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第83話 ドキドキ寝室作戦~そして僕は男になる?~


ハティはもとよりティアを起こす気はない。

というより、ロリでもない彼女には興味がない。


城内を見回り、兵の駐屯場所に向かう。

寝ている兵の一人に喝を入れる。

「っ、あ?!」

目覚めた兵はあたりを見回す。


「今、どこにいて、自分が誰かわかるか」

短く問う。

これに頷いた。


「すまない。緊急事態だ、頼めるか」

詫びると同時に小瓶を手渡す。


「張り倒して起きることができる者を集めてくれ。どうしても起きない者はこの薬で起こしてくれ」

兵が黙って頷く。


「頼む」

言うが早いか、その場を後にした。



城下に出ると寝静まった街が広がっている。

遠くで地鳴りのような足音が聞こえる。

侵攻が始まったか。


「アンタ、王国兵士か」

声がかけられる。

「そういうあなたは、冒険者だな」

「いかにも。元冒険者のアンドルだ」


「聞いた名だな。鉄紺のアンドル殿であっているか」

「古い名だな。今はその話は」


「ええ」

「名は?」

「ハティ・マクスウェル」

「白狼か」

「過ぎた名だ」


「この事態どうする」

「寝ている者を起こす。そして対処する」

「できるのか」

「気付け薬を皆に嗅がせるしかあるまいな」

「……?」


ハティが苦笑いする。

「これが、非常に臭い。それはもう嫌なにおいだ。顰蹙を買うだろうな」


言葉を区切ってさらに説明する。

「長時間嗅がせると体に害を及ぼす薬だ。短時間で使い、すぐに魔術で風を吹かせてかき消すしかあるまいよ」


何とも言えない顔をしてハティが言う。

「アンドル殿、力を貸してほしい」

「何なりと」

「使える者で城門を守ってほしい。内側から開けられないように」

「壁面はどうする」

「捨て置いて構わない。侵入されても無視していい。だが、門を内側から開けられることはあってはならない」

「無茶を」


「承知の上だ。だから30分堪えてくれ、それでこちらは皆を起こせる」

言うと、筒状のものを渡す。

「打ち上げ花火だ。城門の守備についたら上げてくれ」

さらに布を渡す。

「これで顔を覆ってくれ。とんでもない悪臭だから」

そう言ってハティは立ち去る。



僕はティアさまの部屋を訪れた。

「ごめんくださ~い」

メチャクチャ緊張する。

そりゃそうだ。深夜に女性の部屋を訪れるんだから。


「ティアさま?」

扉を開けるとティアさまが体を起こしていた。

(あれ?睡眠魔術は?)

不思議に思って近づく。


ぼんやりとした顔で彼女が僕を見る。

まだ夢うつつ半ばの状態だ。


「大丈夫ですか、どこか痛みますか」

肩に手をあてて呼びかける。

髪がはらりと胸元に垂れた。


僕は無意識に目で追ってしまい、気づいた。

寝乱れて服をはだけている。

(う……)


なまめかしいその様子に息をのむ。


(気づかなかったけど、ティアさまも胸、おっきい……)


夜着を押し上げる膨らみにつばを飲み込む。

「ハティ……」

ティアさまが頬を赤らめる。

彼女はいったいどうしたんだろう。

「わたし……」


そっと目を閉じる。


「やっとあなたに気持ちが通じて」


少し頤をそらしている様子は、キスをねだるようにも見える。


「こんな気持ちになれたのは初めて」


(これは……いけない)

僕は自制心を総動員した。


確かにティアさまは綺麗で、かわいいところがある。

しかも今はエロい。


服がはだけていて、お腹が……


鼻血を吹きそうになる。

引き締まっている。無駄がない。


でも、とにかくそのラインがエッチぃ。


だが、しかし。

これはいけないのだ。


(誰だよっ、こんなことしてくれてんのぉぉぉぉっ)


知りもしない誰かを呪う。


据え膳喰わぬは男の恥とは誰が言った。

本当に彼女のことを思えば、状況に流された結果もっとも傷つくのは彼女の方だ。


他にもいろいろと問題がある。

本当ぅに、いろいろありすぎる。


(ねえ、ねえ、僕は男になるんじゃないのか)

悪魔(仮称ディアブロ)のささやきが聞こえる。


(ダメだよ、お前はまっとうな人間になるんじゃなかったの!)

天使(仮称アンジェ)がそう自分に問いかける。


目を閉じて何かを何かを待っているティアさまを前に、苦悶する。


(待っているんだから、恥をかかせちゃだめだよね)


そう、僕は「男」になるんじゃなかったのか?

どこかで暑苦しいオッサンが「それは『ヴィクトリー』じゃねぇぞぉ」って言ってる。

けれど、その幻影を無視した。


僕は意を決して顔を近づけ―――――


「ハティ……」

その言葉に我に返った。


最初から、彼女はあの残念魔人のことしか呼んでいない。


「ちぃぃぃくしょぉぉぉぉぉぉぉ!」


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