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第173話 ジャガー農家、「カビちまう」伝染病からみんなを守れ!ほうら、頼もしい不沈艦のお姉さんが……



「ハルっ!あそこ!あそこに『デベソ』が埋まってる」


コレットの声。


いいかげんさ、魔力だまりというか「結束点」を「デベソ」って言うのやめない?


初めて見る人はさ、真面目に「出っ張ったおへそ」が埋まってると思っちゃうよ。


〈ロッシェ!ここの真下が「デベソ」だからね!〉

【土寄せ棒】の「アンジェ」さんまで言いはじめた。


キノコ型の悪魔の力だから「根状菌糸束」が張り巡らされている。


(「ナラタケ病」とか「黒あざ病」には苦労させられたよ……)


ジャガイモ栽培の時の苦労を思い出す。


確かに「黒い菌核」とか、「デベソ」感はあるかもしれないけれど。


とはいえ、【棒ジェ】さんで突くと、地面からその「根状菌糸束」やら「菌核」が消えてくれる。


今、僕がやっているのはその「作業」だ。


――――スン


コレットの示した場所を突くと、黒い靄のようなものが一瞬だけ立ち上り、消えていく。


(ほんと、どこまで広がっているんだ?菌類恐るべし)


「あぶない!」


コレットの声。


うねうねと黒い菌糸を纏わせた兵士が襲い掛かってくる。


「うわぁぁぁぁぁぁ」


ミチミチミチ


嫌な音と悲鳴を上げてその兵士が僕に向かう。


僕はその兵士を【棒ジェ】さんで引っ叩き、転ばせた。


―――――スン


途端に菌糸が消える。


「え?あ?助かった……のか?」


その様子に、僕は閃いた。


ここは、「格好つけてもいい場面」なんじゃないのかっ!?


「フッ……アンタ、大丈夫かい?」


「ああ」


兵士が呆けて見ている。


きっと、ショックが大きかったんだろうな。


「せっかく助かったんだ。早くここから逃げなよ」


「そうだな……ありがとう」


「いいってことよ。じゃないとまた――――」


僕はそう言って親指で鼻先を拭うしぐさをする。


「カビちまうぜ」


よっしゃーー決まったぁ!


ここまでさんざんだったけれど、これで「チャラ」でしょ?


ほら、あまりのカッコよさにコレットも僕を見ているよ。


口を開けているのは陶然としているからかな?


「ハルお兄ちゃん、カッコいい」って。


ああ、兵士さん、足早に去っていった。


目も合わさないって、眩しくて直視できないってこと?


もう、照れるなぁ。



―――――ドォォン!ドォォン!


とんでもない破壊音と地響きがする。


それは次第に近づいてきた。



……すこ……い。どす…こーい!



なんだかどこかで聞いたような声。




「どすこーーーーーい!」


一際大きな掛け声が聞こえたかと思うと、すぐ近くの家屋が弾け飛んだ。


バラバラと降り注ぐ破片。


そして煙る粉塵を割って鎧を身にまとった人物が現れる。


白銀のフルプレートメイル。


それでいて、女性らしいボディラインが分かるような美しいデザイン。


大盾を手にしている。


「ようやく、通りに出ましたね」


アーメットの中から女性の声がする。


「あら?あらあらあら、『義妹』ちゃんがいるじゃないですか」


そう言ってガシャガシャ音を立ててコレットへと歩み寄っていく。


「ひぃぃっ!」


コレットが引きつった顔で悲鳴を上げた。


その声で相手が分かった。


「エルザ」さんだ。


「義妹ちゃん、ここは危険ですから、早く街から出るのですよ」


そう優しく語り掛ける。


根はものすごーーーく優しい人なのだろうけど。


でも、根っからの「ストーカー」ということも知っている。


「そこのジャガイモ」


エルザさんがこちらを向く。


「義妹ちゃんを連れて、この街から避難しなさ―――っ!?」


僕に言いかけて黙る。


しかも、じろじろと腰のあたりを見て。


「あら、アナタ、『良いモノ』を持っているではないですか」


え?ああ、自慢のコレですか。


「とっても素敵な【棒】ですね。固そうで」


そうですよ、そうですよ。コイツは自慢の一品ですから。


「なるほど、なるほど。こんなところに『ふたり』でいるということは、そういうことでしたか」


何か納得しているね。でも、「どういうこと」なのでしょうか?


「その【暴れん棒】でブイブイいわせていたのですね」


……いやさ、ここまで来てなんだけど、その表現、どうかと思うよ。


確かにさ、さっきまでこの【土寄せ棒】を使ってたけどさ。


「ブイブイ」って意味わかんないよ。何語なの?


「その【棒】で激しく突―――――」


「やめっやめ~い!それ以上は怒られるからっ」


僕は慌てて止めた。


この人、見た目だけじゃなくて言動も「エリーゼさん」に似ているよっ!


「何を勘違いしているのですか?」


エルザさんが呆れたように言う。


「その【棒】、【星霜の洗滌エトス・カタルシス】で浄化をしていたのでしょう?」


わかっていてやってるな、この人。


「棒術使って暴れて、敵を突き倒したりしながら」


こぉの~~~。


間違っちゃいないけれどさ。


ほんと、紛らわしい言い方をエルザさんはするよね。


って、そうしている間に操られている兵士が群がってきた。


「……嫌ですね」


ボソッと呟く。


「そんなに大勢で言い寄っても、私には心に決めた人がいるのです」


「うあああああっ!」


悲鳴を上げながら操られた兵士がエルザさんに組みつく。


「いきなり抱き着くなんて……犯罪者ですね」


いや、違う。行動自体は犯罪だけど、違うと思う。


うねうねと菌糸がエルザさんにも纏わりつこうとする。


「ちょっと……それは18禁の内容ですよ」


ちがうちがうちがう!「不浄の悪魔」があなたに憑りつこうとしているのっ!


「ふぅぅん!」


エルザさんがいきなり四股を踏んだ。


それだけで組み付いた兵士は弾き飛ばされ、黒い菌糸すらも四散した。


〈コイツ、色々ヤバいわ〉

【土寄せ棒】の「アンジェ」さんが引き気味で言う。


ズズズッ、ズズッズ―――――


腰を落とした姿勢からスリ足で両足を寄せる。


まるで、雲が立ち上るかのよう。


まるで、竜が空に昇るかのような雄大な動き。


「気が変わりました」


エルザさんが言う。


「せっかくの『モテ期』」


いや、違うって。


「私にゾッコンなメンズを引き連れて、これ見よがしに凸してやろうかと思ったのですが」


何言ってるの?この人……


「ジャガイモ少年」


アーメットの中からこちらを見る。


「まずは、地脈の浄化をしなさい。結節点ばかり浄化しても埒があきません」


「地脈に『浄化の波動』を流し込んで張りついてる『黒カビ』を消毒するのです」


なんかさ、配水管の掃除みたいだね。


あっ!何人かがエルザさんに飛びかか――――


ばちこーーーーん


張り手一発でその人たちは吹っ飛ばされた。


「話の途中です。ちゃんと待てないなんて、落ち着きのない子ですね」


そんな、教室の問題児みたいな言いかたしなくても……


「『義妹』ちゃん。ちょっと頑張って『地脈』を探してみなさい」


あ、なんかコレットには優しい言い方。


「ジャガイモ少年は、『義妹』ちゃんの見つけた『地脈』に【星霜の洗滌エトス・カタルシス】をぶち込むのです」


「一気に汚れを落とすのなんて『爽快』ですよ」


クックッ……


忍び笑いを漏らす。


「ちゃんと、護衛もしてあげますし、道も切り拓いてあげますから」


またも、操られた兵士たちがエルザさんに飛びかかった。



数人の男たちが彼女に掴みかかる。


けれど、それを身震いしただけで弾き飛ばした。


まるで、犬か何かが体についた汚れを振り払うように。


さっきから思ってたんだけれど、この人、「無敵」過ぎない?


重さにも押し潰されない。


掴みかかられても、憑りつかれそうになっても身震いひとつで払ってしまう。


極めつき――――


剣を手にした兵士たちがエルザさんに斬りかかる。


ゴィィィィン


フルプレーメイルに阻まれて剣が弾かれる。


なおも剣を叩きつける兵士たち。


エルザさんは微動だにしない。


「うるさいですね」


ぺしぺしぺしぺし


虫か何かを払うように手で払ってしまう。


兵士たちはそれだけで吹っ飛び、地面に転がってしまう。


――――ノーダメージ。


どんだけ「固い」んだ!?


「あまりのんびりしていてもしょうがありません」


「行きますよ」


そう言って僕たちを促す。


「レッツら、ゴー!ですよ」



ジャガイモ仲間の皆さんへ


今日も1日お疲れさまです。


今日は何もない日でしたでしょうか?

それとも忙しい1日でしょうか?


日々、お疲れの皆さん。

「いじめる奴は、お姉ちゃんが○○○してあげるんだから!」とエリーゼさんに脳内で「スン」してもらいましょう!



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