第166話 攻略の鍵は「人間砲弾」?唸れ、「ジャガーノート・カタストロフ」!触れれば地獄が待っているぞっ!?
「隊長!接近する騎兵あり。およそ50騎!」
物見からの報告がある。
「50騎?少ないが……」
相手はあのエリーゼの兵だ。
この世界においては「数」だけが物を言うわけではない。
「迎撃態勢」
隊長が告げる。
城塞都市の門は固く閉じられ、壁上には弓兵が展開している。
「バリスタ(固定弩)装填!小塔に通達、別動隊の警戒」
迫る騎兵たち。
「3、2、1……」
「放てっ!」
号令と共にバリスタから巨大な矢が飛ぶ。
――――【炎の壁】
どこからともなく響いた声。
放たれる矢の……いや、城壁の眼前に同じ高さの炎の壁が現れる。
よほどの高温なのか、バリスタの矢が触れた瞬間に蒸発した。
「あっぶないわねぇ!シャレになんないわよっ、バカじゃないの?」
声の主は本家・アンジェであった。
そして、上空で駆けぶ声がする。
「ひっさしぶりの、出番だぜぇ!」
ガレットが宙を駆けている。
「いくぜ!戦技【破城槌】」
空中に作った足場を蹴って急降下する。
だが、いつぞや見せたものとは段違いだった。
――――ドン
空気を割る音。
そのまま城門へと突っ込む。
破壊音が響き渡る。
城門どころか周囲の城壁ごと粉砕した。
「おいおいおいっ、モロすぎだぜ!」
当のガレットは平気であった。
城門どころか数十メートル圏内が瓦礫の山である。
「白銀の虎!」
号令が聞こえる。
「突撃!」
エリーゼの声。
50の騎兵がガレットの空けた大穴を駆け抜ける。
大通りをひた走る。
目指すは領主の屋敷。
「ロナウ・スペンサー」の首である。
◇
大通りを駆け抜ける兵団。
それを阻まんと兵が押し寄せる。
「た、たとえエリーゼさまとて、ここを通すわけには……」
シュパパパパーーン
言い得ぬうちに血しぶきが上がり、兵たちは倒れた。
「ファァハッハッハッーーー!」
高笑いが聞こえる。
「【熾天使の代行者】の断罪!これも慈悲だ」
「地獄への片道切符は、すでに私が受理しているぞ」
ティアが鼻で笑う。
「ヤバいっ!『痛い子』だっ!痛い子だけれど心強いっ」
自軍の兵が歓声を上げる。
「だぁれがっ、痛い子だぁぁぁっ!言われなくてもわかっとるわぁ」
「うわあああ、『自覚症状アリ』!?末期だぁ!」
そんなやりとりをしながらもエリーゼたちはその脇を駆け抜ける。
◇
「いきます!刀技【疾風】」
リャナンの掛け声。
高速の抜刀術で敵を倒す。
「おのれっ!」
後方にいた敵の魔導兵が魔術を放つ。
「【盾】!」
位置を入れ替えてリムアンが「盾」で防ぐ。
「お返しだ!」
その後方でアルセイスが杖を構えている。
「【霊爆撃】」
魔術の一撃で、敵兵の包囲に穴をあける。
◇
「いくっぜぇっ!」
気合と共にフィンレーが踏み込む。
「オラオラッ」
剣を振るって敵前衛を切り崩す。
「フィン兄っ!」
声と共にフィンレーが横に跳ぶ。
「【轟きジョニーさん・初号機】!」
後ろに控えていたルーダとオーレ。
筒状のものをルーダが片膝立ちで構えている。。
ルーダが反動で吹っ飛ばされないようにオーレが背中合わせで支えている。
「「エア・シューート!」」
筒から「風」の塊が放たれる。
風の塊を受けた兵士たちが吹っ飛んだ。
「がはっっ!」
皆壁に頭から突っ込んで尻をこちらに向けている。
「『スンアナゴ』大漁じゃぁぁぁい!」
誰もその名前に突っ込まない。
「このガキぁぁぁぁ!」
兵が向かってくる。
「妹たちには触れさせない」
スヴェンが盾で受ける。
「盾技【盾撃】!」
まとめて吹き飛ばす。
「シィィ!」
鋭い呼気。
「うらああああ!」
フィンレーが立て直そうとした敵兵をまとめて薙ぎ倒す。
―――前衛・中衛・後衛を臨機応変に入れ替える立ち回り。
『これが、我ら魔狼騎士団式・戦闘術!』
『【軍狼の円環】!』
◇
(みんな……頑張って)
僕は馬の背に揺られながら進む。
僕は馬に乗れないので、今はブレイブ叔父さんの馬に相乗りしている。
コレットはエリーゼさんの後ろに掴まっている。
僕らが同行するのは危険だと思う。
けれど、「あなた達は、立派な戦力です」とエリーゼさんが言った。
それから「頼りにしていますよ」とも。
ほんと、ズルいよね。
そんなふうに言われたら頑張っちゃうじゃないか。
よぉし、ハルさんっ頑張っちゃうぞぉぉっ!
〈ロッシェ!やるわよ〉
【土寄せ棒】の「アンジェ」さんも戦意をみなぎらせていた。
ロナウがいる館が見えてくる。
元は、エリーゼさんたちの家だった場所だ。
高い石造りの壁。そしてその前に築かれた堀。
まるで要塞だ。
それだけじゃない。
魔力の「壁」が張り巡らされている。
これじゃあ、侵入は難しい。
兵が堀の前に展開している。
槍と盾を連ねて行く手を阻んでいる。
「止まれっ!」
敵兵から声が響く。
「誰が?」
ニヤリとエリーゼさんが笑う。
「ブレイブ!」
エリーゼさんがブレイブ叔父さんに声をかける。
「ハルを奴らに向けて投げなさい!」
……はい?
疑問が浮かぶ間もなく、僕は叔父さんに襟首を掴まれた。
「え?ちょっと、叔父さんっ、ちょっと待って――――――」
僕の抗議など聞いていないかのように、叔父さんは腕に力を込める。
ビキビキビキ……
僕を掴む腕の筋肉が軋む。
あ……これ、ダメな感じじゃない?
「唸れ剛腕!【ジャガーノート・カタストロフ】!」
おっ、おじさぁぁぁぁぁん!?
「放てぇぇぇぇぇぇ!」
エリーゼさんの号令と共に僕は投げられた。
一直線に敵に向かって飛ぶ。
「ひぃぃぃぃやぁぁぁぁああぁぁぁっ!」
僕は悲鳴を上げた。
ギラーーーン!
【土寄せ棒】の「アンジェ」さん。
彼女の眼の目に鋭い光が差す。(イメージ)
〈我らが一撃は全てを穿つ!〉
目の前に展開する兵士たちは動揺していた。
「こ、これがあの『バンシーの叫び』!?」
「いや、男だから『ファラ・ハの宣告』ではないかっ!」
無駄にこだわり見せるなぁぁぁ!
瞬く間に迫る兵士たちの姿。
〈そう、難攻不落のアナタのハートも!〉
僕は頭から突っ込む。
「うわわわわわわ!」
兵士たちも僕も悲鳴を上げていた。
〈【アンジェ・愛の一矢】!〉
もちろん、敵兵皆が避けた。
―――――スン
「ぐああああああっ!」
避け損ねて触れた兵士が苦しみ始める。
あ……【棒ジェ】さんの「魔力拡散」が大変なことに……
「不可抗力の破壊者め!触れるだけで『死の宣告』をするなど!」
いや、ちが……
勢いのまま転がり、城壁にぶつかる。
――――――スン
砦を覆う「防護結界」が消えた。
「な、なんだとおぉぉぉぉっ!?」
「触れただけで、防護結界をかき消したっ!?」
戦慄する兵士たち。
いや、僕の扱いの悪さに誰か言及してよ。酷過ぎるよ。
『これが、不可抗力の破壊者だ!』
『抵抗は無意味!』
『我らが道を空けよ!』
騎馬が疾走する。
〈きゃははははは!ロッシェは最強のサイコウな!ア・タ・シの相棒なのよん!〉
【棒ジェ】さんが吠える。
僕は拾い上げられ、そのまま城内に突入した―――――




