第15話 コレットの願いと新たな旅立ち。
教会から逃げて村から離れた森の中で僕たちは解放された。
「ふたりとも、怖い思いをさせてごめんなさい」
開口一番、エルザさんは謝った。
「怪我はない?」
この人は本気で心配している。
「大丈夫です」
僕よりも先にコレットが答えた。
「ここで別れましょう。二人なら戻れるわね」
あ……人質にするにも一人だと危ないと思って?
二人を抱えて逃げるって普通は足手まといだと思ったんだけれど。
「エルザさんはどうするの?」
「私は逃げるわ」
鞄の中身を確かめながらエルザさんが言う。
「あの、いっしょに行くことはできませんか」
コレットの唐突な申出。
「え?」
「私、エルザさんが悪い人だと思わないの。それに、戻ってもまた同じ生活に戻るだけだから……」
いやいや、憲兵に追われるくらいなんだから。
悪い人なんだよ、きっと。だって「大罪人」って呼ばれてたし。
〈ロッシェ、このチビッ子止めた方がいいんじゃない?〉
アンジェさんも言う。
「やめときなさい。お家に帰るのよ」
エルザさんもアンジェさんと同じ意見だったようだ。
コレットを諭す。
「私、エルザさんが来てから変わった。なにも感じなくて、面白くもなかったのに、エルザさんが来て、いろいろ教えてくれて、バカみたいにどうでもいいことでみんなで笑って」
コレットの目から涙があふれてきた。
「私、元に戻るのが嫌なんです。エルザさん、私が貴族だったって知っていたでしょ。でも、他の子と同じに接してくれた。他の子みたいにいろんなことを教えてくれたし、叱ってくれたッ!拳骨だってっ」
エルザさんにコレットが抱き着く。
「……お姉ちゃん、私を捨てないで」
エルザさんは何も言わない。
「お父様も、お母様も、だれも私を見てくれなかった。みんなが私を捨てた。どこにも、だれも私を必要としてくれる人なんていない」
そうコレットが言ったときだった。
「そんなことない!」
エルザさんが怒鳴った。
「そんなことない。あなたを必要としないなんて、ない。あなたはいるだけでいい。生きているだけでいい」
肩に手をやり、一生懸命訴えている。
「私はあなたを必要だと思っています。だから助手に誘ったのです。それは、それだけの価値があなたという存在にあるからなのですよ」
なぜか、僕の目からも涙がこぼれた。
「あなたはそこにいるだけで、生きているだけで価値がある。誰からも褒められなくたって、認められなくたって、あなたはあなたであるというだけで価値があるのですから」
ふたりのやり取りを見てなんだか、僕も泣けてきた。
僕にも価値はないと思っていたから。
何をやってもダメで、アイツらからバカにされて……
孤児院のみんなだって辛いのに我慢して頑張っているのに。
家族もいて家もある僕は文句ばかりで。
帰ってふて腐ってるのを毎日家族に慰めてもらっている。
母さん、エナ、アンジェさん……
僕は、僕の方がダメな奴だ。
〈ロッシェ……〉
アンジェさんが気づかわしげに声をかけてくる。
僕はこぼれる涙を拭った。
エルザさんが頭を振った。
おそらく興奮してしまった自身を戒めるものだろう。
「だから、私についてきてはダメよ。これ以上関わったら本当に憲兵に捕まって、最悪殺されてしまう」
エルザさんがそっとコレットを押して離そうとする。
けれどコレットは頑なだった。
「やだ、やだ、嫌だっ」
泣き叫びながら必死に掴まっている。
エルザさんも困ってしまっている。
それに、エルザさんだって早く遠くに行きたいはずだ。
罪人って言われていたけれど。
こんな姿を見せられたら、本当に酷い人には思えない。
僕も、僕だって本当はエルザさんみたいな人といっしょにいられたらいいなって思った。
一緒に行って、逃避行なんて……
そんな物語みたいなことできたら、こんなつまらない人生が短くても価値あるものになるんじゃないかと思ってしまった。
でも、それはできない。
僕はなんの才能もなくて、凡人以下のダメな奴で、それに、母さんやエナがいる。
だから、僕は決断するしかないんだ。
「あの、僕からもお願いがあるんです――――――」
ジャガイモ仲間へ
今日もお疲れ様です。
仕事の人も学校の人も、もちろん家から1歩出ようと頑張る人も、それだけでヴィクトリ~です。
ちょっとした区切り、5分でもできたら脳内で「ヴィクトリー!」とシャウトしましょう。




