18.弓道部の話
滝沢 侑也……主人公。神の種を宿してる。
仲野 千鶴子……主人公の幼馴染。人類代表の超人。
キリコ……警察庁特務係。班長。
チャコ……警察庁特務係。キリコの部下。影使い。
モニカ……精霊代表。雷の精霊。
林 さやか……滝沢の中学校の先輩。裏世界のことも知っている。
和久 妃美香……日本文化研究部、部長。兼、女子剣道部。
倉多 葉菜……日本文化研究部。
古橋 真由……日本文化研究部。
それから数日間はボランティア部は文化祭に向けての準備の手伝いに勤しんでいた。
生徒会の準備する資料のコピーをしたりそれをまとめたり、運動部の模擬店の準備が遅れていればそれを手伝ったり、1年生の各クラスに割り当てられた準備が遅れていればそれを手伝ったり、校内だけでなく買い出しとかあれば校外へも走り回っていた。
俺のクラスは文化祭入場門の制作が割り当てられていた。今年の文化祭のテーマは「羽ばたき」ということで空に飛ぶイメージで風船を飾り付けるとのことだ。安直だと思いつつも、余った風船は地域の家族で見学に来た小さい子供たちに配布するようで無駄なく使い切る工夫もされている。
地域の子供たちに来てもらうために近所の幼稚園や保育園、小学校にもボランティア部としてポスターやチラシを配りにも行った。
クラスでも倉多や古橋と話せるようになって仲野の交友関係は徐々に広まっていった。
俺は相変わらず謎のダークヒーロー説があって男子の友達はできないでいた。なんだよ、謎のダークヒーローって。
まぁ、ボランティア部や日本文化研究会のメンバーのおかげで完全な孤立を避けれているし、これを受け入れようと思った。
ボランティア部の活動もなんだかんだ楽しいし、文化祭も楽しみだ。
そんなことを考えていたある日の夜のことだった。
毎日とはいかずとも揃ってチャコとモニカと夕飯を食べる習慣は続いていた。
「モニカ、お前、なんで弓道部に入り浸ってるだ?」
夕飯のカレーを食べながら俺は聞いた。カレーは辛口の方がいいのだけど、モニカは実際の年齢では見た目に舌が合わさっているのか辛い食べ物はダメでカレーも甘口になっている。食べさせてもらっている立場なので文句は言えないが「妖精は甘いものしか食べないのじゃ」とか言っていたモニカには少し腹が立った。
「弓道部の手伝いにさやかと行った時に試しに弓を触らせて欲しいとお願いしたら思ったより腕が鈍ってなくてな、褒められたのじゃ」
褒めらたのじゃ、じゃなくてそりゃ六十五歳で弓が得意な種族なら当然上手いでしょうよ。
「入部も誘われたのじゃ」
俺より高校生活充実してるな。
「さやかが留学生だし、いつ帰るか分からないから運動部は難しいかもしれないって断っていたが──」
そこら辺のさやか先輩の気遣いはさすがだな。
「文化祭の手伝いは弓道部だけでいいってことにしてくれたのじゃ」
さやか先輩、そういうのも甘いな。
「こっちに来てから弓矢に触ってなかったから腕が鈍っていないか心配だったのじゃが、手伝いながら触らせてもらえるから嬉しいのじゃ」
今までのルーティーンを崩すと良くないしいいことなのだろう。
「で、モニカっちの弓道部は何をやるっスか?」
「射的じゃ。弓道部の弓矢は使えないから、それっぽいおもちゃの弓矢を使って体験してもらうのじゃ。弓はいいぞぉ」
モニカって弓のこと、本当に好きなんだな。子供のようにはしゃいでる感じなのを見ると微笑ましい。
「青春でいいっスねぇ」
「チャコさんは高校時代、どんなだったんですか?」
「私はこの前話した通り悪い子だったスから……」
「ごめんなさい」
余計なことを聞いてしまった。
「謝らなくていいっスよ。今は楽しく生きてるっスからね。それに今年は君たちの文化祭をお客さんとして楽しませてもらうっスからね」
この人、たまに任務を忘れているんじゃないかと心配になる。学校へ行く時は俺の影の中に入って移動するし、中で何やってるか分からないし──一度、トイレは大丈夫か、確認した時は「なんとかしてるスから大丈夫スよ」って言っていたけど、影の中でトイレを造られていたりするとそれはそれで嫌なんだけどな。センシティブな話だし聞きにくい。
「で、うちが弓道部にいると不便でもあるのか?」
カレーを食べるスプーンで俺を指しながら聞いてくる。行儀が悪いからやめて欲しい。
「いや、不便とかじゃないけど、同じクラスの竹田君に今日初めて話しかけられて──」
「やっと初めて男子の友達ができたんスね。これも青春スねー」
チャコが感慨深く言っているが、そういうのでは無さそうなんだよな。
竹田君は弓道部の期待の新人と言われているらしい。身長は俺より少し低いが、中性的な雰囲気で男子なのに愛嬌がある。それが部活になると袴姿で弓を放っているのだから、そのギャップにやられている女子も多そうだ。
それなのに何故、この得体の知れない留学生女子に惹かれてしまったのだろう。冷静に考えると怪しいと思うのだけど、恋は盲目なのだろうか。
「モニカのことをやたら聞かれたよ。知ってること色々教えて欲しいって」
「竹田は弓道部にいる時もずっと近くにいるぞ」
「そんなに詳しく知らないし、俺の家の前の家にホームステイしてる、ってことだけ伝えておいた」
「うちに気があるのかもしれないのぅ」
「モニカっち可愛いから、これからモテるかもしれないっスね。いいなぁ」
「竹田はうちが本当は六十五歳でも受け入れてくるのかのう?」
「よく漫画とかでエルフと人間の歳の差婚とかあるから大丈夫っスよ」
なんだよ、その根拠のない自信は。
「うーん、そしたらユウとの子を産んでから一度離婚して……いや、籍を入れなくても産むだけ産んで、竹田と付き合うか……」
あ、こいつは俺のこと男としてではなく獲物や種としてしか見てないな。
関係を改めて考え直さないといけないかもしれない。
「モニカっち、それはちょっと青春じゃないっスよ……」
チャコの少し引き気味のアドバイスもモニカの耳には届いていないようだった。
お読みいただきありがとうございます。
度々変わって申し訳ありません。20〜25話程度を予定しております。
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