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第24話 ポテト・マッシュ 【ハル・ルート】


魔獣を倒した後、ガレットさんたちの協力で魔獣を引き寄せた方陣を探した。

見つける度に僕がそこを耕した。

土寄せ棒に鍬の先をつけて「えっほ、えっほ」と耕す。


何ということでしょう、あれだけ荒れ果てた土がみずみずしい息吹を感じるように。

壊された村の結界は、アルセイスくんによってさらに強固に修復されました。

そしてあんなにボロボロだった村の囲いは、フィンレーたちの協力によって蘇りました。

なんと門の入り口には匠の技が!

ジャガイモとブドウのプレートが……あれだけ簡素な門がオシャレな形で息を吹き返しました。


と、まあそんなこんなで魔獣に荒らされた土地も復活した。

でも、壊された建物とかは元には戻らない。

あとは村のみんなで頑張るしかない。

もちろん僕はここに残るという気持ちは皆無だ。


「これ」

そう言ってリムアンがリボンを差し出してくる。

あ、これは……

「ハルが前に言っていたでしょ。エナのリボン」

そう、僕がこの家に取りに来たかったもの。

死んだ父さんがエナにプレゼントしたもので、ここを去る時には見つけられなかった。

「リムが汚されていたのをキレイになるまで洗ったんだよ~」

リャナンがこっそりと教えてくれる。

「言うなって言ったでしょ!」

リムがリャナンを叱りつけて僕にリボンを押し付ける。

そうして彼女がそっぽを向く。

「あ、ありがとう」

僕は涙がこぼれるのを堪えられなかった。

「な、泣くなっ!男の子でしょ」

「う、うん……でも、ホント、ありがとぉ」

湿っぽくなったのを誤魔化すためか、リャナンが大げさにあるものを取り出した。

「じゃじゃ~ん!お母さんの服も見つけたよ」

それも父さんが母さんにプレゼントしたものだった。

母さんは僕たちのものを優先して自分のはほとんど持って行かなかったから。

それから二人は僕の肩を小突いた。


「ね、ハル。そんなに悪いことばっかりじゃないでしょ?」



村を出るころに僕は村の救世主扱いだった。

みんなから褒められるってこんなに気分のいいものだったなんて。

出発の時、今まで冷たかったハンナが手を握って「ありがとう」って言ってくれた。

しかも潤んだ目で僕を見つめてくるんだ。

ちょっとドキドキしちゃったよ。

フィンたちが「ケッ」と毒づいていたのは忘れよう。

一件落着して、今の僕はメタラムの街に戻る途中。

道すがらポルコとその取り巻きが何かのオブジェにされていたのを目にした。

何か言っていたような気がするけれど。

まあ、もうどうでもいいので僕たちは無視していく。



僕たちは道中の街で休憩をとることにした。

一晩ここで過ごして、明日また出発する。

フィンたちもめいめい観光しに歩いている。

ここは「オルジュの街」

治安が良くて作物が豊富。大麦が主な作物だ。

だからお上りさんの僕が一人で歩いていてもスリに遭う事すらない。

(いい街だよね~)

そう思いながら市場を覗く。

(ああ、なんてみずみずしいジャガイモさんたち)

僕は目を輝かせる。

売られている作物は全て品質がいい。

領主が農業に力を入れている証拠。

しかも適正価格というのは収穫も安定しているんだろうね。

ふわっといい香りがした。

シトラスのような香りと木のような落ち着いた感じ。

ちょっと重たく甘いような…

僕は顔を上げると、路地の向こうへと歩き去る銀色の髪をした女性を見た。

(ま、まさか、エルザさん!)

前とちょっと匂いは違うけれど。

でも、そうだった。僕はエルザさんを探すんだった。

会って彼女に言うんだ。

あのとき言えなかった「僕も一緒に旅をしたい」って。

思わず後を追うようにして走った。

「おい!」

「あ、ごめんなさい」

「気を付けろ!」

「すいません」

人をかき分けてその女性が入った路地へと向かう。

「あれ?」

いない?どこへ……

キョロキョロしていたら、声をかけられた。

「おまえ、フェンリルナイトだな」

無精ひげを生やした黒髪の男性。

かなり大きい。それに、ガレットさんに似ている。

「バカじゃねぇか、団員証をぶら下げやがって。隠せ」

男の人は僕を叱りつけた。

僕は言われたとおりにフィンから借りていた団員証を隠す。

「ここの領地じゃ、五将は目の敵にされてる。フェンリルナイトだって知れたらお前タダじゃ済まねぇからな」

しかも心配してのお小言。ますますそっくりだ。


ちなみに五将というのは、旧王家の五人の英雄のこと。

最優の聖騎士長。十字の騎士の称号を持つ、エリーゼ・カナン・マクスウェル様。

最狂の銀の右腕の魔人。白狼将軍、ハティ・アガートラーム・マクスウェル様。

最速の軽騎兵。神機妙道の智将、ティア・シュトゥーテ・フライン様。

最強の魔術師。王国の守護者、アンジェ・フラン・スカーレット様。

そして、実際の人物は暑苦しくて迷惑そのものだけれど。

最強の傭兵団団長。戦場の覇者、ガレット・グランハートさん。


「はい。すみません」

僕は素直に謝る。

「気をつけろよっ、ったく。相変わらず面倒なガキどもだぜ。お頭もとうとう焼きが回ったのかね」

そうやってぼやきながらも、僕の肩を軽くたたいていなくなる。

いい人なのかな?


それから僕は表通りに戻り、屋台で芋餅を買い食いして宿に戻ることにした。

(くっ、なんて味な真似を。モチモチの芋の中に大麦のプチプチとした食感だとぅ?!どんだけ食材の特徴を把握しているんだ)

もぐもぐと芋餅を食べる。

甘しょっぱい餡にうっとりしながら歩いた。

「よぉ、ハル。良いもの食ってるな」

あ、ガレットさん。

それにソニアさんも一緒だ。

「一つ食べますか?」

「はは、ありがとよ。気持ちだけ受け取っておくわ」

そう軽く言ってからふと遠くに目をやる。

あれ?あの人は……

「ウォルフがいやがる。今日は引き下がるか」

そう言って僕の背をそっと押して促す。

「?」

少し歩いてから僕は尋ねた。

「ウォルフって人は何者なんです?」

僕の問いにソニアさんが眉を上げた。

それを「やめておけ」というようにガレットさんが制する。

「ウォルフ……ウルフスベイン・カイトは俺の仲間だ」

「正確には元、だろ、お頭」

「そう言うな。あいつにはあいつのやり方があるんだ」

「納得いかないねぇ」


話によればこういうことだ。

この街の領主はウルフスベイン・カイトさん。

さっき僕を叱った人。

で、この規模の街の領主は小領主ってことになる。

こういった小領主をまとめ上げる権力者が大領主。

侯爵とかその上の公爵とかがそうなんだけれど。

今この一帯を仕切っている大領主はグリード・バロウという男。

この人のことは知っている。

だって、僕のいたバクス村もグリードの領地だったんだもの。

つまり、小領主で男爵のウルフスベインさんやガレットさんの上の位にいる。

あれ?でもちょっとおかしいぞ。

傭兵団は、ウルフスベインさんがガレットさんを頭目に押し立ててできたんだよね?


「あの裏切者め」

「言うなって」

納得がいかずに文句を言うソニアさんをガレットさんがなだめる。

帝国を併合する戦で功績を上げたガレットさんは男爵になった。

部下のみんなは騎士爵を賜る。

そこで、ウルフスベインさんが領地を貰って独立した。

常々公言していただけあってみんなで納得していた。

他にも爵位を貰った大隊長クラスは領地ももらえたので抜ける者も出た。

そのなかにグリード・バロウもいた。

「アイツだけ、とんとん拍子に出世したな」

理由は簡単。犯罪に手を染めていた。

それも第三王子アドニス様が王権を得るために暗躍していた。

この功績もあり、アドニス新王の誕生、帝国併合。

そしてグリードは爵位を貰い、それから過去の実績と働きで、のし上がった。


「だが、変わり身も早かった」

そう、グリードはアドニス王の治世のころからすでに共和政府の要人と接触していた。

反乱の手引きをし、目論見通り、アドニス王の治世は瓦解。

そして混乱の渦中、ウルフスベインさんはガレットさんと袂を分かった。

「ウォルフがなぜ」

ガレットさんの呟きが聞こえる。

ガレットさんは基本単純。裏表がないし、仲間を信じている。

それだけにウルフスベインさんの意図が読めないらしい。

まずはガレットさんの胸襟を開かないといけない。

あ、大胸筋じゃないぞ。


ジャガイモ仲間へ


今日もお疲れさまです。

ストレス、たまってきていませんか?

美味しいもの(芋餅とか)食べて「スン」して寝ちゃいましょう!


今回からガレットの因縁を「スン」するお話がスタートです。

ぜひ、次話もご覧ください。


ちなみに、ハルくんとコレット&エルザ(エリーゼ)の合流は37話を予定しています。

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