20.文化祭開始
滝沢 侑也……主人公。神の種を宿してる。
仲野 千鶴子……主人公の幼馴染。人類代表の超人。
キリコ……警察庁特務係。班長。
チャコ……警察庁特務係。キリコの部下。影使い。
モニカ……精霊代表。雷の精霊。
林 さやか……滝沢の中学校の先輩。裏世界のことも知っている。
和久 妃美香……日本文化研究部、部長。兼、女子剣道部。
倉多 葉菜……日本文化研究部。
古橋 真由……日本文化研究部。
竹田……弓道部。男子生徒。
「特に大きな問題もなく終わりそうですね」
俺はさやか先輩とボランティア部の仕事として校内の巡回をしていた。
「そうね、高校の文化祭だもの、そんな事件なんて起きないわよ」
さやか先輩はそう言うが、それってフラグにならないだろうか。なんだか心配になってきた。
モニカは弓道部の方の手伝いに文化祭までボランティア部からの助っ人として行っている。モニカは本当に弓矢が好きらしく、腕前はさることながら、子供用のおもちゃの弓矢も簡単に作ってしまったらしく竹田君以外からも可愛がられているらしい。もうモニカは裏世界からやって来た理由を忘れて普通に高校生活をエンジョイしてるようにしか見えないが、本人が楽しいならそれでいいだろう。
そういうわけで校内巡回は俺も仲野とさやか先輩の三人でやっている。
さやか先輩が言うように大きな問題も起きそうに無く、生徒会も巡回している上に、防犯に関してはしつこいくらいに呼びかけが行われた。
なのでボランティア部の仕事と行っても大したことはなく、二人巡回している間は一人は休憩したり文化祭を回ることになっている。
今は俺とさやか先輩の番だった。
ボランティア部の巡回なのだけど、こうして二人で文化祭を回っていると文化祭デートをしているみたいで気分があがる。もちろん各クラスや部活の展示や出店に行けるわけではないのだが雰囲気だけでも楽しませてもらうこととする。さやか先輩はそんなことは思っていないだろうが、俺だけでも役得として今年の文化祭を思い出に残そう。初恋の人と文化祭を回るなんて漫画やアニメの世界の中だけのイベントかと思っていた。
「せっかくだから外回りしながらモニカさんの様子も見に行こうか」
俺がふわふわした気持ちで巡回している俺にさやか先輩が声をかけてきた。
「確かにそうですね、ちゃんと仕事しているか確認しに行きましょう」
弓道部に行くと校内の生徒達よりも家族連れで賑わっていた。どうやらモニカの子供向け弓矢が評判になっているようだ。
子供に弓の使い方を教えているモニカを見るとどちらが子供か分からなくなるくらい楽しそうにしているが、子供に教えている時の表情は輝いてた。きっと裏世界でもこうやって子供達に教えたりしてたのではないかと想像すると温かい気持ちになってくる。
「なんだか楽しそうにやってますね──」
そこまで言ったところである物が目に入った。
「あっ、あれ、ダメですよね……?」
弓道部が体験に使っていた的の一つが風船になっていた。風船は正門の飾り付けで使った物の余り物をモニカがクラスから分けてもらっていたのは知っていた。そして、それを的に使うのもいいのだけど、
「ヘリウムガス、使ってるわね……」
昔はヘリウムガスを使って風船を浮かせるというのはよくあったと聞くが、今はヘリウムガスの値段の高騰、風船が飛んで行ってしまった先の環境への配慮など、なかなか高校の文化祭で使用することは無くなっているらしい。なので、余った風船を子供達に配る時もスタンド型という空気で膨らませたものを棒に付けて配る形式にしたのだ。その時にヘリウムガスで膨らませないようにと学校側から通達があったので知っていたのだ。
「モニカさん、ちょっといいかしら?」
さやか先輩が声をかけると飛んできた。
「なんじゃ、今忙しいのじゃ」
「忙しいのじゃ、ないでしょ? ヘリウムガスは使っちゃったダメって言われたでしょ?」
「なんのことじゃ?」
「あそこに浮かんでる風船よ、ヘリウムガス使ったらダメでしょ」
「ヘリウムガスってなんじゃ? わからないのじゃ」
ここぞとばかりとぼけるモニカ。
「とぼけてもダメよ、今すぐ片付けないと生徒会の怖い人たちに怒られちゃうかも」
「うっ……それは嫌なのじゃ」
モニカはそう言って風船を回収に向かう。
俺は生徒会の人達のことは詳しく知らないのだが、俺以上にさやか先輩と生徒会に出入りしていたモニカには天敵になるような人がいるのだろうか。
「持ってきたのじゃ。ただ、立っているより、ふわふわしていた方が獲物を狙う感じで面白いのじゃ……」
「ヘリウムガスはどうしたの?」
「演劇部から貸してもらったのじゃ」
そう言えば昨日の校内向け公演の劇の中でヘリウムガスを使ってコミカルな演技をする場面があったのを思い出す。それにしてもいつの間にモニカは演劇部にまで知り合いができているのか。
やっぱり俺より高校生活をエンジョイしているのではないだろうか。
「残念じゃが、これは渡すのじゃ」
「演劇部にも生徒会から不用意にヘリウムガスとか貸し出さないように注意しておいてもらわないと──」
モニカがさやか先輩に風船を渡す瞬間、若干のズレが生じてしまった。
二人の手をすり抜けて風船が空に昇っていく。
あっ、これ、問題になるやつかも──
俺がそんな風に思った時、さやか先輩が跳んだ。
モニカの身長くらいは跳んだと思うから150センチくらいは跳んだだろう。
これはこれでまずいんじゃないだろうか。
普通の女子高生はそんなジャンプできないぞ。
人目はそんなに無く、見られたとしても俺やモニカの影になっているはずだ。
「滝沢君、咄嗟に手を出してジャンプ台になってくれてありがとね」
さやか先輩はわざと大きな声でお礼を言った。
恐らく今のジャンプが不信に思われためのケアなのだろう。
幸いにも不信に思った人は周りにはいないようで安心した。
「これは片付けておくからね」
「わかったのじゃ」
モニカは残念そうだが、今の手渡しのミスも重なり反論はできないようだ。
「さやか先輩、そろそろ交代の時間ですね。俺、日本文化研究部の受付係もしないといけないので行きますね」
「そうね。そちらもボランティア部の仕事だし、頑張ってね」
風船騒動はあったものの、他に大きなトラブルもなく校内巡回を終えることができた。
さやか先輩とモニカと別れた俺は5階の日本文化研究部へ向かう。
お読みいただきありがとうございます。
度々変わって申し訳ありません。20〜25話程度を予定しております。
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