↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

169/258

第169話 ニョニョッと参上!ニョニョッと解決!? 愛の「張り手」ハンドレットフォールド?




―――時は遡り、ハルたちが壁内へ突入した頃。


ハティ、クロエ、ジャンヌ、コリガンは「後詰め」として近くで待機していた。


何が起きるかわからない。


だからこそ、コリガンの使う【失墜した規範ロスト・パラダイムからの隠遁者アブスコンド】で非常事態には逃走をはかる。


逃走経路の確保や殿にハティを使う。


クロエやジャンヌは伝令役でもある。


「ただいま~」


本家・アンジェが転移魔術を使って戻ってくる。


「お帰り。みんなは壁内に入れたみたいだね」


「まぁね~」


そう言うものの、表情は険しい。


「何事もなく進めばいいけれど……」


「そう簡単にはいかないものね」


ふたりは城塞都市を包む「瘴気」を察知していた。


「共和政府が後ろ盾ってことは、追い詰められたら『眷属』を投入してくるわね」


「『恩寵』を使うことも考えられる。相手にどれだけのストックがあるかはわからないけれど」


そう話している時だった。


遠くから土埃を上げ進む一団が見える。


「軍旗を掲げているニ!『共和政府軍』だニ」


本営を叩かれたものの、分散しているため、残りの兵もいるのは確かだ。



「軍旗を確認したニ。『破甲のリュック・シュナウザー』だニ」



その言葉にハティは眉を顰める。


「リュック・シュナウザー」とは共和政府の双璧をなす将軍だ。


軍事司令として最高権力を持つ「ウォルター」の元、実直に任務を遂行する武人。


弓将の「ランドルフ」と違い、「リュック」は重装備の兵を率いて戦う「戦斧使い」。


(アレが参戦すると、「ロナウ」を取り逃がす恐れが出てくるな……)


「アンジェ」


ハティがアンジェに声をかける。


「リュックを野放しにしておけない。ガレットかティアのどちらかが応戦したとして、子供たちのフォローに手が回らなくなる」


魔狼騎士団フェンリルナイトたちは強い。


だが、「恩寵」を使われたり、「眷属」が出てきたりするとなると、どうしても苦戦は避けられないだろう。



「わかった。気をつけてね」


アンジェがハティを送り出す。


「ちゃんと、私がお留守番しているから」


そう言ってにっこりと笑う。


「いってらっしゃい」





フェンリルナイトとティアが縦横に駆け、兵を足止めしている。


ガレットも身の丈ほどもある大剣を振るい、兵たちを薙ぎ倒していた。


「……?」


ガレットは空気の変化に周囲を見渡す。


「おい、お貴族様」


ガレットがティアを呼ぶ。


「なんだ?『脳筋』」


「だれが『脳筋』だ!ちゃんと頭使ってんぞっ」


「そうか……で、なんだ?」


「ああ、空気がピリついてる。ひと嵐くるか」


ガレットが言う。


「相手もバカではないからな。援軍か伏兵か」


ティアが同意を示す。


「ガキどものお守を頼めるか」


「構わんぞ」


短いやり取り。


ガレットは『足場』をつくって上空へと駆けあがる。


「援軍が来やがった!敵は『戦斧使い』だ」


ガレットが状況を伝える。


「俺は、奴らの足止めに向かう。頼んだぞ、『お貴族様』!」


ガレットがさらに「足場」を蹴って向かおうとする。


「おい」


ティアが声をかける。


「なんなら、『全滅』させてきてもいいんだぞ?」


ニヤリと笑うティア。


「ハッ、それなら遠慮なくやろうかね」


ガレットも不敵に笑う。




ハティが野を駆ける。


リュックの足止めに向かうためだ。


だが、それを阻む者がいる。



どーーーーーん



黒い重力を纏った「矢」


躱したハティだったが、近くの地面に突き立つとともに「重力波」を放つ。


「おおっ!?」


さすがのハティも「超重力」を受けては動きが止まる。


(この「矢」はランドルフ……「エガちゃん」だな)


援軍の足止めをするつもりが、伏兵のランドルフによって足止めされる。


(共和政府の双璧がそろい踏みとは、相手も後がないということか)


またも、「矢」が放たれる。


(しかも、また「僕の背中」を狙ってくるな)


背後からの狙撃。


本営の時と違うのは周囲の被害を気にせず、全力で攻撃してくることか。


重力の矢をかわしながら狙撃手の位置を探る。


(相変わらず、身を隠すのがうまいな)


ハティの「索敵」にひっかからない。


(どうする?応じながら移動するか?さすがに仲間を巻き込むなら「重力矢」は使えまい)


移動しながら思案する。





重装備の騎兵たちが駆ける。


「っ!?」


前方に人がいる。


2メートルに及ぶ巨躯。


鍛え上げられた体に獣じみた闘気を放っている。


大剣を担ぎ、両頬に傷のある男。


「ガレット・グランハートだ!」


兵が叫ぶ。


ガレットは剣を腰だめに構えた。


騎兵たちが加速する。


軍馬の蹄で踏みしだこうと迫った。


「っ!」


無言の気合。


巨大な剣が振るわれる。


馬ごと兵が斬られた。


それも、一度に4騎。


勢いのまま地面に転がる兵士たち。


「ふぅぅぅぅ」


息を吐く。


本盗ホームスチールはさせないぜ?」


不敵に笑う。


騎兵たちは取り囲むどころかそのまま脇を駆け抜けていった。


「あっ、おおい!俺を無視するなっ!扱い悪すぎだろ」


不平を鳴らすガレット。


それを尻目に騎兵たちが去っていく。


「くっそ、アイツら」


ゴガァァァァア!


破壊音が響き渡る。


土砂が撒き上がった。


「おいおい、奇襲かよ、おっさん」


戦斧の一撃を紙一重で躱したガレットが言う。


「黒鷹、ガレット・グランハート。お前の相手は私だ」


立派な口髭を生やした男が言う。


ガレットよりも体が大きい。


「元帝国軍人のおっさんが、出世したなぁ。今じゃあキャプテンだものな」


「おまえの例えはいまいちわかりづらいな」


「そうかい」


互いに油断なく構え、機をうかがう。


(やっぱり、手ごわいな……)


ジリジリと距離を詰める。



『っ!』


互いに得物を振るう。


金属を打ち合わせる鈍い音が響き渡った。




ハティへの狙撃。


しかも、過たず背後から。


「黒い重力」を纏ったその一矢は、周囲を薙ぎ倒しながら迫る。


(ちょっとしつこすぎやしないかなぁ)


ハティが思った時だった。


―――――ニョ


なんともぬるっとした音がする。


「ふぅぅぅぅん」


気合と共にその「矢」は弾かれる。


着弾と共に炸裂するはずの「重力波」すら。


「旦那様っ、ご無事ですか?」


エルザ・ジグニュール・ブライトガードだった。


「旦那様をストーキングするなんてっ、なんてけしからん奴でしょう」


(君が言えた義理じゃないよね)


エルザの言葉にハティが心の中でツッコミを入れる。


「しかも常に後ろから攻めるだなんて……」


そこでエルザが頬を赤らめてもじもじする。


「あらやだ。私ったらはしたない……」


(ホント、なんなんだろ……この人)


ハティはその顔を呆れたように見る。


(とはいえ、助かったのは事実だからなぁ)


「え?あれ?」


エルザが動揺する。


「助かった。ありがとう」


ハティが礼を言う。


「~~~~っ!」


エルザはその言葉を噛みしめるかのように拳を握った。


それを余所に、ハティは合理的に考える。


(う~ん、エルザがいてくれたら、防御面は心配ないよなぁ)


またも「黒い重力の矢」が飛んでくる。


「あっと、危ない」


今度はハティがエルザを抱きかかえて避ける。


「ふああああああっ」


エルザが歓喜の声を上げる。


彼女には周囲がバラ色の花園に見えた。


(はあああん、そんなっ急に迫られるなんてっ!いけないわっ)


あくまでも彼女の頭の中のこと。

誰も「君がいけない人なのだよ」とはツッコめない。


(そうだ!彼女に背中を守ってもらいながら「増援」を食い止めに行こう!)


ハティは「名案だ」と自画自賛した。


(とはいえ、あまりに虫のいい話。彼女が同意してくれるか)


「エルザ……僕のお願いを聞いてくれるかい?」


抱きかかえていたエルザを降ろしながらハティが言う。


真剣な顔で見詰めるハティ。


――――ごくり


エルザは唾を飲み込む。


フンス、フンス……


鼻息を荒くしてエルザは彼の言葉を待った。


「君に、僕の背中を預ける。これから僕を守ってくれるかい?」


「……」


わずかな間。


エルザは信じられないという顔で固まっている。


そして、鼻血を吹いた。


(こ、こここれはっ「ぷろぽぉず」ですねっ!)


エルザは鼻血にまみれた手でハティの手をとった。



「はい!はいぃぃっ!一生、365日!24時間、守りますぅぅ!」



ハティが嫌そうな顔をしたのは言うまでもない。


「黒い重力の矢」が迫る。


だが、今のエルザにとってそれは「キューピッドの矢」に見えた。


(もう何万本でも、ウェルカムです!)


ばちこーーーん


盾を使わず、「張り手」で矢を弾き飛ばす。


彼女の心の声が届いたのか、今度は数十本の矢が降り注いでくる。


「オーホッホッホーーー」


高笑いをしながら「張り手」をかます。


あまりにも高速で繰り出されるため、腕が何本にも見える。


(おお、すごい。やはり彼女は心強いな!)


ハティは感心する。


「さぁさぁ、ドンとこーい!ですわぁぁ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。