19.文化祭前日
滝沢 侑也……主人公。神の種を宿してる。
仲野 千鶴子……主人公の幼馴染。人類代表の超人。
キリコ……警察庁特務係。班長。
チャコ……警察庁特務係。キリコの部下。影使い。
モニカ……精霊代表。雷の精霊。
林 さやか……滝沢の中学校の先輩。裏世界のことも知っている。
和久 妃美香……日本文化研究部、部長。兼、女子剣道部。
倉多 葉菜……日本文化研究部。
古橋 真由……日本文化研究部。
竹田……弓道部、男子生徒。
いよいよ今日から文化祭開催だ。今日は校内向けの公開で生徒同士が他のクラス展示などを見に行けるプレイベントのような感じで、明日が校外からお客さんを招く本番になる。
日本文化研究部の展示もなんとか間に合わせることができた。
和久先輩、倉多、古橋の生花が苦労して運んできた屏風の前に見栄えよく飾られている。
書の方も三人分壁側に飾ることもできた。本格的に掛け軸のようにするとは思っていなかったが、これは日本文化研究会の──いや、きっと和久先輩のこだわりなのだろう。
「た、滝沢くん、あ、ありがとう」
主に古橋の展示を手伝っていた俺の手は慣れない作業で手が荒れていた。花を扱うって思ったより大変なんだな。
「これも部活動の一環だし、それに色々はじめて体験できて楽しかったよ」
これは嘘偽り無い本音だ。
高校生活がどうなるかと、それでも少しは不安に思っていたところにこうしてしっかり文化祭に関わることができたのは安心材料になった。
最近はクラスでも仲野とモニカだけでなく、倉多や古橋が話しかけてくれたり、モニカが話しかけてくる時に竹田君も話に来るから男子の友達──と言えるか分からないけど話すことができるクラスメイトができたのもありがたい。
「て、手荒れ、ごめんね。こ、これ、使って」
古橋がハンドクリームを渡しながら、俺の手を握ってきた。
変な意味は無く純粋に心配してくれてるのだろうが、ドキドキしてしまう。女子にこんな風に手を握られたのは幼稚園以来とかじゃないか?
というか、古橋って地味な感じなのにこういう感じでボディタッチしてくるのは意外で、そのギャップにもやられてしまいそうになる。
「あ、ありがとう……」
少し照れくさくてお礼を言うのもぎこちなくなってしまう。
「おほん」
日本文化研究部の部室から他の誰かの咳払いが聞こえてきた。
和久先輩は相変わらず剣道部の方へ行っているので、今この部室には俺と古橋の他には一人しかいない。倉多だ。
「ねぇ、なんで二人でちょっと良い雰囲気になっているのよ? 私も一緒に展示するの手伝ったからこの部屋にいるんですけど」
うるさいなぁ……せっかく青春ぽい雰囲気を楽しんでいたのに。
「はいはい、倉多も頑張りました。明日は色んな人に見てもらえるといいな」
一緒に活動しているうちにマユさんは呼びにくいから結局、倉多呼びにした。
「それも納得してないんだけど⁈ なんで仲野はチー呼びで私は倉多なのよ!」
「あの時、実際に活躍したのはチーだろ。倉多は応援してただけだし。それに呼び捨てだって距離感は縮まってる感じはするしいいだろ」
「もう、私の応援にも意味あったんだから! まぁ、仕方ないからそれでいいにしてあげる──って、いつまで手を繋いでるのよ、離しなさいよ」
本当、うるさいなぁ……女子に触れるのなんて本当に久し振りなんだし、このまま少しくらい繋いでいても罰は当たらないだろう。
「ご、ごめんね……」
古橋はそう言って手を離す。
「いや、こちらこそなんかごめん」
「は、ハンドクリーム、使ってね」
「うん、ありがとう」
そこまで言ったところで、
「だからぁ、私もこの部屋にいるんだって!」
倉多が騒ぎ始めた。
「それで、今日は他のところの展示は見に行かなくていいのか?」
「今日はいいかなぁ。まだ準備完了していないところも多そうだし、うろうろして邪魔になっても悪いし」
倉多の意見に古橋は頷いている。
「それに午前中の演劇部と吹奏楽部の発表を見たら満足しちゃったかも」
今日は開会式として体育館で全校生徒向けに演劇部と吹奏楽部の発表があった。
どちらも県内屈指の実力のある部活なので見応えがあった。高校生でもここまでできるものなのかと感動してしまったので倉多の意見もわかる。
「今日はここでのんびりしてようかなぁ、そんなに人も来ないだろうし」
「わ、私も、ここに、いようかな」
「じゃあ、俺はそろそろ行くよ」
和室でのんびりしたい気持ちもあるが、俺は正確には日本文化研究部員でもないし、さやか先輩や仲野やモニカもまだボランティア部として働いているだろうから俺だけここでのんびりもしていられない。
「なんでよ⁈ 可愛い女子二人といちゃいちゃできるチャンスだよ! 今日なら五階にまでそんなに人が来ないから三人であんなことやこんなこと──」
「いやいや、ないから!」
「な、ないの?」
「ないよ!」
倉多はともかく古橋まで何を言ってるのやら。
「ボランティア部の他のみんなが仕事してる中、俺だけ休んでられないから」
「真面目だねぇ、タッキーは」
これが普通だと思うんだけど。
「明日、展示の受付は交代でよろしくね! 文化祭の片付けが終わるまでは助っ人なんだから頼りにしてるから」
頼りにしてる、か。言われると結構嬉しいものだ。
「ボランティア部も校内巡回の仕事があるから、その合間に来るようにするよ。倉多も古橋さんもちゃんと文化祭を楽しめる時間を作るから任せておいて」
俺はボランティア部とこっちの助っ人で自分自信が楽しむ時間は作れなさそうだが、こうして頼られてこの二人が楽しめるならそれはそれでいいなと思う。
「あ、あのね、わ、私も呼び捨てで、いいからね」
「わかった、明日は倉多も古橋も楽しめる時間を作るよ」
「う、うん」
古橋もはじめに会った時よりは文化祭の展示の手伝いを通じて明るく接してくれるようになった気がする。
今の返事も嬉しそうに見えた。
「あのさ、たまに私のこと忘れるのやめてくれない?」
倉多が何か言っているが、ともかく明日が無事にみんなが楽しく過ごせるように頑張ろうと心に誓った。
お読みいただきありがとうございます。
度々変わって申し訳ありません。20〜25話程度を予定しております。
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