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第3話 もぐりの女医とジャガーソングと怪しい影


「あの~、すいません」

若い女の声がする。

コレットは扉の影から礼拝堂の様子を覗き見た。


「……なんでしょう」

ちょうど掃除をしていたシスターが応えた。

「あ、旅の者なんですが」

「はい」

「病気の子とかいませんかね」

女の奇妙な質問にシスターは怪訝な顔をした。

それから、あの囁くような声……イメージが浮かぶ。


「実は私、医者でして。このご時世でしょ?もといた村が焼けてしまってから方々を渡り歩いて病気の人を診ては日銭を稼いでいるんです」


「では、ここにお金を無心に来たと?」

(面倒な奴が来たわね)


「いや、教会にたかるなんて罰当たりなことはしませんよ。治療代の代わりに泊めてくれると嬉しいなぁって」

女はバツが悪そうに頭を掻く。


「そうですか。でも、本当にお医者様かしら?それこそいいお医者様なら居てくれっていうところもあったでしょう」

(どうせ金の無い貧乏人が宿代わりに居つこうって腹でしょう)


「そこは、あまり長居できない性分でして」


悪びれたふうもなく言い、女は白銀の髪先を指でもてあそぶ。

背の低いシスターとあまり変わらないくらいの身長。

「本当かしら?」

取って付けたようなことを言うのでシスターはますます疑念を深めた。


コレットには銀髪の女性の考えていることが視える。

(疑り深いお人ですね。まあ、子供のことを思えば仕方がないでしょう)

「ああ、シスター、あなた左足が悪いですね。それを庇っているから右足に痛みが出る。違いますか?」

不意に女性はシスターの左足を指さす。


「右足は痛いのですが、左足は何とも」

(ほら、みたことか。もぐりが)

的外れな指摘にシスターはさらに警戒心を高めて言った。


「どうですかね?診させてください。私の腕をお疑いのようなのでタダにしておきますよ」

そう言ってシスターを無理に椅子に座らせる。


女性はシスターの左足の膝上を触る。

「いたっ!」

触った途端、シスターが小さな悲鳴を上げる。

「トリガーポイントっていって本当はここが悪いんです。でも無意識に庇うから右のほうにばかり負担がかかって痛みが出てしまう」


アイスブルーの綺麗な目でシスターの顔を見る。

「まあ、歳も歳ですから完治はしないでしょうけれど、軟膏を塗って凝り固まった筋肉をほぐしましょう。少しは楽になりますよ」

言うと、カバンから瓶を取り出し、蓋を開く。


指先で軟膏を掬い取って、膝に塗り広げる。

「少しほてりを感じますが、それが効いている証拠です。少し安静に」

シスターの足に丁寧に薬を塗る。


ちょっとしてから「どうです」とシスターを立たせる。

「あら、痛くない」

(本当に、医者だったの?この女)

驚くシスターに、「でしょう?」と女性は自慢げに応えた。


(ふふぅん、どうですか。どうですか。この私の腕はその辺のヤブとは違うのですよ)


「ありがとう」とお礼を言うシスター。

(チッ追い出す口実が無くなったじゃないの)


それに事もないように女性は「いえいえ、どういたしまして」と答える。

(うんうん。一日一善。良いことをしましたねぇ、偉いぞ私)



「ジャ~ガ、ジャガジャガ、ジャガイモさぁん~」


僕は自作の歌を口ずさみながら農園へと急ぐ。

デカネズミの一件以来、ポルコたちも警戒しているのか、あまりちょっかいをかけてこない。


まあ、遠巻きに「キッショ」とか「みんなに嫌われてる」って聞こえよがしに言ってるけど。


イラつきはしても以前ほどの実害はないから、まだ許容範囲。


それよりも春植えのジャガイモさんたちのために土づくりしないと。

今日はハンナが「堆肥」を分けてくれる予定なんだ。

それまでに種芋ちゃんたちのベッドをふかふかにしておいてあげないと……ふふ。


「あいらぶぅ、あいにーじゅ~、ぽてぇ~とぉ~」


「OH、イエス!『ノー、ポテト。ノー、ライフ』……」

ふと森の方に人影が見えた。


村の結界が壊された。

あの後、村の人が結界を見に行ったら、結界石が一個無くなっていたらしい。

たぶん犯人はポルコ。

証拠はないけれどさ。


ポルコの奴がこっそり結界石を戻そうとしているのか?


僕は後をつけることにした。


ジャガイモ仲間へ


今日1日お疲れ様でした。

いい日であってもそうでない日であっても、今日1日を生きているだけで素晴らしいことだと思います。

それではまた、明日。

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