第20話 最後通牒
このエピソードは「胸糞注意」なエピソードです。仕事(学校)でイライラしている方は飛ばしていただいて大丈夫です。
「へへへ、あざ~ス」
ポルコは揉み手をしながらお辞儀をした。
報酬の銀貨をたんまりと貰った。
お前は使える奴だと褒められた。
最高に気分がいい。
自分を持ち上げない、褒め称えないこの村の連中なんてどうでもいい。
共和政府の正規軍が自分を「使える」って褒めているんだ。
つまりは国が自分を認めたってことだろう。
「どうだ、お前ら。政府のお偉いさんが俺に『お前は使える』ってよ」
「凄いっすねぇ」
廊下で待っていた取り巻きたちが調子を合わせる。
「だろ?あんな使えないハルなんかとは比べモンにならないってことだ」
下卑た笑いを浮かべて廊下を歩く。
今は寝床となっている村長宅の離れへと向かうところだ。
「戻ったらお前たちにも報酬分けるからな」
「ポルコさん太っ腹ぁ」
渡り廊下に出る。
風が吹いた。
「ぅ、寒ぃ」
一同が身震いをした。
「あ?」
人影を見つける。
「誰か逃げようってんじゃないだろうな。追うぞ」
ポルコたちはその人影を追った。
「ポルコ」
その人影は屋敷から離れたところで足を止めた。
ハルだった。
「オマエ、よくその面出せたなっ」
ポルコが唾を吐きながら怒鳴りつける。
だが、向かっていこうとはしない。殴られたときの痛みをまだ憶えているのだろう。
「ポルコ、今は逃げろ。みんなを連れ出すんだ」
「はぁ?何いってんだ?」
そう言いながらも周りに仲間がいないかを探る。
「これを見てくれ」
ハルが紙の束を渡す。
ポルコも字が読めた。
「何て書いてあるんですか~」
取り巻きたちは字が読めないのでポルコに尋ねる。
「ぷっ、ははははは」
ポルコが笑いだした。
紙は新聞記事だった。
それも魔物騒ぎで政府軍が駐留した村々が滅んだというものばかり。
「他の村がここ数年でいくつも廃村になっている。おかしいだろ?この村だって例外じゃない」
ハルの言葉にポルコはニヤつきながらわざとらしく手にした記事を掲げた。
目の前でひらひらさせると、真ん中を摘まむ。
ピリ―――――
ゆっくりゆっくりと縦に割いていく。
ニヤニヤとハルの顔を見て反応を楽しむように。
「こんなの、いらなぁ~い」
そう言って割き終えると、丸めて投げ捨てた。
取り巻きたちは「ヒャハハハ」と大声を上げて笑った。
「いいか、俺はな、お前とは違うんだ。政府にも認められた人間なんだよ」
なおも言い募る。
「直接言われたんだ『お前は使える奴だ』ってな。俺を必要としているわけ。お前みたいな『使えないクズ』とは違うんだよ」
取り巻きたちはなおも笑っている。
「今日は、お仲間はいないみたいだな。で、どうするハル君」
ポルコの問いにハルは静かに言った。
「帰るよ」
「そうかいそうかい、『帰る』のかい?」
「うん」
「あのクソまみれの家に帰るんだな?クズのお前にはお似合いだもんな、ぴったりになるようリフォームしてやった俺たちに感謝しろよ」
「そう、だね」
夜闇の中でハルの表情はわからない。ただただ静かに答えるのみだ。
それをポルコはハルが怯え、怒りを我慢しているのだととった。
「あれあれぇ?あの時の威勢はどうしたんだよ?確かあのときは冒険者の仲間が周りにいたな?結局お前は『一人じゃなんにもできない臆病者』ってことだな」
キヒヒヒヒと甲高い笑い声を上げる。
「いいぜ、見逃してやるよ。さっさとあのクソまみれの家に帰るんだな」
手をひらひらと振って取り巻きたちと嗤う。
ハルは無言で立ち去って行った。




