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第206話 激務!エリーゼさんと、旅路のジャガーノート



暫定政府首都、ミッドガルズ。


ここは、「旧共和政府」の議事堂であり、「旧王政時代」の王城でもあった場所。



「おのれぇええ!」


エリーゼが呻く。


「キョーチョーセーーーーイ!」


天に向かって吠えた。


もちろん、「五将」のまとまりのなさに対してだ。


「共和政府」を倒し、政権を取り戻した。


エリーゼは自分の領地を取り戻すことができた。


この国に蔓延り、暗躍していた「転生の悪魔」を倒すことができた。


これによって「ウォルター」の仇もうつことができた。



しかし、しかしだ。


「戦」はただ敵を倒せば良いというものではない。


特に、今回のような国を正常化させるための場合はだ。


戦後処理をしなくてはならない。


それなのに。


どいつもコイツもやる気が違う方へと向いていた。




早々に「ハティ」と「アンジェ」はエルフの自治区に引っ込んだ。

やる気がなさすぎる。


――――『ハティ、お姉ちゃんとふたりの王国をつくりましょう』


エリーゼが手を組み、覗き込むように言った。

だが、ハティはつれなかった。


『いえ、結構です』

にべもなく答える。


『そうよぉ、なにトチ狂ったこと言ってんの』

ハティに続いてアンジェも言う。


『僕たちは、エルフ自治区の別邸でしばらくゆっくりさせていただきます』

肩を落とすエリーゼにハティは言った。


『でも、ご安心を。ちゃんと姉上のお力になれる者をご用意いたしますので』

ハティはにこやかに言う。


しかし、ようやく弟・ハティと共にまた歩むことができると期待していたエリーゼには落胆しかなかった。


『ああああああああああああ』

去っていくハティとアンジェを涙ながらに見送るしかなかった。


アンジェが振り返って舌を出していたのも追い打ちをかけた。


『くそぉあぁぁぁぁ』

エリーゼは慟哭した。



そして、「ガレット」は自分の領地、エーレンブルグ復興に集中。

自分のところだけ良ければいいというものではないというのに。



―――――『ガレット、国の立て直し、あなたにも尽力してもらいますよ』

エリーゼは胸を反らしながら言った。


『あ~、悪い。エーレンブルグ、まだ復興途中なんだよ。姐さん』

ガレットはバツが悪そうに言った。


『それを言うなら、私のマクスウェル領とて同じです』

エリーゼは頬を膨らませて言い返した。


『姐さんところはフリードがいるだろ?』

そう言ってガレットが苦笑いする。


『それに、「戦塵の中、天駆ける鷹が、それ以外の場所ですることなどないでしょう」って俺に発破かけたの姐さんだぜ?確かに政治なんて俺には向かねぇわ』


『ぐうっ』

ガレットにそう言われ、エリーゼはうめいた。


『まあ、俺は自分の目の届く範囲で夢が叶うなら充分だ』

ガレットはカラカラと笑う。


『ああ、でも、適任者はいるから、こっち落ち着いたらよこすよ。そいつの「夢」叶えてやってほしい』

ガレットの裏のない笑顔に、エリーゼはぐうの音も出なかった。


―――いや、さっき一回「ぐう」と呻いたが。



「ティア」は政府の国家公安委員の長に就任した。

ティアについては王政時代「金の軍靴ゴールドグリーブス」として、同様の役職にあったため、職能について問題はない。


しかし、「地方役人の監督」と称して自身の「薄い本」の布教活動(即売会)をするあたり、公私混同もいいところだ。



『ティ―――――』


『ファァッハッハッハッーーー!』


『地方役人の取り締まりですが――――』


『お任せください!エリーゼ様!いや、「お義姉さま」!』


『は?』


『ハティは私のことを「好き」と申しました!これはもう「アレ」です』


『「アレ」とは何です?』


『鉄板の展開ですよ!素直になれないけれど、本音をポロリと漏らす「デレ」です』


『はぁ』


『大丈夫です!すべて私に任せてください』


戦が終わってしばらくたつが、今だこのテンションのティア。


『この国の未来は明るいです!いや、むしろ花畑』


脳内「花畑」となったティアが言う。


『ラブ&ピース!愛は世界を平和にするっ!!!』


ティアが高らかと告げる。


『今回のハティの「デレ」で、私は新たなる「天啓」、いや「境地」を得ました』


自信ありげに「原稿」の束を指し示す。


『私こと【神速の執筆者ライトニング・ライター】(※ペンネーム)の手で!有象無象の悪党どもの脳みそも、見事に「教化」して差し上げましょう!』


ティアが胸を叩く。

背の高い男装の麗人。


見る人が見れば、それはもうドストライクな美貌。


傍に控える従者「ジャンヌ」はハフハフと涎を垂らしながら熱い視線を送っている。


『それ!いけーーーー』


「ばびゅん」とコミカルな音を立ててティアが駆けていく。


(まあ、率先して地方役人の監督をしてくれるというのですから、話ははや――――)


そこで、エリーゼは気づいてしまった。


『あの子、さっき「教化」するとか言っていませんでしたか?』

自問自答する。


そして、愕然とした。


そう、ティア・シュトゥーテ・フラインは「薄い本」作家。


しかも、「BL」専門。


以前、「エーレンブルグ防衛戦」で、旗下で防衛にあたった兵たちのほぼ全員を「BL脳」に「教化」した前科がある。


『あああああああっっ!まちなさーーーーーい!』


このままでは、全員が「腐」属性になってしまう。

ある意味、「腐敗政治」だ!


エリーゼは慌てて後追ったが、遅かった。


『あなた!問題児ですかぁぁぁぁぁ』


「軽騎兵最速の女」、ティアの足には、さしものエリーゼでも追いつくことはできなかった。




そんなこんなを思い出して、現在。


エリーゼは頭を抱える。


彼女は「共和政府」の敷いた「共和制」を変えることはしなかった。


一気に変えてしまっては混乱を招く。


故に、「現行の政治」を維持しつつ、正常化を図ってから少しずつ変えていこうというのだ。


「お姉ちゃん……いえ、エリーゼ補佐官」


コレットの気遣わしげな声。


彼女もまた、向かいの机で書類の山と格闘していた。


コレット・オルレア。


旧王家の血を受け継ぐ者。


エリーゼは彼女を「国家元首」に擁立した。


別段、傀儡政治をしようというのではない。


ただ、以前よりの共和政府の高官たちを黙らせるためだ。


エリーゼを除いて「五将」にはちゃんと「決議権」がある。


強権を発動できる力を陣営に保有して、それを束ねる「旗頭」となってもらったのだ。


「ああ、大丈夫よ。『コレット総帥』」


エリーゼは笑う。


だが、その顔は引きつっている。


(あの子たちがちゃんと協力してくれていれば、こんな苦労しなくても)


そう、愚痴が浮かぶ。


もちろん、コレットはその「心のビジョン」が視えている。


(ううう、お姉ちゃん……私、もっと頑張るから)





僕、ハル・ロッシェは今、「エーレンブルグ」へ向かっている。


もちろん、「引っ越し」だから。


母さんやエナは、僕が「マクスウェル領」で戦っている間に「エーレンブルグ」へ移住していたらしい。


僕が畑を貰ったと聞いて、復興の手伝いも兼ねつつ「僕の畑」のために。


だから、今回の引っ越しの「荷物」は母さんたちが残したわずかなものと、僕のもの。


母さん、ありがとう。


こんな放蕩息子のフォローしてくれて。


ああっ、ヤバッ!なんか涙がっ!?


〈ロッシェ、大丈夫?〉

【土寄せ棒】の「アンジェ」こと【棒ジェ】さんが気遣ってくれる。


(大丈夫大丈夫)


僕は彼女へ言った。


それから、隣を歩くリャナンを見る。


彼女は何事もなかったかのように、鼻歌交じり。



ありえない。


ほんとぉぉぉに、あり得なぁぁぁい。


恨みがましい目を彼女に向ける。


あの時、リャナンはメタラムの裏路地で「獣人族」を返り討ちにした。


そして、バックレた。


後始末は、そこに残された僕とルーダですることになった。


駆けつけてきた「警備隊」の人たちによって事情聴取が行われた。


僕たちの装備品と傷が一致しないので、犯人と断定されなかったのが救いだ。


加えて、ルーダが「ギース親方」の弟子ということも酌量の余地となった。


ドワーフ自治区「アダマス」は複数の集落で形成されている。


各集落のまとめ役「区長」の集まりによって統治されている。


ギースさんは「アダマス」の区長だった。


そういった要素も絡み、僕たちはただの「第一発見者」として扱われたのだ。


今回の「事件」は「『冒険者』どうしのいざこざ」と。


ギルドにも所属登録がない「冒険者」は無頼の輩。


彼らがどのような末路を迎えても、「自治区」は関与しない。


だから、「チモシー」のような「掃除屋」が片づけをする。


「無法の輩」のことは「無法の闇に」という事らしい。


「掃除屋」は、「掃除」の時に出ためぼしいものを「報酬」として懐に入れられる。


だから、チモシーはあんなに急いていたのか。


世知辛いなぁ……



そんなことを思いながら街道を歩く。


視界の先には荷車を引くスヴェン。


隣で周囲を厳しい顔で警戒するフィンレー。


雨が上がっても、道はまだぬかるんでいる。


空もまだまだ曇り模様。


夏の湿った重苦しい空気が、まとわりつく。


頬をわずかばかり汗が伝った。



ホント、このまま何もなければいいなぁ。


ジャガイモ仲間の皆さんへ


今日もお疲れ様です。


日々理不尽に耐え、無念無想のスルー戦略など難題に取り組んでいる皆さま。


本当にお疲れ様です。


皆さんの孤軍奮闘、誰も見ていなくても作中の「コレット」ちゃんはちゃんと見てくれているハズですよ。


頑張って下さい!

応援しております。



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