表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/82

第29話 やっておしまいなさい! 【コレット・ルート】


私はふたりを別な場所に誘った。

ふたりは黙って私についてきてくれた。

「あの、お二人には、その……話していないことがあって」


怖い。

本当に怖い。

お姉ちゃんとハティさんが私の眼のことを知って、離れてしまうことが。

今まで覗き見ていたことを知って、怒ることが。


そんな気持ちを察してか、お姉ちゃんがそっと私の肩に手を置く。

「コレット」

静かに言う。

「私はあなたの味方よ」

きれいなアイスブルーの瞳。

後ろのハティさんが優しく微笑んで頷く。


「私、他の人の心の声、心象風景が視えるんです」

思い切って言った。

「見た人の『本当の気持ち』が視えるんです。その人の魔力もっ」

涙がこぼれてきた。

「ちっちゃい頃から視えていて、みんなに気味悪がられていてっ、『気持ち悪い』って」

「ずっと、ずっと言えなくてっ、お姉ちゃんのも、お兄ちゃんのも視えていた」

震える声で続ける。

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

嫌わないで、私を捨てないで……


私は優しく包まれた。

あったかい。

お姉ちゃんが私を胸に抱いた。

「辛かったわね」

そう言って頭を撫でてくれた。

「言ってくれてありがとう。コレット」

そして、続けて言った。

「私はあなたのことが大好きよ」

私は声を上げて泣いた。



私は泣き疲れて、いつの間にか寝てしまっていた。

気づくと、お姉ちゃんが膝枕をしてくれていて、優しく撫でてくれている。

「あ……」

目が合うとにっこりと笑ってくれた。

「目が覚めた?」

優しい声、夢じゃないよね。


「こ、コレットぉぉぉぉ」

ハティさんが鼻水垂らしながら泣いていた。

「辛かったねぇ、苦しかったねぇ、もう大丈夫だからねぇ」

残念魔人さんの優しさが、今は心地いい。


「僕も君の味方だよぉ、君を傷つける奴は僕が滅ぼしてやるからねぇ」

……平常運転みたい。


ふたりの心のビジョンはとても優しくてあったかい色。

この人たちは私の期待を裏切らない。

誰が「騎士の恥」だって?

誰が「みんなに嫌われている魔人」だって?

この人たちは最高の私の「お姉ちゃん」と「お兄ちゃん」なんだよ。



「私が囮になります」

私は言った。

「なななななな、なんてことを言うんだっコレットぉ!」

ハティさんが狼狽する。

「お姉ちゃん許しませんよ!」

お姉ちゃんが叱ってくる。あ「お姉ちゃん」って言ってくれた。


「だって、一刻も早く捕まっている子たちを助けなきゃいけないんだよね。だったら私の『眼』で探してお二人を誘導します。そしてワザと捕まって正確な場所を伝えることができたら……」

「コレットが危ない目に遭う必要なんかないんだ!」

「そうよ、まったくもってその通り」

ふたりが詰め寄ってくる。

その心配が嬉しい。


でも―――

「私もお二人の役に立ちたいんです。いつまでも役立たずの末っ子でいたくないんです」

この啖呵に二人が固まった。

「お、おおおおおおおお」ってなんか感動して呻いている。


それからお姉ちゃんがひとしきり懊悩したあと、私に言った。

「わかりました。コレット・オルレア。あなたのその『眼』【高貴なる洞察ノーブル・インサイト】の力をお借りします」


……はい?

なに、その【高貴なる洞察】って?

いきなりぶっ込んでこないでっ。

ハティさんが恭しく膝をつく。

「正統なる王の御力、卑小なる我らにお貸しください」

え?ええ?なに、なんでそうなるの?!

それから「にへらっ」とハティさんが顔を緩める。

「コレットのカワかっこいい活躍が見られるんだっ!俄然やる気が出てきたよぅ」



(……潜入、成功しました。現在地の確認はできていますか?オーバー)

私の囁きに応答がある。

(コピー。現在地、確認。そのまま作戦を続行してください。オーバー)

お姉ちゃんの声。

(了解。アウト)

音声を伝える魔道具を私たちは装着している。

これはメチャクチャ高価なもの。そして、一セットくらいしかないという話。

守護者アンジェ様が50年かけて開発したものだそう。

ドワーフとケンカしながら形にしたという曰くつき。

さすがハイエルフ。



私は兵士たちに囲まれて、領主屋敷の地下に来た。

広い空間。檻の中に少年、少女たちがいる。

きっと攫われてきた子たちがここに集められているんだ。


中には衰弱している子もいる。

「新しいのが入ってきたから、一人は実験に回せるな」

そう兵士が話し始める。

「ああ、奥の部屋に一人連れていけ」

私と入れ替わりに男の子が連れ出される。

「やめろっ、放せっ」

少年が暴れるけれど、力では及ばない。

「うるせぇ、暴れるな!」

彼はお腹を殴られる。

痛みで動けなくなった。

「ったく、手間をかけさせるな」

そう吐き捨てて兵士はその子を連れていく。


許せない。

けれど、ここは報告をしないと。

(子供たちが集められているところに着きました。オーバー)

(コピー。何人いますか。オーバー)

(コピー。16人です。あと一人が別室に連れ出されました。全部で17人確認しています。オーバー)

(コピー。調べた人数と合致しています。これから踏み込みます。オーバー)

(コピー。了解しました。幸運を祈ります、タイガー。オーバー)

(コピー。グッドラック、スクワール。アウト)



わずか一分後。

轟音を立てて地下室の壁が崩れる。

「そこまでだ!悪党ども」


銀の右腕の魔人、ハティ・アガートラーム・マクスウェルが現れる。

「この右腕が訴えかけてくる…『汝、ロリ愛好者ならば、護れ』と…」

……平常運転ですね。


「悪い子いねぇがぁ、いじめっ子はいねぇがぁ」

双剣を手に、生ける伝説、エリーゼ・カナン・マクスウェルが立っている。

あ、別室に連れていかれた男の子が後ろにいる。

さすがはお姉ちゃん!


「儚きロリに手を出すとは言語道断!蕾たちが花咲くのを付かず離れず見守ることこそが真の愛好者たるもの。それにイタズラするなどっ!お前たちのような外道、成敗してくれる」

……やっぱりハティさん、変質者だ。右腕も銀に変質するし。


「子供たちを攫うなど、なんたる非道。お姉ちゃんがぶっ殺してやるんだから!」

……うん、お姉ちゃんは安定の凶暴さ。


そして、ふたりは私を見る。

「「さあ、コレット。我らに命じるのだ!」」

その声を受けて私は深呼吸をする。


右手を非道なる政府の兵士たちに差し向けた。


「お姉ちゃんっ、お兄ちゃんっ……やっておしまいなさい!」


ハリセンボンみたいなトゲトゲ怪人が出てくる。

あ、ハティさんが問答無用に殴り飛ばしてやっつけちゃった。

サメの頭をした怪人みたいなのが出てくる。

あ、お姉ちゃん構わずに突っ込んで斬っちゃった。


銀の閃光が縦横に駆け抜ける。

白銀の剣閃が螺旋を描いて地下室を白く染め上げた。


こうして、どっちが被害者でどっちが加害者かわからない一方的な蹂躙が続いたのでした。


次回は【ハル・ルート】に戻って「ガレットの因縁」に対峙することになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ