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第177話 毛根を賭けた極限の死闘!「最強の狙撃手」VS「最狂忍者ハッティくん」。3,400メートルの静かな戦いの勝敗は「風と共に」……




ガレット様が戻ってきた。


なんか、大きな「ヒゲのおじさん」を担いで。


「ガレット様、ご無事でしたか」


「おう、コレット。出迎えありがとうな」


私の出迎えに爽やかに笑うガレット様。


相変わらずカッコいい。


私、コレット・オルレアの憧れ。

彼の活躍や冒険譚を綴った本は、孤児院での私の支えだった。


粗暴そうでいて、とても優しい。


そして仲間想い。


不遇な生まれからのし上がった英雄。


まさに「民衆の憧れ」。


そして、今は「ハル」のお師匠様。


「その、おじさんは?」


私はガレット様が担いでいるおじさんについて尋ねる。


「ああ、『リュック・シュナウザー』だ」


ガレットさんが地面に下ろす。


そこへ、エルザさんが歩み寄った。


「じいや……」


呟くと手をかざす。


「生命を育みし大地よ、我が呼び声に答えよ。この者に恵みを分かちたまえ。【地の祝福(ベネディクティオ・フミ―)】」


リュックが横たわる地面から温かな光が放たれる。


砂粒のような光が舞い、覆うように渦巻く。


先ほどまで息も絶え絶えだったリュックの傷が塞がった。


「けが人を、こちらへ」


エリーゼお姉ちゃんが声をかける。


ブレイブさんが進み出る。


「お願いします」


エルザさんが頭を下げた。


ケンカばかりするふたりだけれど、お姉ちゃんもエルザさんもこういう時ってすごくしっかりしている。


「ところで、ハティ戻ってないか?」


ガレット様が言う。


「え?」


みんながガレット様を見る。


「いや、リュックの部隊がこっちに来たんで任せてたんだ」


私は嫌な予感がした。


「ランドルフっ!」


エルザさんが駆けだした。


「私もっ!」


私も彼女の後を追った。





ハティは苦戦していた。


リュックの部隊は50騎ほど。


そして、そこそこ強くて、何よりも「固い」。


魔術を使っても一撃で倒せない。


出力を上げると、今度は街の外壁を壊してしまう。


そして、とにかくハティを無視して街に入ろうとする。


(ああ、目を離した隙に!)


またも騎馬を駆って進もうとする。


さらに―――――――


ターーーーーーン


矢が突き立つ。


超遠距離からの狙撃。


言わずと知れた「弓将ランドルフ・エッガー」だ。


狙撃手の位置はつかめない。


重力魔術を駆使しているため、射出位置から曲がって飛んでくるときがある。


空気抵抗や重力、矢の強度などを「重力によるレール」を使って補っているのだ。


そのため、矢を放つ時だけ、魔力が漏れ出る。


だから、「だいたいココかな~?」というのは掴める。


とはいえ、「無視して進む騎兵たち」「邪魔をしまくる精密射撃」。


この二つで上手くいかない。


(イライラするなぁ、こんなんじゃ「禿」ちゃうよ!)



内心毒づくハティ。





「ひぇ~くしょいッ」


ランドルフは思わずくしゃみをした。


とはいえ、そこは「プロ」。


片目は必ず開けていた。


(クソ、さすがに粘るな)


鼻水ではない、ハティのことだ。


(我が師直伝の【零式千里眼タイプ・ゼロ・サイト】これでも捉えきれないとは)


過去、ハティが暗殺した、クラフトという将軍。


彼はランドルフの弓の師匠だった。


故に、「師の仇」であるハティを執拗に狙う。


ランドルフが授かった【零式千里眼タイプ・ゼロ・サイト】。


それは「視力強化」の魔術だ。


対象をすぐ目の前(ゼロ距離)にいるかのように精密に捉える。


対象の間にあるあらゆる物理的な抵抗についても自動計算される。


相手の動きすらコマ送りのように見えるのだが、ハティの場合はとてつもなくすばしっこいのでブレてしまう。


さらに、この「術」の副反応は彼を悩ませた。


あまりに多くの「情報量」を処理するため、「ストレス」がかかる。


そしてその代償がダイレクトに「毛根」に影響した。


(おのれっ!)


ランドルフが矢を放つ。


(1……いや、3本か……)


矢の本数ではない。


彼の前髪がはらりと落ちた。


(俺が「禿」上がるのが先かっ、奴を仕留めるのが先かっ)


「標的確認。3,400メートル……『視えている』ぞ。アガートラーム」



まさに身を削る熾烈な戦いが繰り広げられているのであった。





コレットとエルザは街の外壁に駆けあがった。


目にしたのは壁の外で戦うハティの姿。


トラウマの「背後」からの狙撃。


彼に目もくれずに進撃しようとする騎兵たち。


厄介な状況だった。


(私のせい……)


ランドルフにハティの弱点を教えてしまったのはコレットだった。


「旦那さまっ!」


エルザが叫ぶ。


そのまま乱入しようと手すりに足をかけた。


「来るなっ!」


ハティの声。


「でも……」


「コレットを守れ」


異を唱えようとしたエルザを叱り飛ばす。


「僕の『背中を預けた』んだぞ」


ずきゅーーーーーん☆


エルザは卒倒しそうになった。


「そうでしたぁぁぁん。もうしわけございますうぇええん」


涎を垂らしてハフハフしながら言う。


「こ、後顧の憂いなくぅ、お楽しみくださいぃ」


銀髪美女が台無しである。


そして、「別に楽しんじゃいない」とコレットは思った。


(とにかく、私はこの危ないお姉さんよりも、ハティお兄ちゃんのことを)


遠くへと目を凝らす。


(―――【高貴なる洞察ノーブルインサイト】!)


狙撃手の発する魔力を探知するためだ。


狙撃手の位置さえわかれば、「一撃」でハティが片をつけるだろう。



ターーーーーン!


矢が突き立つ音。


超遠距離からの狙撃。


だが、見つけた!



「お兄ちゃん!狙撃手捕捉!4時の方向、距離3,400メートル」


コレットが叫ぶ。


「え?ええ?」


ハティが一瞬悩む。


指で時計をイメージして確認する。


(ちょっと、足りないんですけどぉ、この魔人さんっ!)


コレットはイライラしながら叫んだ。


「右後ろの『牛さんみたいな岩のところ』!」


その言葉にハティが「ぽん」と手を打った。


「ああ、旦那さまったらカワイイ~」


コレットの隣でエルザは身悶えていた。




(こんなことなら、ちゃんとティアから「数学」教えてもらうんだった)


ハティは今さらながら後悔する。


でも、それは「算数」の内容ではあるが。


(とはいえ、居場所さえわかれば、「追跡」できる!)


銀の右腕に紫電が走る。


「悪いけれど、片をつけさせてもらうぞ」


矢が飛んでくる。


だが、軌道を予測していたハティは見ることなくかわす。


「父上直伝【電光石火ライトニングストライク】」


ハティの姿が霞む。


雷が地を走った。


轟音が響き渡り、放電が大地を削った。


ハティが駆けて50騎を一瞬で斬り伏せたのだ。


土煙がもうもうと上がる。



そこに――――――ハティの姿はなかった。



(ニンニン……でござるよ)


なんと、シートを被って地面に伏せている。


土色なのである程度同化はしている。


けれど、微妙に色合いが違う上に、体の形に隆起しているという「雑さ」。


上から見ている「コレット」ですら丸わかりだった。


(え?ええ?……何やってるの?)


コレットはドン引きだった。


(ふふふ、これぞ忍法【土遁の術】にござ~る)





一方、ランドルフはハティを見失っていた。


派手な光と土煙が目くらましとなった。


これでは、【零式千里眼タイプ・ゼロ・サイト】で照準を合わせられない。


(対象を「見失った(ロスト)」したか)



静寂が訪れる。


どれだけ時間が経ったか。



潜む「獲物」。


それを辛抱強く待つ「猟師」。



逃走の機会を与えるわけにはいかない。


(ならば……)


彼は騎士であると共に非情な「猟師ハンター」でもある。


獲物が隠れたならば、おびき出せばいい。


照準を壁上に定めた。


(悪いな。コレット)


コレットに向けて「矢」を放つ。


隣には「鉄血のエルザ」がいる。当たらなくていい。


「コレットが狙われた」という事実に「ロリ愛好家」のハティが激高するだろう。


また姿を現すことになる。


狙い通り、エルザ矢を弾いてコレットを守った。


(さあ、出てこい!アガートラーム!)


風が吹いた。


いたずらな風は、ランドルフの前髪をかき分け、ぱっくりとその割れ目をさらけ出した。


今の「狙撃」で髪が5、6本持っていかれた……


(風と共に去りゆく……)


哀愁がよぎり、一瞬……ほんの一瞬だけ風に流される「髪」に目が行ってしまった。


(っ!しまった!?)


ハティは出てこない。



―――――そう、この「一瞬」こそが勝敗を決めたのだった。



彼は、失念していたのだ。


本気で「キレ」たハティの持つ「非情さ」を……



――――ドス



鈍い音と衝撃。


薄れゆく意識。


ランドルフは背後に立つ「ハティ・アガートラーム・マクスウェル」の姿を見た。



「オマエ、僕の『ロリ』になにしやがる」



ジャガイモ仲間の皆さんへ



毎日頑張るあなたは、最高に「ヴィクトリー」ですよ。

たとえ、なにもしていなくたって、いるだけで「ヴィクトリー」なのです。





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