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第60話 復興と反撃と「薄い本」。ハルよ、今すぐ逃げるのだ!君は狙われている!


「うぇ~い」

「ばっちこ~い」

僕はどうやら運動部の朝練に紛れ込んでしまったらしい。


「ハイ、そこ。集中の糸切らさない。怪我するぞ」

ソニアさんの注意が飛ぶ。

「しまっていこー」

それに応じるようにガラの悪い男たちが返事をする。


言わずもがな、最強の傭兵団「黒金の鷹」のみなさん。


「ハル、遅かったな。寝坊だぞ」

木材を担いでスヴェンが言う。

いやいや、君、昨晩重傷だったよね?

包帯ぐるぐる巻きで何やってるのさ。


「どっせーーい」

ガレットさんの掛け声とともに森の木が倒される。

「ほら、これは橋桁用な。間違えるなよ」

大剣で生木を切ったのか……

「おっしゃぁ、もう一丁!」

森林伐採が続く。


「おお、ブラザー!待ってたぜ」

ウルフスベインさんが声をかけてくる。

「領民が避難しちまったからな。おまえの『農』力を借りたかったところなんだ」



「はぁぁぁぁあぁん」

僕は嬌声を上げてしまった。


だって、こんな見事な畑を手に入れられるだなんて。

農業従事者冥利に尽きる。


「こ、ここ、本当にジャガイモ畑にしていいんですか?」

「ああ。春植えのジャガイモにはもってこいだろ」

さすがブラザー。二毛作についてもご存知ですね。


「休耕地だ。今は誰の土地でもねぇ。好きに使ってくれ」

そう言っている割には手入れがされている。雑草もない。

「俺たちの『夢』にむかって一緒に頑張ろうぜ」

僕たちはがっしりと腕を組む。


「いいね!その『夢』、最高に『ヴィクトリーーーー』だぜ」

後ろでガレットさんがマッスルポーズで叫ぶ。

アンタ、内容知らないだろ。

そして、何でいるんだ。


切り出し作業をわざわざ抜けてきたのか。

「お頭、いま良いところなんだから、邪魔しないでくれ」

ウルフスベインさんの文句にガレットさん項垂れる。

「なんかよ、俺の扱い悪くねぇ?」



「うう、寒いよぉ」

ハティさんが体を震わせながら戻ってくる。

全身ずぶ濡れ。

この寒空に上半身裸の変態だ。


「何やってたんですか」

「うう、橋脚固定していたんだよ」

え?この極寒の川に入っていたの?


「基礎がしっかりしてないと、あぶないだろろろろ」

震えながら言うので語尾がおかしい。

「なんでハティさんが?」

「そりゃ、他の人だったら凍死するからだよ」

ほんと、自己犠牲の塊。呆れてものが言えない。

正直こういうところが嫌いなんだ。


「エリーゼさんは何をしているんです」

「姉上は設計とか切り出しとかだね。細かい計算ができるの、ここじゃ姉上しかいないから」

ああ、エーレンブルグって脳筋集団だったんだ……

バルドールさん仮にも魔術師だったよね。

「僕はとりあえず、お風呂入ってくる」

そう言ってハティさんが去っていく。


……なに、あの体。

針金で出来ているのかっていうくらい無駄がない。

ガレットさんとは別種類のマッチョメン。

そして、背中に広がる火傷痕。

戦の傷かな?

あ……すれ違う女性陣、なんだか涎を垂らして見てる。



私、コレット・オルレアはティアさまと面会した。

地下牢じゃない。

ちゃんとした貴賓室。


「うむ、何でも聞くが良いぞ」

ティーセットを前に偉そうにふんぞり返っているティアさま。

どうみても降将の態度ではない。


ところで、なんで簀巻きのまま?

もう、縄解いていいって話だったよね?

気に入っているの?その恰好。

というか、お茶はどうやって飲んでいるの?


この謎だらけの状況を脇に置いて、思い切って尋ねた。

「あの……なんで、皆さんを裏切ったのですか?」

「ん?『裏切る』とは、何のことだ?」

ティアさまは首をひねった。

「だって、2年前の反乱の時、真っ先に共和政府に降伏したって……」

そう言ったとき、ティアさまが「フッ」と笑った。

「そういう展開が『燃える』と思ったからだ」

(領民たちを救うにはそれしかなかった……)

目の前で不遜に笑うティアさま。

けれど、その陰で、私にだけ「視える」心のビジョン


「まぁ、暗愚な王には愛想が尽きていたからな。後にハティたちと敵対したとしても私が『最強』であることを示す機会にもなると思ったのだよ」

これは、半分本当で、半分は嘘。

ティアさま、見せしめとして処刑されるのを覚悟していた。

「ハティ、助けて」って泣いている姿が視えた。


「期せずして、このような機会を得たわけだが……」

(敵対するフリをして自分から押しかけてやったのだ。捕らえられるように仕向けるのは結構キツかったぞ)

「フフフ、なかなかのものだったろう?なにせ、エリーゼ様もハティもガレットも、私一人に翻弄されたのだからな」

そうティアさまが言ったときだった。


「あら、ティア。ずいぶんと元気そうですね。それに、ステキな格好」

お姉ちゃん登場。

ふんぞり返っていたティアさまが瞬時に直立した。

「ハッ!エリーゼ様もお元気そうで何よりです。いやはや、さすがはエリーゼ様。このティア、エリーゼ様の策にまんまと嵌り、捕らえられてしまいました」

なに?この変わりよう。

「参りました」アピールのためにその格好してたの?


「ふふふ、そんなにおだてたって何も出ませんよ」

「いえいえ、本心からですよ」

(こ、怖ぇぇ……)

ティアさま本気で怯えている。


「こちらに復帰とはいえ……なにか『ご褒美』をあげましょうか?」

「え?いいんですか?」

「ええ、前払いです。ちゃんと政府の内情を教えてくださいね」

「もちろんですとも。この【禁断の語りタブー・テラー】になんなりと」

……え?なに、それ?痛いんですけれど。

というか、ずっと後ろで控えているメイドさん、ずっとハフハフしている。

(簀巻きで怯えているお嬢さまも、ス・テ・キ)

この人の心のビジョン……怖い。


「では、遠慮なく『彼』を所望します―――――」


ティアさまの言葉を聞いて私は戦慄した。

そう、私は恐ろしい「光景」を視ることになる。


ハルっ!今すぐ逃げて!じゃないと「薄い本」のネタに!


―――――されても……いいかも。(ぽっ)


皆さま、毎日「ヴィクトリーー!」です。


1日1日を生きている皆さんは、それだけで素晴らしいのです。


嫌なことはみんな「薄い本」の「カップリング」のネタにしちゃいましょう!

嫌なセンパイと嫌味な上司が...とか、ね。

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