第182話 黒鷹&鴉天狗の共闘!そして農家は高温被害を心配する。
「くそう!空に逃げられたら手が出せないじゃないか」
フィンレーが叫ぶ。
「任せろ!」
ガレットさんが叫ぶ。
あ……「戦場の覇者」!いや、「空を制する者」。
「黒金の鷹」ガレット・グランハートさん!
即座に「足場」をつくり、跳んでいく。
空にあって、「ハシビロコウ」からの蹴りはない。
嘴で捉えようとしても――――
「ぬるいぜぇ!」
なんと、大剣でぶん殴ってしまった。
とんでもない「剛力」。
って、これに対抗していた「リュック将軍」もとんでもないな。
「僕もいるよ!」
ハティさ~~ん。なんでいるのかなぁ?
せっかくガレットさんが目立ってるんだよ?
「天狗の秘術・鴉天狗!」
ガレットさん同様に空を「駆けて」いる。
『叩き落とす』
ふたりの声が重なる。
ハティさんの銀の腕に紫電が走る。
「【神王の光剣】!」
右腕から放たれる「光」。
剣のように象られたソレが飛び、途中で幾条にも別れながら「ハシビロコウ」を襲う。
飛びながら逃れようとするが、執拗に追い、「光剣」は貫く。
「トドメは、俺が決める!」
速度が落ちた「ハシビロコウ」。
あとは堕ちるばかり。
その上空にガレットさんがいた。
「戦技【黒金の鷹】!」
急降下する。
大剣の一閃。
剣がハシビロコウの巨体にめり込み、勢いのまま地面へと突っ込んで行く。
ドゴゴオオオオオオオン!
とんでもない轟音。
地面に落ちたハシビロコウ。
「よぉぉぉしゃあああ!ヴィクトリーーーーー!」
伸びている巨体の上で、ガレットさんが勝利の雄たけびを上げた。
◇
「あ、北側から軍が!」
その言葉に皆が険しい顔をする。
共和政府の兵だと思ったのだ。
だが、砲撃音の合間に聞こえる雄たけびは奇怪なものだった。
「ヒーー、ハァーーっ!」
「俺たちならぁ」
『できるっ、できるっ、デキルゥゥゥ!』
陽気ともとれる声。
「あの『暑苦しさ』……」
ティアは眉間を抑えた。
「ウィーーーアーーーー」
「ヴィクトリャアアアア」
間違いない。
最強の傭兵団「黒金の鷹」だ。
「お頭ぁぁぁ!」
「中に入れてくれよぉぉぉ!」
城塞都市に向かってひた走る。
◇
「ハシビロコウ」は倒された。
だが、「五将」たちはそちらに釘づけだ。
城塞の守りは手薄。
たとえ、アンジェが守っていても。
『―――開門』
『七つの封印は解かれ、偽りの天は剥がれ落ちる』
『沈黙の神よ。
記したまえ、忘却の理を』
『万物を等しく無に回帰させよ』
響き渡る詠唱。
そして宙に浮かぶ「漆黒」の球体。
詠唱と共にその大きさを増す。
黒い球体の中で星霜が瞬くかのように光が明滅する。
ゴゴゴゴッ―――――
地鳴りがする。
戦略級の極大魔術。
一都市を容易に消し飛ばすほどの威力をもつ「ソレ」。
「本隊の到着を待つまでもない!」
「これで消し飛ばす」
「誰も穿つことのできなかった『深紅の盾』を我々が破るのだ――――」
―――『【終焉の黙示録】!!!』
魔術兵たちが「術の名」を叫ぶ。
黒い球体から、極光が放たれた。
光の奔流が都市を飲み込もうとした。
だが、それを阻む者がいた。
「やあああああああ」
少年が割って入る。
―――――――――――スン
まばゆい光が一瞬で掻き消える。
それどころか、先ほどまでが嘘のようにのどやかな景色が広がる。
「あ……?」
「え……?」
魔術兵たちは何が起きたのかわからなかった。
あれだけ魔力を込めて放った「極大魔術」が。
音もなく「消失」した。
『ええええええええええええっ!?』
◇
やっば、なにアレ。
メッチャ明るくなって、熱かったんだけれど。
真夏の畑並にキツイよ。
あんなことされちゃ作物が「高温障害」になりそう。
ジャガイモさん、二次成長しちゃうって。
それに、なんかあの人たち「終焉の黙示録」とか叫んでなかった?
なになに、みんな「ティアさま」のお仲間?
痛々しいよ。
って、なんで頭抱えて泣き叫んでいるの?
情緒不安定な人たち?
それとも「青少年の主張」?そういう年ごろには見えないけれど。
「よくやったっ、ハル!」
騎兵たちが向かってくる。
「あ、ウルフスベインさん!」
「さっすが、『不可抗力の破壊者』だ!」
泣き叫んでいる「痛々しい人たち」を跳ね飛ばしながら駆けてくる。
「お前も、早く来い。『プレゼント』があるぞ!」
ウルフスベインさんたちは、「門」から街の中に入って行った。
「ハルっ、戻りますよ!」
エルザさんが声をかける。
僕は無残に伸びている「痛々しい人たち」を見る。
(どうか、これを機に)
(風にそよぐ「ジャガイモのお花さん」みたいな穏やかな気持ちを持つようになってね)
そっと祈りを捧げる。
重い音を立ててエルザさんが「門」を閉じた。




