第183話 戦場に響く「いただきます」。ハルのジャガイモを食べた仲間たちが狂戦士(ベルセルク)化して戦場を蹂躙し始める件。
「ウォルフ!」
「お頭!」
壁内に入ったウルフスベインさんとガレットさんは、がっしりと腕を組む。
「ナイスアグレッシブ!チームに勢いがつく走塁じゃねぇか」
ガレットさんがウルフスベインさんを称える。
「お頭の例えはわかり辛くていけねぇなぁ」
ウルフスベインさんが苦笑する。
「そうか?何にせよ、加勢にサンキューってこった」
ガレットさんがカラカラと笑う。
「お前たちが加わったことで『ヴィクトリー』は確約された」
下馬した「黒金の鷹」の皆さんが急に円陣を組む。
ガシィィィィッ!
肩を組む。
あああっ!?
なんでスヴェン混ざってるの?
「そっち側」言っちゃダメだよ!
引き返せなくなるよ、帰ってきなよ!
ウオォォォォォーーーー
男たちがむさ苦しい声を上げる。
ウィッ、ウィッ、ウィッ……
変な掛け声とともに跳ねながら、円陣が回る。
「ウィーーーアーーーー」
ガレットさんの声に全員が人差し指を立てて腕を突き上げる。
『ワンチーーーム!』
叫ぶ。
それから、めいめいが背を叩き合って「しまっていこー」とか言っている。
いや、あなた達のその「ノリ」を「仕舞っていこう」よ……
というかさ、外ではバンバン「魔術の攻撃」を受けているんだよ?
アンジェさんがみんなのために必死に防いでいるんだよ?
ぜったい「拗ねる」よ?
「はい。試合前にちゃんと『補食』とっておきなよ」
ああ、ソニアさん。
完全にマネージャーだ……
木箱を抱えている。
ドカッと地面に置いた。
これが、ウルフスベインさんの言っていた「プレゼント」?
僕たちは箱の蓋をとる。
―――――ああっこれは、もしかして!
無骨ながらも光り輝くその物体。
土という名の無明の揺りかごに育まれし、生命の金塊。
その名は―――――
「ジャガイモさんだあああああああっ!」
僕は両こぶしを天に突き上げた。
「もしかして、これって」
「ああ、ハルの畑で採れたものだ」
フィンとウルフスベインさんが話している。
「おお、なら『HP・MP』全回復じゃないか」
え?もうそんなに経つの?エーレンブルグの畑から?
「あ~、そう言えば、つくってたね」
ウルフスベインさんの言葉に、アルセイスが頷く。
「ハルっ、お袋さんたちに感謝だな」
え?どういうこと?
「お前が旅立った後も、ちゃんと畑をみてくれていたぞ」
……かあぁさぁぁぁん
僕はちょっとウルっときてしまった。
「しっかし、お前に『嫁』がいたとはなぁ。まだガキだと思ってたのに」
……はい?
ウルフスベインさんの言葉にルーダとリャナンが詰め寄る。
「誰?『嫁』?それ、誰?」
「お、おい、なんでそんな怖い顔してるんだよ」
「なんで?ハルにそんな人いないよっ」
「そうだ。誰がそんなウソ吐いてるんだ?」
「いや、だって『ハンナ』ってのが……」
たじろぎながらウルフスベインさんが言った。
『アイツかぁぁぁ』
リャナンとルーダが忌々し気に言う。
「幼馴染だっけ?」
「人の留守をいいことに、家に上がり込んだな」
「すぐに戻ってキッチリとケリをつけなきゃ」
「だな。姉貴っ」
う~ん。どういうことかなぁ。
鼻息を荒くしている二人。
そこへ、エリーゼさんが起きてくる。
「何を騒いでいるのですか」
ボリボリとお腹を掻く。
寝癖なのかくせ毛なのかわからない乱れた髪。
「酷い有様ですねぇ」
魔術の攻撃による騒音と、壁を覆う炎の防壁。
確かに酷いありさまだ。
「ああ、良いモノがありますね。『蒸かし芋』にしてみんなで食べましょう」
箱の中の物を見てのんびりという。
ほんと、この人、状況わかっているの?
◇
ほわわわわわん
湯気を立てる「ジャガイモさん」。
「はーい、バターまだもらってない人~」
ソニアさん、マネージャーだね。
「お嬢様。ハチミツをお持ちしました」
「うむ」
ジャンヌさんの言葉に頷くティアさま。
ドロドロとハチミツを「蒸かし芋」にかける。
ああ……ジャガイモさんが金色の蜜に溺れている。
「良いな、『アフォガード』」
いやさ、確かに「溺れて」おりますけどさ。
「ちょっとぉぉ、ずるーーい」
宙で魔術を使っているアンジェさんが叫ぶ。
「ちゃんと届けるから~、待っていて~」
ハティさんが声をかける。
「塩辛あったわね」
「はい。ご用意しております」
エリーゼさんの言葉に、フリードさんが瓶を差し出す。
「ありがとう」
「お褒めいただき、光栄です」
……なんとも、のどやかな光景。
みんな笑顔で「蒸かし芋」を手にしている。
ああ素晴らしかな、ジャガイモさんの作り出す「笑顔」。
でもさ、でも、だけどさ。
忘れてない?
「共和政府軍」が「侵攻」を続けているの。
本隊が「進軍」して迫ってきているの。
ラスボスの「ウォルター」忘れてない?
「それでは――――」
僕の心の声は届いていない。
エリーゼさんが音頭をとる。
『いただきま~す』
みんなで挨拶をして「蒸かし芋」に齧り付いた。
「おいしいです~」
「やっぱり、ハルの芋は格別」
コレットとリムアンが褒めてくれる。
「おお、ハルっ!腕を上げたなぁ」
「ふふ、我が内に封じている『闇』が、浄化されていく」
ブレイブ叔父さんとアビスさんも褒めてくれる。
いや~、そんなに褒めないでよぉ。
照れるって、この~~。
なんともむず痒い思いをしている時だった。
『―――――うっ!?』
みんなが呻きだす。
『あ、ああっ』
体をくの字に折って、自分の肩を抱くようにする。
『アアアアアアアアア』
みんなで声を上げる。
何?何が起きたの!?
芽かき不十分だった?
『――――み』
なに?「み」?
「み」って?「実」が出る?食中毒っ!?
『み~~な~~ぎ~~るぅ~~~~!!!!』
グバァァァ!
全員の筋肉が肥大し、ビルドアップされる。
ゴゴゴッ、ゴゴゴッ――――
土色のオーラを放っている。
「我が内なる『毒』がぁぁあ!世界を浸蝕するぞぉ」
ティアさまやっぱり!?それ完全に「食中毒」!
「全世界の『蕾』たちも芽吹かんとしている姿がッ……視える!?」
ハティさあああん、ダメだよぉぉう。それ、幻覚か何かだよぉ。
「あら!お肌までツルツル?」
それはようございましたね。エリーゼさん。
「これで、地の果てまで……いえ、『底』まで『追いかけられる』」
こわいこわいこわいっ、やめてよ。エルザさん。
「ヴィクトリャアアアア!」
……ガレットさんはいつも通りか。
妙に堀の深い「濃い顔」になったみんな。
ユラユラと歩き出す。
なんなの、この「軍団」。
武器を手に、壁の外へと向かう。
『今までさんざん、コケにしやがってぇぇぇ』
『ぶっちめしてやんよぉぉぉっ!』
オオオオオオ――――――
『闇の中で育ったジャガイモをなめんなぁぁぁぁ』
雄たけびを上げてみんなが走り出す。
……まるで「狂戦士」だ。
やっぱ、「芽」はちゃんと取らないとおかしくなっちゃうよ。
ジャガイモ仲間の皆さんへ
日々理不尽との戦いに明け暮れる皆さま。
お疲れ様です。
その戦いを潜り抜けている「猛者」。
最高にヴィクトリーですよ!




