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第62話 潜入。 エリーゼさんそっくりのあの人と新しい相棒?



「――――ニっ」

クロエが手を挙げる。

僕は足を止めた。


「コリガン、クロエだニ。中に入るだニ」

そう言って扉を開く。

廃屋といってもおかしくない建物。

もとは教会かなにかだとは思うけれど。


僕は何をしているかって?

それはもちろん、「インポッシブル・ミッション(不可能作戦)」に挑戦中。


エーレンブルグの危機はひとまず去った。

そして、派兵した共和政府軍は、今、首都がお留守の状態。

なら、相手が戦力を再編する前に僕らの最高戦力、アンジェさんを救出する。


調査でアンジェさんを拘束している「罠」の正体が判明しつつある。

バクス村やオルジュの街で起きたことが、相手の「罠」を明るみにした。

何よりもガレットさんの手に入れた『恩寵』こそが決め手になった。


さらに幸運が重なった。

ティアさまが政府の内情を僕たちに教えてくれたんだ。

だからこそ、こうやって潜入までできている。


まず、魔力なしの僕と、隠蔽スキルがあるクロエが先行。

そして内偵を進めているコリガンくんというフェンリルナイトと合流する。


他のフェンリルナイトたちはスヴェンの回復を待って合流。

一番行きたがっていたハティさんは絶賛魔力のチャージ中。


ガレットさんとエリーゼさん、コレットとティアさまはエーレンブルグ復興を継続。


まあ、いろいろ役割分担をしているって感じです。

でも、本当は畑を耕したかったなぁ。

ああ、芋畑が恋しい。



埃っぽい廊下を進む。

一番奥まった部屋の手前でクロエが止まる。

「連れてくるニ」


ドアをノックする。

「コリガン、ただいま。クロエだニ。……入るニよ」

部屋に入る。

少し言い争うような様子があったけれど、すぐに出てくる。


小太りでボサボサの髪。正直清潔とは言えない身なり。

彼は長く伸びた髪の向こうから黙って僕の顔を眺めていた。

「えっと、コリガンくんだよね?」



「……うん」

ずいぶんと時間がかかったけれど、返事をしてもらえた。

「僕は、ハル。フィンたちの友達なんだ」

自己紹介をする。

途端に彼は視線をさまよわせる。


フィン、話と違うよ。

彼のどこが頼りになる男なんだ?


「そのフィンの友達が僕になんの用?」

少ししてコリガンくんが聞いてくる。

警戒しているのかなぁ。


「ハティさんたちの手伝いをしているんだよね。僕もその手伝いをしたいと思って」


「しょ、証拠はあるの」

コリガンくんが聞いてくる。

「証拠?」

「フィンの友達、だ、だっていう証拠だよ」

そうか、やっぱり警戒していたんだ。

「これじゃダメかな?」

そう言ってアミュレットを見せる。

ミスリル銀でできた狼と剣の装飾されたもの。


じっとそれを見ていたコリガンくんはぼそりと言った。

「親父の好物は?」

「確か、ポテトフライとソーセージとエール」

僕の答えに少し考えたようだ。


「親父の得意料理は?」

「鳥を使った料理。フィンたちが野菜を食べるように煮込みにすることが多い」


「魔女の得意料理は?」

「その呼び方はダメ。ハティさん絶対に怒る。ちなみにアンジェさんはフランが得意」


「ティアの得意料理は?」

「ティアさまは料理作れない。かわりにメチャクチャ甘い紅茶を淹れる」


「『騎士の恥』の得意料理は?」

「その呼び方をするなっ!」

僕は最後の問いのときに声を荒げてしまった。


「ご、ごめん」

コリガンくんが謝ってきた。

「う、うん……僕の方こそ」

調子が狂うなぁ、昔の僕やコレットみたいだ。


「君は本当にフィンたちの友達みたいだ。親父たちのことも知ってるっぽい」

「僕はフェンリルナイトだから」


「そうなの?じゃあ、君もすごい才能をもってるんだ……うらやましいな」

「え?全然。村でイジメられていたのをフィンたちに助けてもらって、それから一緒に旅をしただけだよ」


「そっか、すごいな。旅をしたんだ」

「コリガンくんは違うの?」

「ぼ、僕は……どこかに行くって怖いから」

「そうなんだ」

う~、気まずい。


「僕は出来損ないだから。何にもできない、臆病だし、こんな見た目だから」

「そんなことはないよ」


「君に何が分かるんだよ」

「だって、フィンたちは君のこと一言だって悪く言ってなかったよ?僕にも『頼りになるやつだ』って言ってた」


「フィンたちは優しいんだよ」

「そうかな?優しいといえばそうだけど」

「うん……」


「ずっと君はみんなのために頑張ってたんだよね。それってすごいことだと思うけど」

「手紙を届けるだけだよ」

「それだって立派じゃないか」

話していてなんだか村にいた頃の自分を思い出してしまった。



ここが、王城……政府の議事堂なのか。

見上げるくらいに大きな建物に驚いた。


崩れかけている場所もある。

けれど、残っている装飾とか細かくて、凄いなって表現しかできない。


ちなみ愛用の「土寄せ棒」は置いてきた。

武器ではないけれど、それっぽいものを持っているだけで止められるというのだ。


「い、行くよ」

コリガンくんが言う。


堀にかかっている橋の手前に番兵がいる。

「あ、あの、お届け物です」

彼が声をかけると番兵は汚いものでも見るような目で僕らを見た。


「またお前か。今度はなんだ」

「はい……イグリース様から言われたものを」

イグリース?誰だろう。


番兵はそれを聞いて舌打ちした。

「入っていいぞ」


コリガンくんが頭を下げて歩き出したとき「気持ち悪ぃ」と吐き捨てるように呟いた。

僕はそれにイラッとした。

けれど、コリガンくんが「行こう」と促すのでそのままついて歩いた。


「あの番兵、感じ悪いね」

「うん」

「『気持ち悪い』ってよく平気で言えるよ、失礼だ」

「うん……そうだね」


橋を渡って、城壁内に入る。

城門のところにも番兵がいて、同じ質問をしてきた。


同じようにコリガンくんが答え、忌々し気に番兵が通行を許可する。

そして例にもれず「気持ち悪い」とか「キモっ」とか言う。


腹の立つ奴らだ。


「コリガンくん、よく平気でいられるね」

僕が言うと、力なく笑った。

「平気じゃないよ。でも、怒ったところで何にも変わらないし、どうにもできないから」

そんな悲しいことを言った。

フィンたちが知ったら怒るだろうな。


城の入り口にいた番兵に止められた。

同じように用件を伝えると「またかよ」とめんどくさそうに言った。


「ちょっと待ってろ」と僕らを待たせられた。

去り際に「キッショ」と吐き捨てていった。


僕はこの敷地に入って何度この言葉を聞いただろう。

ノービス村の孤児院の子たちだってこんなこと言わなかったよ。

思い出すだけでもむしゃくしゃする。

コイツらは子供以下なんだ。


そういえば、アイツらは嫌がらせでコリガン君の物を盗ろうとしなかったな。

ポルコだったらやっただろうけど。

そういう意味では、「イグリース」さんって人が怖いのかな。



けっこう長い時間待ったと思う。

ゆっくりとした靴音が聞こえてくる。


コリガンくんが顔を上げた。

廊下の奥から女性がこちらに歩いてくる。

あれ?この人。


遠目でもわかる、綺麗な銀色の髪。

背はそこまで高くないけれど、スタイルが良くて、豊かな胸をしている。


え、ええ?えええええええ?

「え、エリーゼさん?」

僕は思わず声に出していた。


コリガンくんは隣で不思議そうな顔をしていた。

彼女は僕たちの手前で立ち止まると、微笑んだ。


「また来たのね。今日もお届け物?」

そう穏やかに言う。

アイスブルーの瞳が僕たちを見る。


「あ、あの、エリーゼさん?ですよね」

僕が尋ねると彼女は少し驚いたような、迷惑そうな感じに眉を動かした。


けれどそれも一瞬のことで、すぐに穏やかな笑みを浮かべた顔に戻る。

「私はイグリースといいます。コリガン、お友達を連れてきたのですか?」

「は、はい」

「そうですか。あまりこういうのは感心しませんね」

「すみません」

謝るコリガンくんに何もこたえず、ぷいっと背中を向ける。


「あの人に届けるものがあるのでしょう?私がついていってあげます」

「あ、ありがとうございます」

コリガンくんがお礼を言う。



僕は彼女について行った。

イグリースさん、本当にエリーゼさんそっくり。

エリーゼさんじゃないの?

確かに今、エリーゼさんはエーレンブルグにいるはずだけれど。


もしかして双子の姉妹とか??

彼女からいい匂いがする。

「オルジュの街」で嗅いだ匂い。

柑橘のようで甘く重い……


不意にイグリースさんが口を開いた。

「コリガン、この間はごめんなさい」

「え?」

「バカな人たちが、酷いことをしたでしょう?私が懲らしめておきましたから」

「あ、ありがとうございます」

「お礼を言われることではないわ。当然のことです」


コリガンくんに謝っている。

たぶん偉い人なんだろうけれど。

僕たちみたいなのに謝罪するって、凄いと思う。

こういうのができるのって、やっぱりエリーゼさんなんじゃないかな。


「お友達は、なんという名前なの?」

「ハルです」

「ハル…ですね」

なんだろう、別人なのかな?


「ハル、詮索してはダメなこともありますよ。あなたはあなたのすべきことに集中なさい」

エリーゼさん、じゃなくてイグリースさんが忠告してくる。

「はい」

僕は釈然としないまでも考えることをやめた。


階段を上り、割と上まで来た。

それからまた長い廊下を歩く。ところどころ煤けていて崩れている部分もある。


廊下の中ほどに大きな扉があった。

仰々しいまでの鎖が扉に掛かっている。

中央に錠前が下がっている。


イグリースさんは扉に歩み寄ると、ドアをノックする。


それから手のひらを上に向けると、鍵のようなものが出てくる。


鍵を錠前の穴に差し込み「アペリー(開け)」と呟いた。


扉に幾重もかかっていた鎖が音を立てて縮み、扉が開く。


「私はここで待っているから。行ってきなさい」


皆さん、いかがお過ごしですか?


ゆっくりできていたら幸いです。

お忙しくされている方もホッと一息つけると良いですね。

頑張っている皆さんは「どすこい・ヴィクトリー!」です。


さて、次回はついに「芋掘棒」をハルの先祖に渡したという「あの人」の登場です!


ぜひ次回もご覧ください。

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