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011 レオンと三人

「今日は集まって貰って悪いな。」

「いえ、レオン様の為であれば。」

「どのようなご用件でしょうか?」


 執務室に集まっているのはレオンと3人の男である。右から神経質そうな男、太っちょい男、細身な男である。雰囲気の違う三者ともであるが、共通して仕立てのいい生地の服を身に纏っていた。


「ふむ。引き抜きにあっているとか。」

「事実ですが……」

「私どもは決して受けようなど思っていません。」


 そう、この3人こそがレオンの弟より引き抜きをかけられているレオン陣営の人材である。その中でも特にレオンに重宝されており、信頼を受けているのがこの3人なのである。

 その三人はレオンが切り出した引き出しという言葉に慌てたように言葉を発する。疚しいことがないはずであるが、組織のトップに責められると慌ててしまうのが人情というものだろう。


「もちろん、信じている。私も期待しているからな。とはいえ、今回は事情が違ってきてな。」

「事情、と言いますと?」


 当然、レオンもこの3人のことを疑っているというわけではなく、単純に事実確認とレオンの計略のために必要な情報の伝達という程度でしかない。

 ほっと息をはいた太っちょい男は額の汗をハンカチで吹きながらも、頭上にクエスチョンマークを浮かび上がらせている。


「色々と激化してきているだろう。そろそろ手を打っておかねばと、な。」

「あぁ、そうですね。今日はその対策ですか。」

「逆引き抜きでしょうか。」


 レオン陣営から直接人材を引き抜くほどだ。それほど兄弟の継承争いは激化しており、ここ最近ではお互いが自分の願いを貫くために、日々水面下で策略を練り合っていた。

 今日もまたレオンが一つ手を進めるための準備をするのである。それを間近で見ていた3人はごくりと喉を鳴らして、レオンの方へと視線を向けている。


「ははは、お前たちの力があればできるだろうが、そうではない。」

「となりますと……スパイでしょうか。」

「それよりは内部で情報を攪乱する方ではないか。」

「いえ、私たちの組織の膿をあぶりだすということでしょうか。」


 レオンが焦らすような、試すような視線を3人に向けると、男たちはお互いに顔を見つめ合わせて、自分の思考を口に出していく。

 引き抜き、スパイ、情報の攪乱、組織の膿だし。それらは確かに今のレオンの組織に必要そうに思えて、3人はレオンの方に顔を向けなおす。


「どれも惜しいが違う。お前たちに頼みたいのはフォローだ。暴走しないようにラインの見極めと、説得。こちらの組織で抜けるなら追わないのも確かだがな。」

「フォローですか?」

「……。」


 レオンの回答は3人の発想にはないものであり、まさかのレオンの弟のフォローであった。本来であれば敵とさえいえるだろう相手に対して、フォローをしようというのだ。

 その言葉に疑問を持った3人はそれぞれ怪訝そうな表情を浮かべながらも、何かの思惑があるのかと思考を潜っていく。が、どうしても思いつかないようだ。


「ああ。身内びいきが入っているかもしれないが、優秀だからな。方向性を間違えなければ、適切に成果を挙げる奴だ。だから、その方向性だけぶれない様にしたいわけだ。」

「ラインはどのような基準でしょうか?」

「ふむ。家内で終わるか、家外に出るかだな。家内でいざこざが収まる限りは基本的に止める必要はない。」


 そんな3人に対する回答はレオンらしいというべきか。兄弟の陣営関係ではなく、ダンドール家としての利益を考えてであった。レオンの弟を認めているからこそ、より良い未来に成果を出させようというのだ。

 その言葉に感銘を受けた3人は先ほどの怪訝そうな表情を一変させて、引き抜きをあえて受けることを頭の中で算段を始めていた。


「逆に家内で終わるとしても法律で禁止されていることや、バレた時に醜聞となるものは止める必要がある。」

「なるほど……」

「しかし、何故私どもが?」

「あちらの組織で行うことではないのでしょうか?」


 レオンの求める条件は単純であり、法に則り、人道に反しない事。それだけである。それだけだが、そこが難しいことであるからこそ、3人の信頼できる配下を引き抜きをあえて乗らせようということだ。

 しかし、そもそもレオンの弟はレオンが認める通り優秀であり、引き抜きにわざと応じなくても手段は真っ当なものを選ぶだろうと3人は考える。


「ふっ。その通りだな。俺も変な方向性になるとは考えていないが、保険だ。信頼がおける人間で見ておきたい。もしもの時に対応できるようにな。」

「それは……」

「ダンドール家のためになるのでしたら、納得いたします。」

「もちろん、回り回ってダンドール家のためになる。頼めるか?」


 3人の言葉に微笑みを浮かべたレオンであるが、それでも保険として信頼できる人間がいるかどうか、それだけで精神的負担も大きく違うものだ。


「はい。レオン様がおっしゃるなら、断る道理はありません。」

「私も同意見です。」

「私もです。」


 レオンの提案に快く乗った3人にレオンは軽く頷く。これで一つ、レオンの願いに近づいた。


「助かる。ラインの詳細はまた追って伝える。それと、この話し合いは外に漏らしてはならないぞ。内密に行わなければ意味がないからな。」

「「「了解いたしました。」」」

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