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第180話 強襲!共和政府の「最終兵器」




「魔術」の砲弾が降り注いでいる。


相手は「マナポーション」の備蓄があるのだろう。


これだけ「魔術」を使い続けられるのだから。


その「魔術」をたった一人の少女が防いでいる。


「深紅の盾」アンジェ・フラン・スカーレット。


元・王国の「宮廷魔術師」。


彼女の熾した「炎の壁」が都市の外壁に降り注ぐ「魔術」を焼いて消し炭にしている。



「3年近く魔力調整をやっていたから、これぐらいなら1年でもできるけどさ」


アンジェはそう呟く。


共和政府の首都に囚われていた。


首都の住民の「魔力」を奪わせないために、彼女はひとりで補い続けていた。


その孤独な戦いに比べれば、ということなのだろう。


「さすがに『物理』で押し切られたりすると厳しいかもね」



そうぼやいたときだった。


進軍を告げる太鼓が打ち鳴らされる。


「やっば、私『フラグ』たてちゃったかな?」


なおも余裕の態で言う。


その後ろでは、智将・ティアが指示を出していた。


「とにかく、ハティは範囲攻撃をバンバン使って数を減らせ」


「そのために『単独行動』だ」


「『白銀の虎』で撃ち漏らしたのを叩く」


「ガレットと『魔狼騎士団フェンリルナイト』は遊撃隊だ」


「現在は南東部からのみの進軍だが、伏兵がいないとも言い切れない」


「完全に囲まれてからでは遅い。打って出るぞ」


手短にティアが作戦を述べる。


「あの~、僕たちは?」


ハルが手を挙げる。


「ハルはエルザと一緒に外壁を攻撃している魔術兵を排除してもらう」


「ひぇええ!」とハルは悲鳴を上げた。


「私も出ます」


コレットが言った。


「いや、コレットは残ってくれ」


「どうしてですか!?」


「お前の『眼』による索敵が敵の奇襲を防ぐ」


「何よりも、本陣に残って負傷兵の手当てをお願いしたい」


それからティアが言った。


「コリガン、ルーダ、オーレ!お前たちも残れ」


「ええ?」


「本陣の守りは誰がやるんだ」


「それは、アンジェさんが…」


「潜入されたら?コレットの護衛は?街の人たちを誰がまとめる?」


「……」


「お前たちも頼りにしている」


そして、ジャンヌとクロエを見る。


「コイツラの面倒を見てくれ」


ふたりは頷いた。


「コレットを中心に、街のプリーストたちをかき集めろ。教会を簡易的な救護所にする。住民たちは『領主の屋敷』に避難させるんだ」





「ティア!」


アンジェが叫ぶ。


「どうした?」


「なんか、でっかいの来る」


「はぁ?」


ズバババババババ!



何かを連射するような音。


「ルーダの連射ボウガン!?」


「共和政府でも装備している奴が?」


だが、炎の壁によって阻まれているのか、矢は降ってこない。


「ちがう!」


誰かが叫んだ。


ゴォォォウ!


風を切る音。


巨大な影が、太陽の光を一瞬だが遮り、空を縦断していった。


皆、外壁を登る。



「な――――――」



その威容を見て絶句した。


すらりと伸びた美脚。


美しく艶やかな外形。


その瞳は静謐を湛えながらも、奥底には鋭利な光を宿していた。



なによりも、特徴的な広く垂れ下がったくちばし。


そう、その名は―――――



『ハシビロコウ!?』



外壁とほぼ同じ高さの「超大型ハシビロコウ」。


それが、外壁からわずかに離れたところに立っている。



じーーーーっとこちらを見ている。


「動かないな」


「動かないね」


その巨体は動かない。


まるで大木のよう。


ハシビロコウの瞳がハルを捉える。


「っ!?」


全員が攻撃を警戒し、身構える。


ペコリ


ハシビロコウがお辞儀をした。


『あ、どうも』


ペコリ


全員がお辞儀を返した。


その瞬間だった。


シュドオオオオオオオオオン


アンジェの展開していた「炎の壁」ごと城壁が吹っ飛んだ。


「高速」の一撃。


「アイツ!蹴りやがったぁ」


ティアが叫ぶ。


高速移動ができる彼女は動体視力もずば抜けていた。


「ああっ!瓦礫がぁ!?」


ハシビロコウの蹴りで吹っ飛んだ外壁の破片。


それが、街に降り注ぐ。


「おおおおおおっ!」


雄たけびと共に宙を跳ぶ男。


黒鷹・ガレットであった。


宙を舞う瓦礫を大剣で粉砕する。


「ああ、もう!手間増やすんじゃないわよっ」


アンジェが叫ぶ。


「【熱素のカロリック・ボア】!」


アンジェが人差し指を瓦礫に向ける。


「ばきゅーーーーん☆」


彼女が言うと同時に、熱線が数条走る。


圧縮された「熱」。


それが無数の瓦礫を過たず捉え、塵と化した。


「きゃああああ!アンジェさんステキーーー!」


ハティが狂喜乱舞する。


「僕の蕾天使!サイッコウ!」


小躍りするその姿を周りは冷めた目で見ていた。


「オマエ、ワザとらしい」


褒められたアンジェすらも塩対応。



「……なんか、僕の扱い悪くない?」


ハティが肩をおとして項垂れる。


「それ!俺の決まり文句だぜ。取るなよ」


ガレットが宙を「蹴り」ながら戻ってくる。





「さすがに、あの巨体は厄介ね」


アンジェさんが言う。


「アタシでも防げないわ」


えええ?「守護者」でも防げないって?

そんなところまで「母娘」で似ないでよっ。


〈ママ~ン、大丈夫~?〉


【土寄せ棒】の「アンジェ」さんが心配そうに尋ねる。


「ああ、大丈夫よ。マイ・スイートハート(生霊)」


本家アンジェさんがウィンクする。


「アレは、『眷属』か?」


「どちらかというと、『実験体』の完成体だな」



シュドオオオオン


轟音が響く。


「またぁぁっ!」


壁が蹴られ、再構築された炎の壁の防壁が蹴破られる。


瓦礫まで降る。


アンジェが「魔術」で全てを焼き払い、事なきを得る。



「オマエら!さっさとあの鳥っ焼き鳥にしてきなっ!」


アンジェが叫ぶ。


『えええ~?』


不満そうな声。


「さっさと支度しなっ!」


アンジェが叫ぶ。


「はぁ~~い」


皆で空返事をする。



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