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第174話 進撃の不沈艦お姉さんと配管清掃のジャガーイモ農家。哀れな怪人たちよ、僕は君たちとの戦いを忘れない。




どがーーん


破壊音が響く。


「う…ああ……」


操られた兵士たちがぞろぞろと向かってくる。


ばちこーーーん


引っ叩く音と共に彼らが弾き飛ばされる。


「はい、そこからの!」


エルザさんの指示。


――――スン


僕は促されるままに倒れた兵士たちを小突く。


みんなが「浄化」される。



またも兵士たちがぞろぞろと群がってくる。


いったい、何人いるんだよ!


ガレットさんたちは大丈夫なのか?


心配ではある。


けれど、僕が街中を「浄化」さえすれば片がつくっていうのならやるしかない。


「……」


でも、これはちょっとどうにかならないかな?


「……」


コレットさ~ん?


一生懸命なのはわかるのですけれど、一応、人目も気にした方がいいよ?



コレットは物凄いしかめっ面で目を見開いている。


そして、地面を睨み付けている。


彼女の目は「黄金色」に輝いていた。


何らかの【能力スキル】で探っているのはわかるんだけれど。


これだけなら、まだ、良い方だ。


問題は……



――――四つん這いでぺたぺた這い回る「幼女」。


暗い道で遭遇したら悲鳴を上げそう。


「コレット?」


ギヌォロオォン


めちゃくちゃ睨まれた。


「なに?」


「いえ、なんでも……がんばってね」


「ありがとう」


コレットはまた地面を睨み付けながら這い回っている。


これさ、探索のための「徘徊」ですよね?


「ハイハイ」する「徘徊」って……必要あるのかな。



「ほら、またメンズが来ましたよ」


エルザさんの声。


僕はコレットからそちらへ視線を移す。



―――――なに、アレ?


タコみたいな……人。


コイみたいな……人。


エビみたいな……人。


ウニみたいな……人。


ホタテみたいな……人。


なんで、「みたいな」と言っているのか。


それは、頭から胴体まではその生物なんだけれど、人間の腕と足が生えているんだよ。


タコ、なんか、2対が腕で残りの2対が足って、バランス悪くないか?


ホタテなんか酷い。


口が開いてそこから腕と足が出ているもんだから、必然的に蝶番みたいに連結している部分が上にくる。


どうやって視認しているんだ?


ウニは……トゲトゲの殻からただ突き出ているだけ。


ビジュアルとしてはちょっと安心。


このギャグみたいな怪人たち。


「哀れな……『眷属』の実験体ですね」


エルザさんが寂しそうに言う。


え?そうなの?


ってことは「首都」の時の「能面さん」と同じ?



「ギョギョギョ」


あ……なんか「コイ」が言っている。


やっぱり何言ってるのかわからない。


「にょ、にょにょにょ……」


あの~エルザさん、何言ってるの?


「ギョギョギョギョギョッ!」


コイが怒りだした。


「にょ~、にょにょぉっ!」


いや、だから、何言ってるのかわからないって。


微妙に通じているのもワケも分からないし。


「ギョギョ~~~~」


あ、コイがなんか叫んでエルザさんを指さした。


そして、他の怪人たちが突っ込んでくる。


あれがリーダーだったのかぁ。


しかし、他の怪人は喋れないんだね。


って、あああっ!


何やってるんだよっ!


目のない「ホタテ」と「ウニ」が変な方向に走って行って、壁にぶつかっている。


ウニなんか、ホタテ以外の怪人が避けるもんだから……



ウニが向きを変えた。

それはいいけれど、仲間の怪人の方へ突っ込んで行く。


あっ!皆が走って逃げた。


ちょっとちょっと、酷いよっ!


あのトゲで刺されたくないんだろうけれど、仲間だろ?


エビはさ、なんでバックステップするの?


普通の足なんだから、普通に走れよ!


うっわぁ、走りづらそうにしていた「タコ」が巻き込まれた!?


「ちゅっぅぅぅ!」


いや、なんつう悲鳴だよっ!


ちょっと可愛いし。


あ~、涙目だ。


というかさ、ここまでどうやってきたんだよ、お前らさっ!


ホタテぇぇぇ、なんでずっと壁に向かって走り続けてるの?


前に進んでないの分からないのかよ?


だいたい、何でメンバーに入れたんだよっ「ホタテ」と「ウニ」。



僕たちにたどり着く前にゴタゴタしている怪人たち。


〈アタシ、なんかアイツら哀れに思えてきた〉

【土寄せ棒】の「アンジェ」さんが同情の声を漏らす。


うん。僕も、同じ気持ち。


「放っておきましょう」


エルザさんが冷静に言った。


「うん」


僕たちは「地脈」探索を再開した。





「――――ここです」


コレットが言う。


メチャクチャ顔が怖い。


ずっと目をひん剥いて探していたからなんだろうけれどさ。


もう、顔が戻らないのかな?


「ハル」


「はぃぃぃいっ」


「よろぉしくぅ」


何か言い方も怖いよぉ。



――――ゴクリ



僕は唾を飲んだ。


はたしてうまくいくのか。


これで、みんなを救えるのか。


「はぁやぁくぅやってぇぇ」


コレットの声。


だからっ、顔怖いって!


そんな目をカッぴらいてさ、眉間にしわ寄せて眉毛「ハ」の字で言わないでよっ。



「ジャガイモ少年っ、さっさと『除菌剤』流し込みなさい」


いや、「浄化」でしょ?


本気で「配管掃除」みたいに言わないでよ。


というか、チワワみたいな怪人が齧りついているんですけれど?


小魚みたいな怪人もっ!?


頑張って齧りついていても、ぜんっぜん歯が立たないみたい。


エルザさんも痛くも痒くもないみたいで完全に無視。


うん、「不沈艦のエルザ」と呼ぼう。


「さぁ、早くなさい!40秒以内に」


微妙に時間くれるね。


とはいえ、その言葉で気が楽になった。


今までやっていたみたいに。


「ナラタケ病」とか「黒あざ病」の駆除みたいに。



僕は、【土寄せ棒】の「アンジェ」さんを構えた。


目指すは「一点」。


コレットが目印につけた「デ ベ ソ」文字。



……これ、どの「文字」叩けばいいの?



三文字って「ない」わぁ~。


三択のクイズかよ~、しかも微妙に文字の間空けてるしさぁ。



「はい、あと10秒です」


エルザさん、急かさないで!


「5・4・3……」


もう、ヤケクソの焼きジャガーだっ!


こういう場合はっ「真ん中」!


〈ロッシェ!〉


「アンジェ」さんの声。


〈決めるわよ!〉



―――――【星霜の洗滌エトス・カタルシス】!



僕は【棒ジェ】さんを思いっきり地面に振り下ろした。



スコーーーーン


地を叩く乾いた音が響く。


それだけ。


何も起きない。


今までがそうだったように。


ただの無音。



(え?もしかして違った?「デ」の方?それとも「ソ」?)


何とも言えない「やらかした」感じに僕は汗が噴き出た。


「ごめん……もういっか――――」


言いかけた時だった。



―――――――スゥゥゥゥゥン



何かが勢いよく広がる。


いや、違う。


今まで淀んでいたものが、一気に流れ、そして「詰り」のようなものが消える感覚。


僕が叩いた場所を中心に、外側へとそれは広がっていく。


先ほどまで聞こえていた「悲鳴」が聞こえなくなった。


(やった……成功だった)



僕は胸をなでおろす。


エルザさんに齧りついていた「小魚」と「チワワ」も形を失い、消えていった。


ああ、「タコ」「エビ」「コイ」「ホタテ」……そして「ウニ」。


一体何がしたかったのかイマイチだったけれど。


これで彼らも呪縛からは解放されただろう……


(ああ、「エビ」さん。ケトゥスの地下施設で拾った命。浄化されたのね)


コレットは手を組んで祈りを捧げていた。


(「今度は逃げない」って心のビジョンで言っていたけれど、即行で逃げた変わり身の早さ。それもあなたの良さだったと思う)


僕はコレットの隣に立つ。

一緒に祈りを捧げた。


(ああ、君たちのことは忘れないよ。たぶんだけれど)


キラーーーン☆


空に彼らの笑顔(?)が見えた気がした。


「コレット、よく見つけてくれた……ね?」


コレット、なんでまだ「バッキバキ」の顔!?


「ちょっと、コレットさ~んお顔が怖いですよぉ」


「何が?私、普通にしているけれど」


いやいやいや、戻ってない。普通じゃない。


こわいって「般若顔」!


「私?そんなに……オカシイカナ」


近づかないで~、下から覗き込まないで~


なんかそういう「妖怪」みたいだよぅぅぅ。


コレットの形相に怯えていた時だった。


『ひぃぃぃっやあぁぁぁぁぁぁっ』



ロナウの屋敷からつんざくような悲鳴が響いてきた。




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