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第84話 臭いよ冗談抜きで


壁内の北端へと急いだ。

アンドルは手近な仲間を起こして城門の守りについた。

ややあって、四方の門から花火が上がる。


ハティが小瓶を開けて砂状の薬を撒く。いわゆるスメリングソルトだ。


アンモニアの刺激臭がする。

ハティが風の魔術を使い、臭いを充満させる。


(いくぞ)


時計回りに駆けだす。

薬を散布しながら風魔術で広げる。


広い壁内を駆け続ける。


方々では「くっさぁぁっ!」という悲鳴が上がった。


非常の手段ではあるが、ハティが後で恨まれることになったのは言うまでもない。


一周する頃にはほとんどの住人や兵士が目を覚ました。

「クセェ!」「死ぬぅ」「鼻がぁっ、鼻がぁ……」


「風よ!」

ハティがさらに魔術を使い、旋風を起こす。

悪臭を巻き上げるのだ。


この古今類に見ない悪臭を放つ戦は、事もなく終わった。


城内に満ちる悪臭と、防備についている者を見て相手方も効果なしとして退いた。


(やっべぇ、くっせぇ……なんだ、この城……)


敵兵たちは一様に鼻を摘んで足早に去っていった。


本当に臭い一夜はこうして終えるようと――――していなかった。



様子を見にハティがティアの部屋を訪ねた。

「ティア、入るよ――――」


ドアを開けて……すぐに閉じた。


(な、なんだ?何があった!?)


かの魔人が冷や汗をかいて扉の前で事態を把握しようと努める。


ギギギギギギギ―――


ドアが重い音を立てて静かに開く。

「……どうぞ、お入りください」

コレットがジト目でハティを促す。


「あ、いや、僕は遠慮しとこうかなぁ、なんて……」

逃げようとする彼を室内から呼ぶ声がする。


「ハティっ!」

「は、はぁい」


「来いっ!」

「はいぃぃ」

ティアの怒声に従わざるを得ずに、彼は恐る恐る部屋へと入った。


(ハル……一体何が……)


部屋の中央で正座をしているハル。

この世の終わりのような顔をして俯いている。


「ハティも座れ」

鼻栓をしたティアが命じる。

「はい」


素直にハティが椅子に座ろうとする。


「誰が、椅子に腰かけていいと言った?お前もそこのジャガイモといっしょだ」

「え、ぼ、僕は何か悪いことを」

言いかけたところを睨み付けられる。


「はいぃぃぃ」

ハルの隣に正座する。


それから、ティアが静かにハルを問いただし始めた。

「で、お前は私の部屋で何をしていた」

「い、いえ、何も……」


「嘘です。私は『視て』いました」

コレットの言葉にハルの体がビクッと跳ねる。


「何をしていた?」

「緊急事態でしたので、ティアさまに助けていただこうと」

「ほぉう……」


「嘘ではないですけれど、その後が問題です」

コレットが口を挟む。


「ちょっと、コレット、お願いだから少し黙ろうか」

ハルがコレットを黙らせようとする。


「嫌です!寝ている女性にイタズラしようとする『変態』に私は屈しません」

コレットが毅然と返した。


「なぁんだとぅ!?」

隣に座るハティが驚く。

「君って奴はっ、ただのスケベエ小僧だと思っていたのに……まさか、寝ているティアに」

「してません、してませんってっ!未遂で――――あ」

しまったとばかりにハルが口を押える。


「最低っ!」

コレットが叫ぶ。


「覚悟はできているな」

鼻栓をしたまま、睥睨するティア。


「は、はひぃぃっ」

震えるハル。


「―――こぉの、変態イモ野郎!」

左拳が見舞われる。


(で、伝説の左ストレート!)

ハティが戦慄した。

そう、彼女は左利き……しかも魔力を纏わせた光速の左ストレート。

過去、彼女を侮辱した者たち全てがこれによって撃沈した。


ハルは正座した姿勢のまま吹っ飛び頭から壁にめり込む。


その惨劇を隣で見ていたハティは身を震わせていた。

「ぼ、ぼぼぼぼ僕は、イタズラなんかしてませんよぉ」

「お前は臭いんだよっ!」

ハルと同じように殴られる。


そしてハル同様に頭から壁に生やされた。

(り、理不尽な……)

こうして、非常に悪臭を放った一夜が、本当に終わろうとしていた。


ジャガイモ仲間の皆さんへ


一週間の折り返しに来ましたね!

祝日がお休みの方は明日1日踏ん張るとお休みですよ!

そうでない方々も、今日1日頑張ったのですから、「ジャガイモヴィクトリー!」です。


作中のハティさん、一生懸命頑張ったのに、壁から生やされました(笑)

皆さんも理不尽な目に遇わされることもありますが、一緒に頑張りましょう!


次回は我らが「ジャガーノート」の伝説が…

そして反撃の狼煙が上がる?


ぜひ、次回もご覧ください。


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