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第167話 チャラ男はいらないのです!ロナウ(脂身くん)の執着と黒い菌糸のバイオハザード再び!?




階段を騎馬で駆けあがる。


驚いた。


なんという馬術だ。


馬も階段を踏み外すことはない。


「エリーゼ様っ!」


フリードさんが叫ぶ。


最奥の謁見の間。


そこへフリードさんが先行して踏み入る。


――――ドッ!


すさまじいまでの魔力が放たれる。


閃光がフリードさんを包んだ。


「フリードっ!」


エリーゼさんの声。


「問題ありません!」


煙の中、フリードさんの声がする。


……てか、無傷って何よ?タフ過ぎっ。


「それよりも、馬をダメにしてしまいました」


気落ちする。


そこなのか?


「大丈夫」


そう言ってエリーゼさんが下馬する。


倒れた馬に近寄り、「回復の法術」を施す。


馬は復活した。





「いきなりとはご挨拶ではありませんか『ロナウ』」


エリーゼさんが部屋に入る。


主人が腰かける上座に座す男。


彼が、静かに言った。


「我が家を脅かす賊を払いのけただけだ」


なんとも傲慢な物言い。


元はあなたの物ではないはずだ。


彼が立ち上がる。


―――――っ!?


僕は驚いた。


ロナウ・スペンサーは……ハティさんにそっくりだった。


「あなた、その姿……」


エリーゼさんも動揺を隠せない。


「どこかおかしいか?もとより、私は『美しい』オーラを放っていたが」


「嘘をおっしゃい!」


エリーゼさんが叫ぶ。


「確かに、髪の色は白銀でした。目の色は私と同じ、ブルー」


「でも、あなたはずっと、『おデブちん』のロナウでしたっ!」


うっそ!?


じゃあさ、きっと頑張ってダイエットしたんだよ。


言わない方が良くない?


ほら、ロナウさん、肩を震わせているよ。


「誰のせいだと思っている?」


あれ?


「お前たちが、私を追放したっ!だから、このような『貧相な』体となったのだ」


えええ?今の方がいいと思うよぉ?


「ああ、嘆かわしい!この顎を見よ!魚のエラのようではないかっ」


いえいえ、シュッとしていて素敵ですよ。


「ああ、柔らかくも艶やかな私の肌が……」


……マクスウェルの一族はマトモな人はいないの?


「私は誓った。お前たちに償いをさせる」


「お前たちの奪った『脂身』を取り戻し、失った父の名誉を取り戻すと」


う~ん、この人しんどいわ。


「故に――――」


ロナウが手を広げる。


魔術が発動した。


「ここからは、『己の技量でのみ』語るのだ」


―――『【アーザ・ロウ(浅瀬の決闘)】』





石柱が現れる。


それを結ぶかのように結界が張り巡らされ、内側には「くるぶし」が浸かるほどの水をたたえた「浅瀬」が生まれる。


「どうした?」


ロナウが言う。


「怖いのか?」


その挑発に、エリーゼさんが鼻を鳴らす。


「バカを言うんじゃありません」


歩み入る。


「待ってくださいっ、そこは――――」


フリードさんの言葉に、エリーゼさんは自身の唇に指を立てた「しー」って。


(せっかくノリノリでいるんです。もうちょっと調子に乗らせてあげましょう)


やっぱり、エリーゼさんはエリーゼさんだった。


そのまま結界に踏み入る。


「クッ」


ロナウが引く釣った笑いを浮かべる。


「かかったな!ここは『魔力無効空間アンチマジックフィールド』」


「お前のような女、魔術が使えなければ、どうということもない」


ロナウは自信満々だ。


「そうですか」


エリーゼさんは何の感慨も示さない。


「どうでもいいので、さっさと決着をつけましょう」


双剣を抜き、構える。


腕を交差させる構え――――


それはかつて「十字の騎士」が得意としたもの。


「ふん、どこまで思い上がったものか」


ロナウは「槍」を構えた。





冗談じゃない。


僕は正直に思った。


ふつう、こういった敵は「ザコ」なんじゃないのか?


それが、ロナウは違った。


高速の刺突。


繰り出したと思ったら、すぐに手元に戻っている。


エリーゼさんが近づけない。


脛なども容赦なく狙う。


しかも、「突き」技だけじゃない。


薙ぎ払いや叩きなど、さまざまに変化する。


エリーゼさんが斬り込むが、受けられる。


それどころか、いっこうに距離が縮まらない。


厄介だな……あの「円錐」。


そう、ロナウの前に円錐形の守りが構築されている。


そのおかげで、いくら斬り込んでも、距離を縮めようとも、『辺』にそって外側に押しやられる。


だから、円錐の内側にいる「ロナウ」に届かない。


これは、純然たる「技術」だ。


「なかなか、やるようになったではありませんか」


エリーゼさんが笑う。


「ぬかせ」


ロナウが槍の穂先を下に向ける。


明らかな「下段」の構え。


エリーゼさんが踏み込む。


足元の槍を、踏み折ろうと――――


その瞬間だった。


槍の穂先がエリーゼさんの喉を狙うように跳ね上がった。


ロナウが左手を支点に、右手で槍を押し下げたんだ。


シーソーのように押し下げられた石突。反対に穂先が上がる。


エリーゼさんが体をひねる。


けれど、しなる槍が、勢いを増して彼女の頬を割いた。


「っ!」


けれど、彼女は止まらなかった。


反転しながら、腕を振るい、剣先をロナウへと叩きつける。


ロナウは咄嗟に槍を引き戻して受けようとした。


―――ゴシャッ!


鈍い音がしてロナウの体が弾き飛ばされる。


エリーゼさんが片腕で振るった剣によってだ。


「ぬるい。軽い。そして――――弱い」


血に濡れたエリーゼさんが言う。


冷たい光を放つアイスブルーの瞳。


それでいて、遠くからでもわかる威圧感。


これが、「最優の聖騎士長」。


十字の騎士、エリーゼ・カナン・マクスウェル……


「技量は認めますよ?」


ニタリと笑う。


「でも、そもそも論として」


エリーゼさんがロナウに追撃をかける。


ロナウが槍の柄で受けようとする。


グシャ―――――


そのまま押し切られて剣を体で受けてしまう。


「あなたの槍には『重さ』がないのです」




圧巻だった。


両腕から繰り出される剣撃。


それは暴力だった。


グシャッ!ゴシャッ!バキッ!


どう考えても鈍器で殴る音だ。


「軽いんです!ドイツもコイツもっ!」


斬ると言うより殴り続ける。


「ハティやガレット、フリードやルーク!ウォルターみたいに打ち返してきなさい!」


「彼らの骨をも軋ませる一撃に比べれば、アナタなど軽すぎるのです」


「掠ってもなお『骨を削ろう』とする意地が、アナタにはないのですよ!」


もはやそれは「折檻」だった。


一方的に打ち据える。


「ちょっとやそっと齧っただけで、物まねしてわかったつもりになっても『本物』にはなれないのです!」


「彼らがっ、私たちがっどれだけの時間と月日を費やしたかっ!」


「自分の命を危険に晒して練磨したかっ」


エリーゼの一撃でロナウが転がる。



「そのすべてが『剣』によって語られるのです」




しばらくロナウは動かなかった。


やがてゆっくりと体を起こす。


「ロナウ。もうやめましょう」


エリーゼさんが言う。


「伯父様の件は、不幸な行き違いでした」


「私にも責任の一端はあります」


「でも、血のつながりがある者同士で殺し合う道理はない」


「どうか、ここは槍を納めて、投降してください」


エリーゼさんの説得にロナウは答えない。


「ふ、ふふふふ」


不意にロナウが笑う。


「よくもまぁ……」


ロナウが顔を上げる。


目が、琥珀色に輝いている。


そして、白目が夜の闇のように黒く―――――


「ふざけたことをっ!」


ロナウは【アンチマジックフィールド】を解いた。


「時は来た。この『恩寵』によって私は全てを従える!」


ロナウが息を吸いこんだ。


『聞け、諸人よ!』


『私は、君たちの悲しみを知っている!』


その叫び声はただの音の反響ではなかった。


見えない波紋が広がる。




「あ……ああああっ」


人々が苦しみ始める。


「アアアアアアアアアアッ!」


叫ぶとともに体から糸状の物が生える。


妙に、粘っこく、弾力のある「菌糸」のようなもの――――


それは、過去、帝都で人々を襲った「不浄の悪魔」であった。




ジャガイモ仲間の皆さんへ


ストレスを溜めていませんか?

また、理不尽な目に遭ってませんか?


取りあえず、深呼吸。


そして「スン」って意識の外に出しちゃいましょう!





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