化研究部、部長。兼、女子剣道部。
倉多 葉菜……日本文化研究部。
古橋 真由……日本文化研究部。
竹田……弓道部。男子生徒。
⭐︎
せっかく私が一歩リードできそうだったのに次から次へと新しい候補者が現れる。
ユウくんと結ばれたい。
あんなクソみたいな忘れたい経験がプラスになりそうだったのに。
あの日のことを思い出してしまう。
というか忘れられない。
気持ち悪い。
⭐︎
「おらっ、目を覚ませ!」
バシャっ──
そんな声が聞こえると同時に頭の上から水を掛けられたようだ。
気を失っていたのか……まだ頭がボーッとする……
状況を整理したい。
高校に入学してすぐのことだった。
地元の土建屋の次男で偉そうな奴に中学の終わりに告白された。
そいつはバカだから私と同じ高校には進学できないのに、何を思ったか告白してきた。
そもそも中学生活ですら大した接点も無かったのに。
そんなので高校生で恋人としてやっていけるわけがない。
それすら分からないバカなのだ。
さらに輪をバカな行動を取るのだから救えない。
そいつと取り巻きの二人、それとそいつの兄が私を拉致した。
逆恨みだ。
そんなことして言うことを聞かせられると思ったのだろうか。
そいつの兄は高校を卒業して既に実家で働いている。地方の土建屋の息子らしく家を継ぐようだ。
ガタイがいい、格闘技をやっている。
車を出し、四人で私を拉致して強姦しようとしたのだ。
私は男四人相手に対抗できるわけもなく、そいつの家の倉庫に連れ込まれ、そいつの兄に押し倒された。
その時に頭を打ってしまい死んでしまった。
死んだ私は異世界転生をして女勇者として魔王軍を仲間と共に討伐したのだが、転生した国へ戻ったら歓迎されるどころか、
「魔王をこの少ない人数で討伐できる奴らは危険分子だ」
この王様の言葉で私と仲間は処刑された。
──はずだった。
私はバケツに入った水をもう一杯掛けられる。
二回目の水でだいぶ頭がクリアになってきた。
それにしても死んでるかもしれない人間に二回も水をかけるのも頭が悪いとしか思えない。
「おう、死んでなかったんだな。お前達、悪いけど俺からやらせてもらうぞ。それと、撮影係は今後のためにしっかり撮っておけよ」
スマホで撮影してる奴にそいつの兄は声をかけた。
してるとこほを脅迫のために撮影するなんて気持ち悪い。手慣れているところを見るとこれが初めてでは無さそうだ。
それにしても私は死んで生き返って、また死んで元の世界に帰ってきたのか……?
それとも転生して世界を救ったのは気絶していた時に見た夢……?
わからない。
冷静になりたい私は、
「もう一杯、水をかけてもらえない?」
無意識にそう頼んでいた。
「チッ、変な野郎だな。おい、もう一杯持ってこい」
そいつの兄は見張り役の別の男にバケツに水を汲みに行かせた。
かなりの量をバケツに汲んで来たので少し時間がかかっていた。
バケツに水を汲みに行った男は遅いとどやされていた。
私は自分で水を被ると伝えてバケツを受け取り、そのまま頭から水を被った。
私の奇妙な行動を見て四人の顔は異物を見たように歪んでいる。
さて、頭がすっきりするとこの四人──いや、四匹はゴブリンにしか見えない……いや、ゴブリンに失礼か。こいつらはもっと弱そうだ。
「なんか気持ち悪い女だな……お前、こんな奴がいいのか?」
兄からそう言われた弟はヘラヘラ笑っている。自分の意思を示せよ……私のこと、好きだったんじゃないの?
両手を伸ばして私を押さえ込もうとする。
その両手を私は掴み返し、そして──そのまま握り潰した。
バキバキと骨が折れる、いや、割れる音がした。
その男は痛みと、何が起きているか分からない恐怖で目を見開いている。状況が分からなくて悲鳴すらあげられないらしい。パニックになると悲鳴を上げられないと聞くこともあるが、そういうこともあるのを目の当たりにする。
そして、そのまま男の股間を蹴り上げた。
恐らく二度と使い物にならないだろう。
そいつは悲鳴を上げることもなく泡を吹いてその場に崩れ落ちた。
「お前、なにやってるんだ!」
兄が倒れたことに激昂した弟が顔を真っ赤にして突撃してくる。
軽く手を払っただけのつもりが、そいつの顔半分を抉り取ってしまった。
熊に襲われた時になるような感じで顔が削れている。
人間は脆い。
次にスマホで動画を撮影していた奴を捕まえる。
一瞬で移動したから逃げる暇もなかったようだ。
とりあえず証拠映像を残さないためにスマホを破壊する。スマホを握り潰す時に、持ってる手ごと握り潰したのでその男の手を潰れてしまった。
バキバキと鳴った音はスマホの音か骨の音か分からなかった。余計なものを見た目も潰しておこうと顔も殴っておいた。
最後の一人、バケツに水を汲みにいかされていた男は腰が抜けて動けなくなっていた。
恐らく一番下っ端だったのだろう。
「ごめんなさいゆるしてくださいごめんなさいゆるしてくださいごめんなしいゆるしてくださいごめんなさ──」
その男は呪文のように繰り返していた。
下っ端なので見逃してもよかったが、今までそう言って助けを求めた人間を男女問わずに痛ぶってきたシーンがあったのだろうと想像してしまった。
私は虫を潰すように顔を踏みつけた。
⭐︎
あの日、あったのはこんな感じだった。
異世界へ転生して、さらにそこから戻ってきた私は超人的な強さを手に入れた。そのおかげで強姦されて処女を喪失するようなことにならなくて安心した。
あの男共がどうなったかより、そちらの方が気になったのは覚えている。
あとはキリコさん達に会って事情を説明されて今日に至るのだ。
私は昔からユウくんのことが好きだった。
彼は私にとって近くにいるだけで安心できる、そんな存在だ。
彼は何を考えているかよく分からないし、私だけじゃなくて恋愛に対して積極的な姿勢を見せるとは思っていないから悠長に構えていた。
高校三年間で少しでも関係が進めばいい──そんな風に考えていた。
そしたらある意味、私が合法的に押し倒してもいいチャンスが来たのに、他にもっと非常識なやり方で迫ってくる連中が攻めてくるのだ。
神託書やらのルールで攻撃はできないが、私が理不尽に攻撃されることもない。
しかし、モニカと違ってハダリは目の届かないところに行かれるのは危険だと、私の中の何かが告げる。
逃したらダメだ。せめてキリコやチャコの目の届く範囲にいて欲しい。
だから、私はハダリを追う。
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