表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/204

第28話 探索、偵察、そして、覚醒する「剛腕」。



「そういえばさ、何でフィンたちはエルザさんを探しているの?」


「ああ、それな……」


そう言ってフィンレーがリムアンを見る。


リムアンは顔を逸らした。


「アイツが余計なこと言ってエリー……じゃなくてエルザさん怒らせたからな」


フィンレーがため息を吐く。


「リムが『おばちゃん』って呼んじまって」


スヴェンが困ったように笑う。

「だってぇ、ついうっかり」とリムアンが下を向く。


「リムを引っ叩いて『もう知らん』って、走り去っていったよね」


「追いつける速さじゃなかった」


そう言う「魔狼騎士団フェンリルナイト」の皆さん。


「俺ら『瘴気』の出どころを探りながら『政府』について調べてる」


フィンは簡単に教えてくれた。


「『瘴気』は見つけ次第、『浄化』や『鎮圧』だね」


「そんでもって、可能な限りエルザさんの動向を見て『支援』してるんだ」


「エルザさん、無茶苦茶するからさぁ」


アルセイスも説明してくれる。


「ちょうどこの間、リャナンが情報を持ち帰ってくれたから、エルザさんを追いかけながら教えようと思って」


みんなでため息を吐く。


「まあ、親父と合流できていればいいけれど」


話ながらも油断なく「森」の中を探る。


村に大量発生している「魔獣・デカネズミ」。


この大量発生は異常事態だというのだ。


自然発生したものじゃないらしい。


だから、今、僕たちは「発生源」を特定しに来たのだ。


「村には『共和政府軍』が駐留している」


「なら、必ず『魔術師』がいる」


「気づかれないように僕たちは『魔術』を使ってはダメだよ」


アルセイスがそう言っている時、先行するリャナンが手を挙げる。


みんなで止まる。


(一匹、いる)


そう言った。


リャナンが腰に手を持ってくる。


「っ!」


無言の気合と共に手を振る。


銀色の光が飛んだ。


そして、過たず小さなナイフのようなものが「デカネズミ」の急所?を貫く。


デカネズミが黒い靄になって消えた。


「報告されたりしたら困るからね」


リャナンが言う。

なんか、すごいなぁ。「暗殺者」って感じ。


「でもさ、なんで『政府』は『魔物』増やす必要があるの?」


「あ~、それな~」


フィンレーが考え込む。

どうやら僕にもわかるように噛み砕いているんだ。


「外来種を考えてみてくれ」


「在来種より繁殖力高いのが多いだろ」

「どんどん生息域増やして、広がるわけだ」

そう言ってフィンレーが僕を見る。


「アイツらだって、種を増やすために必死なんじゃないかな?」


「ふぅん」と納得しなかがらも、あることに気づいた。


「もしかして、『エナ』がかかった病気って」


僕の問いに、フィンレーが頷く。


「たぶん、あのネズミを介して『魔物化』させようとしたんだろうな」


それが、あの「煤」みたいなやつ?


「でも、エルザさんが『浄化』してくれたんだろ?なら、あの人なら、広まらないように手を打ったいただろうな」


フィンレーに続くように、アルセイスが言った。


「追い出されなきゃ、今でもこの村は安全だったはずだよ」

アルセイスは「アイツらバカだよね」って呟いた。




そうやって、森の中を探索すること一時間ほど。


「あった。あれだよ」


アルセイスが示す。


その先の地面には何かの紋様が描かれていた。


〈ヒドイ……〉


アンジェさんが声を漏らす。


僕にだってわかる。


あそこは「歪め」られている。


森の中にある「土」は、本来ならばみずみずしさがある。


湿り気とか、有機的な感じとか。


それがなく、乾いたようになっている。


土精霊グノームスが……」


リムアンが眉間にしわを寄せる。


一瞬、「魚」のようなものが飛び跳ねるのが見えた。

幻覚だったのか、すぐに消えたけれど。


(あれはっ!?)


僕はその魚の跳ねた方を見て、気づいた。


魔術陣の中に、小さな「芽吹き」。


ちょっと波打ったような葉っぱ。きっと「コナラ」だ。


きっとリスの忘れ物。


僕は思わず駆け寄った。


なんで、あんなところに。


「ハルっ、危ない」


リャナンが言う。


「バカっ、方陣に触れたらタダじゃ済まないぞ」


フィンレーも叫ぶ。



――――――スン



僕は「コナラベイビー」に触れた。


んん?なんかさ、さっきまで光ってたのが消えたね?


〈ロッシェぇ、気をつけてよねぇ〉


(え?ああ、そうだね。コナラちゃんはまだ赤ちゃんで繊細だものね)


〈いや、そう言うんじゃなんだけれど〉


なんか、アンジェさんがぶつくさ言っている。


「おい、どういうことだよ」


「これが、【神器】の力か?」


「ありえない。術式が魔力と一緒に霧散している」


みんなで騒いでいる。



――――チュゥ


森に可愛らしい鳴き声が響いた。


「ヤバッ!」


リャナンの言葉に、みんなで振り返る。


離れたところに「デカネズミ」が一匹いた。


明らかに、僕たちを見ている。


デカネズミはすぐに走り去った。


「クソッ、追うぞ」


フィンレーが言い終えるよりも早く、リャナンが走り出していた。


けれど、距離を縮めることができない。


「アイツ、逃げ足速いな」

「遠距離攻撃もできないし―――――」


「シィィィィィ」


空気の漏れるような、高い音が響いた。


見ると、ハンナが「石」を抱えている。


ハンナが鋭い呼気。

それが歯の間から漏れ、高い音を立てている。


ギロッ


ハンナが、鋭い眼光でデカネズミを捉えた。



前傾した姿勢。

両手で持った、拳骨より少し大きい「石」。


私は、石を持った右腕を大きく回す。

円を描くように、体側にそって後ろへと。


―――そう、私の横には大きな「円」のスロープがある。


ここには、小さな「空間」がある。


回した腕、後方の高い位置に「球」が来る。


ここから、「球」は走る。

そして、目の前の「世界」を穿つ。


スロープを滑り落ちるように、「球」が移動する。



バチバチバチバチッ!


大胸筋を極限まで縮める。

腹筋も締めた。


まるでマッスルポーズ!

いや、スパーク!



「アァァァァァァっ!」


全身の力が収束して「爆発」した。


小指側の手首を「ブラッシング」で腰にぶつける。


バッシーン!


その衝撃で手首が返る。

「球」に回転が生じる。


私は「球」に最後のひと押し。


押し出して脱力した手。

緩やかに振るわれる。


まるで「バイバイ」って後を託すように。


シュゴーーーーー!


ソニックブームが空を裂く。


「球」は滑るように、空気のトンネルを通るように走る。


音速を超えて「ミット」へ。


「ミット」……前を走る「デカネズミ」。

その尻を貫通した。


「チュゥァァァァあんっ!」


ちょっと「薔薇」っぽい映像が脳裏をよぎった。


体を穿たれた「デカネズミ」の体が黒い靄となって四散した。




「あ、ああ……」


みんなで声にならないうめき声を漏らす。


「ななな、なに、あの子」

「家畜荒し追い払うレベルじゃねぇ」


声が震えている。


ハンナが投げた「石」。

それが、魔獣を吹っ飛ばした。


〈あれ、100%、フィジカルよ〉


アンジェさんの声。


「ぅぅッ!」


ガレットさんが小さくうめく。

というか、居たんだね。

静かすぎたので気づかなかったよ。


ガシィィィィっ!


いきなりハンナの肩を掴んだ。


「ヴィクトリイイイイイイ!」


まぁ、確かに勝ちましたね。


「お前は、『エース』だ!俺たちのチームにぜひ来てくれっ!」


んん?どういうこと?傭兵団へのスカウト?


「その剛腕っ、絶対にメジャーで通用……いや、世界をひっくり返せるっ!」


えええ?いきなりメジャーデビューって急展開!


「入団ししだい、お前は先発ローテに入れ!背番号は『029』(おにく)でどうだっ!?」


いや、傭兵団に背番号なんてあるの?


興奮気味に言うガレットさんに対して、ハンナが手を差し出す。


それは「握手」ではなく「お断り」だった。


「私は、『畜産家』の娘です。村娘です」


キッパリとハンナが言い放った。


「いくら最強といわれていても『傭兵団・黒金の鷹』に入団しません」


「なあああっ」


ガレットさんが愕然とする。


「ね、年俸は弾むぞっ!なんならプール付きの別荘も用意するっ、なんで『ドラフト1位』指名がぁっ」


「あ、そういうの、いいんで」


ハンナはあっさりと「スン」してしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ