表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

196/218

第196話 「優しくして」…ドキドキの「スン解呪」。絶叫のスン解呪と矛を止める魔人の「武」




エリーゼとウォルターの一騎打ちをアンジェの魔術で見ていた軍勢。


双方ともに驚愕し、言葉を失った。


「……悪魔」


誰かが呟いた。


「悪魔にそそのかされていたのか」

「司令が、悪魔だった?」

「嘘だ。俺たちは何のために」


共和政府軍から口々に後悔と落胆の声が漏れる。


「ハッ、そなたらは本っっ当に、グスで愚かだな!」


ティアの罵声が飛ぶ。


「己のした過ちを悔いるのは後のことだ。今、ここでしなくてはならぬことは何か?」


言葉に共和政府軍が雷に打たれたように背を伸ばした。


次いで、地に突き立てていた武器を引き抜くと、投じて降伏を示す。


「それでよいのだ。これで、もう我々は傷つけあわなくてよいのだ」


ティアは満足げに言うと、宙に浮かぶ魔術の映像に目をやる。


「あとは、あの姉弟がかたをつけてくれることを見守ろう」





「ハル!」


突然現れたアンジェさん。


「力を貸して」


エリーゼさんも一緒だ。


鎧を外している。


左肩から血を流していた。



「お姉ちゃん!」


コレットが駆け寄り、治療しようとする。


「触っちゃダメ!」


アンジェさんが制止する。


「呪いの武器で傷つけられた。触れたら影響を受けるかもしれない」


「でも……」


血は止まらない。


エリーゼさんが自分で処置したんだろう、包帯から滲み、血は流れ続けている。


「ポーションを」


エリーゼさんが言う。


コレットが渡すと、それを飲み干した。


失血で青みがかっていた顔に少しだけ血の気が戻った。


「ハルっ、『解呪』を手伝って」


え?


「ハティの時みたいにするの」


アンジェさんが言った。


〈ロッシェ、やるわよ〉

【土寄せ棒】の「アンジェ」さんも僕を促す。


「わかりました」


僕はマジックバッグを漁る。


「塩」と「水筒」を取り出した。


『ちがう!そっちじゃない!』


アンジェさんとコレットに怒られた。


ええ?「イモコロリのまじない」じゃないのっ!?


「は、ハル……」


エリーゼさんが僕を見る。


はぁはぁはぁはぁ……


彼女は荒い息をついている。


意識も朦朧としているのか、目がうつろだ。


「そ、その【棒】で……」


切れ切れに言う。


もともと色白のエリーゼさんの顔がさらに「青白い」。


けれど、表現できない「艶めかしさ」があった。


「私を『突き』なさい」


はい?


「早くなさい。もう、堪えられそうにない」


いやいやいやいやいや、なに言ってるんですかこの人!


「その【棒】で、鎮めて……」


ちょっ、ちょっと、こんな時まで、言い方!


「いや、さすがに他の方法はないんですか?」


だってさ、こんな状態の人を「棒で突く」ってヤバくない?


「遠慮しなくていいのです」


「私が望んだのだから」


待ってって、まず言い方から考え直そうか?


「クライマックス」迎えてるのに「スン」されないかっ!?


「はやく……して」


うわああああああんっ!


「痛いのには、慣れているから」


「でも、優しくして……」


エリーゼさんの気遣いが間違った方に解釈されないように!


「早くしないと、エリーゼがもたないわよ」


そんでもって、促すアンジェさん!ちゃんとフォローしてよ!


僕は【棒ジェ】さんの先をエリーゼさんに向ける。


〈ううう、アタシをこんな使い方するなんてぇ〉

【土寄せ棒】の「アンジェ」さんが複雑そうな声を漏らす。


〈女の子の「そこ」に使うなんてさぁ〉


あのさぁ、ホント止めて?勘違いされるから。


(やっぱり、優しくしないとダメだよね。きっと痛いと思うから)


そっと【棒】を彼女の体へと近づける。


―――――ちょんっ


彼女に傷口、負傷している肩に軽く触れさせた。



――――――――スン



あ!何か「黒い靄」見たいのが、消え―――――



「いったぁぁぁぁぁっ!」


エリーゼさんが絶叫する。


「ナニさらすんじゃぁぁ、クソガキぁぁぁぁ!」


エリーゼさんが右腕で僕の胸倉を掴み、持ち上げる。


「優しくしろって言ったじゃないですかぁ!」


いや、だから!


優しく「ちょん」ってやりましたよっ!



「お姉ちゃん!血が止まってる」


おお、効果はあったんだ。


「【回復法術ヒール】かけるね!」


コレットが急いでエリーゼさんの処置に移る。


「ヒール(回復)」もいいけれどさ、なんで解呪した僕が「ヒール(悪者)」になってるのさ。


傷が塞がったエリーゼさん。


「ハルのジャガイモはまだありますか?」


エリーゼさんが尋ねてくる。


「あるわよ。20個は持ってきてる」


アンジェさんがそう答える。


「では、私に下さい。ハティにも渡します」


え?そんな状態で行くの?


「お姉ちゃん……」


コレットがエリーゼさんの上着を掴む。


「決着をつけなければ、いけません」


コレットの頬を涙が伝う。


瞳が「金色」になっていた。


「私自身の『心』に」


エリーゼさんは僕の「蒸かし芋」をひとつ手に取る。


そして、齧りついた。


「ハルにも、コレットにもサポートをお願いしモグモグ……」


いや、ちゃんとそこは喋ろうか。


「アンジェは、…クッチャ…バックアップをお願いします」


「あのさ、『映像魔術』との並行処理させんの?」


「だいじょ……モグ。コレットの指示をハルに届ける……クッチャ。だけですから」


ちゃんと飲み込んでからお話ししようね。エリーゼさんや。





ギャリイイイイィ



金属が打ち合わされる音が響く。


ディアブロとハティの戦い。


ディアブロの体はもとのウォルターの体より二回りも大きく肥大していた。


一対の腕には鋭い鍵爪。


もう一対の手に「剣」と「大鎌」を手にしている。


異形と化したディアブロに対し、ハティはロングソードを手に「銀」と化した右腕で応じている。



「はっ、『転生』の悪魔たる私を滅せるとでも?」


ディアブロが余裕を見せる。


ハティは無言のまま斬りかかった。


速いだけではない、振り抜いた剣が熱を帯びている。


ディアブロの体をわずかながらに割いた。


「っ!?」


振り抜いた先、剣跡をたどるように熱線が飛び、地を焼く。


ハティも同じ「マクスウェルの悪魔」の血を引く者。


ロナウとの戦いでエリーゼが見せた「灼熱の剣」を使うことができる。


ディアブロの体から「黒い靄」が血のように流れる。


「おのれ」


ディアブロが「大鎌」を振るおうとするが、ハティの方が速い。


すぐに接近してロングソードを叩きつけてきた。


ディアブロはこれを剣で受ける。


受けた剣が焼け、刃こぼれをする。


片手で振るわれたはずの剣が異様に重く、受け手ごと押し返される。


ディアブロを中心にハティは跳び、切り刻んでいく。


血しぶきのように瘴気が吹き出す。


「なめるな!」


ディアブロが剣を振るう。


それをハティが受けた。


「っ!?」


ディアブロが押し込むままに剣が下がるが、弾力的に勢いが殺される。


途端、互いの剣が合った場所を支点にハティの剣が反転して向かってくる。


「【バインド(迎撃)】」


ハティが呟く。


自身に向かう切っ先をディアブロは残る腕で防ぐ。


斬り返して振るう鎌を、ハティが弾き、そのまま鍔に搦めて流す。


ディアブロは自身の勢いで体勢を崩す。


「【パリィ(受け流し)】」


再度ハティが呟く。


(コイツ……)


赤毛の大男「ガレス・レオナート・シュタイナー」の姿が重なる。


振り下ろすハティの剣からディアブロは逃れ、距離をとる。



「どうした?悪魔よ。ずいぶんと必死だな。お前に膝を屈したと愚弄した男の剣だぞ」



挑発にディアブロが前に出ようとする。


「【コンテイン(牽制)】」


鋭い突きが飛ぶ。


ディアブロの出足が止まる。


苛立ちに大鎌を振り下ろそうとするが、さらに突きがその初動を止める。


動こうとすると、ことごとく機先を制する突きが放たれて動けない。


ハティが言う。


「我が師ガレスの剣と私の剣がこうなったわけだ。『武』とは矛を持った人物を現すにあらず、矛を『止める』力こそをいう……これは、『母』の教えであったな」


薄く笑う。


最狂の魔人(変人)と揶揄されるが、その実、戦乱の中で常に前線に立ち、仲間のために汚仕事を請け負ってきた。


銀の右腕の力だけではない、裏打ちされた実力。剣技と研鑽がある。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ