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006 会食

 イリア一行は各自メイドに呼ばれると客室から出て来て、会食場へと場所を移った。会食場は数十人もの人が集まってもまだ埋まるらない程広く、また高級そうな物品や優美な装飾に一行は若干、気後れをしていた。

 部屋の中にはすでにレオンとそのすぐ側に5名の人が控えており、笑みを浮かべながら談笑をしているようだった。

 レオンがイリアたちの入場に気がつくと、5人の人物に軽く礼をしてイリアの方へと近づいていく。


「今日は参加してくれてありがとう。」

「いや、こちらとしても楽しみにしていた。」

「そうか。ぜひ食事を楽しんでほしい。それと、今までの冒険の話を聞きたい。」


 レオンとしては食事会を楽しんでほしいとは思っているものの、やはり冒険の話に興味があるようで、その話を聞くときは目を輝かせるようにイリアへと向けていた。

 そのレオンの様子にイリアは軽く苦笑いをしながらも、そのことを不快に思うことはなく、むしろその目を見て好感を抱いているのであった。


「勿論。だが、先に紹介してくれるとありがたい。」

「そうだな。……白狼旅団と雷鳴獅子だ。」


 レオンが5人の人物に目を向けると、その人物たちはレオンの方へと近づいていき、そのすぐ側に控えるように並んだ。

 冒険者の防具にしては軽装すぎ、かつ礼装には見えない色が統一された装備で揃えられた二組の男女。一見して同じパーティーメンバーであると簡単に分かり、それがこのパーティーのブランドとなっている。

 一方でもう一人の人物は獅子族の獣人である。他の獣人に比べて力が強く、耐久力も強い物理系統に適性がある種族である。鍛えられた身体は服の上からでも簡単に分かり、その屈強さをありありと見せつけていた。


「初めまして、白狼旅団の団長であるクレイという。よろしくな。それとダンテ、マリア、ロイゼと他に数名仲間がいるが、今日は参加していないな。」

「俺は雷鳴獅子のレリックだ。俺はソロだ。」

「お……私はイリア。アリスとヴァンの三人で活動している。よろしく頼む。」

「さて、簡単な自己紹介も終わったから、早速食事をしようか。」


 こうして、簡単な自己紹介を終えた9名は席へと着き、そしてメイドが運んでくる食事を待つのだった。




「気になっていたが、【剣聖】の子孫というのは?」


 食事がメイドによって運ばれてくる頃に話を切り出したのはイリアであった。イリアは過去の【剣聖】と同じパーティーメンバーであり、その子孫というものに興味を持つのは必然であった。


「ああ。230年前に魔王を討伐した【剣聖】ダンドールは王からの恩寵で貴族へとなった。その後、魔物討伐などに一役買っていたが、50年後に亡くなり、ダンドールという名前を後世に伝えるために家名にした。という話が伝わっている。」

「へぇ。ダンドールが貴族に。想像がつかないな。」


 【剣聖】ダンドールという男は元々剣一筋であり、恋愛事などに向いている性質でもなかった。何かに熱中する性格だから、恋愛に熱中すればそれに一筋になるものだが、当時のアルベルト時代には考えられない事だったのだ。

 とはいえ、実際に子孫に残っているという話は家名として残っているほどで、歴史的な背景に矛盾などもない。王国としても戦力を確保するために人、地位で人を縛りつけ、権威付けのために家名にするのはひどく合理的であるから。


「ははは、確かに平民から貴族になるのは、230年も前だと特に時代的にも考えられない話だ。それに【剣聖】の性格から結婚できないと言われていたようだが、愛する妻を見つけられたというのも奇跡と家内でも言われている。」

「ははは。そうなんだな。レオンは【剣聖】の技を継承しているのか?」

「一部。今は体系化した剣技を幼少期から学び、奥義などの技を階級などで学べるという形になっている。当主にしか覚えられない剣技は知らないな。」

「ほう。強いのか?」


 今のダンドール家としても当時の【剣聖】が恋愛方面ではなびかないのは事実として伝わっているようで、レオンは苦笑交じりの笑みを浮かべている。

 しかし、次に続くイリアの言葉には真剣みの増した表情で覇気を身体から醸し出す。実力に裏付けられた覇気はイリアに心地よい威圧感を与えて、イリアのテンションも微かに上昇する。


「戦うか?……と言えたら言いのだがな。部下に却下されてしまうから無理だ。だけど、共闘という形なら強さを見せれると思う。また、一緒に外に出るか?」

「おっ!!いいのか?」


 レオンは自身から醸し出す覇気を消し去ると、共に王都の外で共闘しようと持ち掛ける。流石に貴族という立場もあり、実際に戦い合うことはできないことに残念な気持ちをレオンは持ちながらも、それを今破ってでもやるべきことでない。

 その提案にイリアは楽し気に笑みを浮かべながら、レオンへと輝かせた目を向けた。


「ああ。冒険者ランクの昇格試験として同行しよう。実力的にもっと上だろう?」

「それは……正直有難いが。」

「勿論、不正はしない。公正な判断で試験は見るから、安心して欲しい。」

「分かった。それなら頼んだよ。」


 さらに続くイリアにとってメリットが大きすぎる提案には若干、顔を曇らせるイリアであるが、事実として銅級冒険者としては規格外の強さを誇っている。

 それを理解しているからこその提案であり、そして、公正に判断するという信頼があるからこそ、昇格試験というある種の茶番を通してお互いに共闘することとなったのだ。


「実はイリアの実力は俺も気になっていたところだからな。路地裏ではお互いに全力を出せなかっただろう。」

「ははは。それはそうだな。楽しみにしておく。」

「ああ。冒険者ランクが上がったら、仕事も頼ませてもらおうと思っているから、是非合格してくれよ。」

「期待しててくれ。」


 こうして、終始和やかにダンドール家の会食は終了したのだった。

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