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第207話 ジャガーノートと襲撃者。赤い槍とリャナンの真実!?



「ねえ、フィンはその『赤い槍』を普段使うよね」


「ああ、そうだよ」


「でも、剣も得意だよね」


「まぁ、な」


「状況によって使い分けているの?」


「ああそうだよ」


フィンは困った顔をする。


「この槍、【ビルガ】は、魔力を吸うんだ。ちょっと燃費悪いんだよ」


そう説明する。


この『赤い槍』は【ビルガ】という銘らしい。


「蜂」の力を持つというのだ。


ミッドガルズで見せたように、「士気高揚」や「活力分与」などいろいろな術が使える。


範囲攻撃が使えないフィンレーはこの「槍」を戦況に応じて使い分けているそうだ。


「あれ?でも、この間の共和政府軍と戦った時は使ってなかったよね?」


あんな多数を相手にする時ほど必要だったんじゃ?


「あ~、それな~」


困ったように頭を掻くフィンレー。


「エリーゼさんがいたからなぁ」


そう呟く。


それで僕は察した。


エリーゼさんは大の「虫嫌い」。


「ロナウ戦」での取り乱し方は尋常じゃなかった。


「前に使ってよぉ」


フィンが涙目でこちらを見る。


「ひっっどい、目に遭わされたんだ」




フィンレーの話では、エリーゼさん、その場でシバキ倒しただけでは飽き足らなかったらしい。


『後で、その槍持って倉庫裏に来い。逃げたらわかってるな?』


と、招集をかけられた。


震えながら行くと、マクスウェル一家(ハティさん除く)が待ち構えていた。


『おお?ええ度胸じゃあのぉう?おおん』


そうエリーゼさんに言われながらメンチきられた。


『もう一度、ドヤって使ってみい?ホレ、どうした?』


エリーゼさんが煽ってきた。


もちろん、フィンレーが使えるわけがない。


ちょっとでも槍を持ち上げようものなら、フリードさんや、ブレイブ叔父さん、アビスさんが無言で「殺すぞ」と脅してきた。


……って「ブレイブ叔父さん」なにやってるのさぁっ?


僕ら一族は「平和主義的農家」が信条なんじゃないの?


「反社会的勢力」には与しないって。


暴力で解決したり、みんなを怖がらせるようなことをしちゃダメだって!絶対にさ!


……あっ!?


しまった……僕はみんなと「国家転覆」してしまったんだ。


僕は何を言っているんだ。


そうこうして、フィンレーは泣く泣く「血の誓約状」に押印させられた。


「エリーゼさんの前で【ビルガ】を使わない」


「エリーゼさんの前で【ビルガ】の穂先を見せない」


というもの。


これに違えれば、「足の小指を固い角にぶつけ続ける」というじみーーにキツイ呪いをかけられた。




「そっかぁ、それはキツイねぇ」


僕はフィンレーを慰める。

ホント、彼は苦労が絶えない。


「そういうことぉ」


フィンレーは半泣きで応える。


「みんな!」


リャナンが声を上げる。


僕たちはすぐに周囲を警戒した。


って!?また「白目」剥いてるぅ!


リャナンは「索敵」の時なぜか「白目を剥く」という変な癖がある。


本人は集中していると自然になるっていうけれどさ。

普通にしていれば、「黒髪ストレートヘア」の美少女なんだよ?


なんで、そのアイデンティティ、ドブに捨てているのさ!?


「ハルっ!伏せろ」


スヴェンの指示。


僕は慌てて身を低くした。


「【アイギス】!」


スヴェンが「盾」の魔術を使う。


盾が展開されるとほぼ同じくして矢の雨が降ってきた。


僕たちは身を低くしながら「盾」の後ろに避難する。


オオオオッ!


雄たけびが聞こえる。


「獣人族っ!?」





僕たちはなんとか「獣人族」の襲撃を撃退した。


リャナンとフィンがそのほとんどを倒した。


僕も1、2体は倒したと思う。


「腕を上げたな、ハル」


始終、防御役をしていたスヴェンが褒めてくれる。


「え?いやぁ」


照れくさくなって僕は頭を掻く。


〈ふふん、ロッシェはまだまだこんなもんじゃないわよ〉

【棒ジェ】さんが自慢げに鼻を鳴らす。もっともそんな素振りの音だけれど。


しかし、ここのところ「獣人族」がらみ多くないかな?


「おい、『リャナン』ここまできたらハルにも事情を説明した方がいいんじゃないか?」


そんなことを考えていたら、フィンレーがリャナンに声をかける。


リャナンが一瞬だけ、身を固くした。


それから、深々とため息をついた。


「ハル」


リャナンが僕を見る。


「私は、『リャナン』。『リャナン・シー(妖精)・マクスウェル』」


濡れたようなダークブラウンの瞳。


美しい黒く艶やかな髪。


「妖精族の『リャナン』なの」





私が物心ついたときには「おとうさん」はいなかった。


「おかあさん」とふたり。


おかあさんも「リャナン」。


私たちは代々「リャナン」という名前を受け継ぐ。


小さい時の名前は思い出せない。


当時は帝国と戦争をしていたから、戦でたくさんの人が亡くなった。


みんな貧しいし、住む場所を求めていた。


私たちはそんな人たちに紛れて居場所を求めて転々としていた。


でも、私たちが居場所を変えるのは「戦」だけが理由じゃない。


私たち「リャナン・シー」は、「吸血の一族」。


「吸血」といっても実際に「血」を吸うのではない。


「血」の代わりに「魔力」を吸う。


魔力を吸う代わりに、相手には「恩恵」が与えられる。



「才能の開花と強化」。


吸う「魔力」の量によって、「強化」の強さが変わる。


それに、「才能の開花」も、相手が「望む才能」を後づけするもの。

だから、恩恵を受け取った者にはとてつもない負担がかかる。


―――そう、その「寿命」を縮めるほどに。



それでも「才能」を欲する人は後を絶たない。


だから「リャナン・シー」は狙われる。


私たちを囲って、望みを叶えようという人がいる。



私たちは逃げて逃げて、逃げ続けた。


途中、おかあさんが捕まって、抵抗して……


――――――私の目の前で「殺された」。



おかあさんを殺した人は、最初はとても優しかった。


でも、私たちの正体を知ると、手のひらを返した。


おかあさんはその人を殺したくなかったから、断り続けたのに。


逆に殺されてしまうだなんて。



私は、もはや誰も信じられなかった。


嫌い……みんな、嫌い。


みんなで私たちを利用しようとする。


みんな、私たちを見てくれない。


みんな、私の「恩恵」しか求めていない。


嘘つきばっかり。


私は「人」に絶望した。


絶望したまま歩きづつけた。


そんな絶望の中で、私は「ある男」と出会った。


そう、この世の規格に囚われることのない「彼」と―――――


ジャガイモ仲間のみなさんへ


夏ですね。

体調をくずされていませんか?

この暑さのような不快感を与える人に困らせられてませんか?


今日も1日頑張っているみなさんは、最高ですよ!


本作品の続きが気になる方、ぜひブックマークをお願いいたします。


次回、リャナンの運命を揺るがす「あの人」との出会いが描かれます。

乞うご期待!

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