007 昇格試験
「早速、行こうか。」
「ああ。って、いやいや。先に昇格試験の説明を頼む。」
翌日に早速、昇格試験に臨むイリア一行であるが、その中で一番テンションが高いのがレオンであった。レオンが昇格試験においては一番関係ないと言えるのだが、冒険者の仕事を体験できるというだけで楽しいものなのだった。
それ故に説明さえしないで次へと進もうとして、イリアに止められていた。
「……いるか?」
「いるよ?」
「そうか。……仕方ない。」
どこか不思議そうな、不可解そうな表情を浮かべるレオンであるが、イリアの言っていることはひどく真っ当である。仕事の内容も分からずに仕事をする労働者などいるはずがないのだ。
それに急ぎたいあまりにレオンが先に先にと説明を飛ばすものだから、イリアとしては今からどこに行くのかさえも分かってはいないのだ。ここで止めないのは昇格試験に落ちる案件でさえある。
「どれだけ楽しみだったんだよ。」
「今回の敵はロックウルフの群れを討伐することだな。六体の群れ構成で、連携を行ってくるからどう戦うかというのを見る。」
「分かった。」
ボソッと呟かれたイリアの声にレオンは気づくことなく、端的に昇格試験の内容を語った。この昇格試験の内容は定番のものであり、王都においては当たりの部類の試験内容である。
この他にも護衛のシミュレーションやダンジョンのマッピング及び探索、試験管との模擬戦など多数の試験内容が用意されている。冒険者の得意分野にはよるが、試験管との模擬戦が一番の当たりだろう。
「本来であれば、知らない人同士で連携ができるかを見るのだが、そこに関しては今回は抜かせてもらう。昨日でコミュニケーションを問題なくできるのは見たからな。」
「……分かった。では、行くか。」
昇格試験の目的として挙げられるのは、戦闘力はもちろん、環境への適応能力、信頼性、コミュニケーション能力、知識など多岐にわたる。鉄級にもなると報酬も上がり、社会的信頼もそこそこ保証されるのだ。
下手な人間を昇格させると問題が起きた時に組織のイメージダウンにつながり、仕事そのものを振られなくなる可能性も存在するのだ。そうならないためにも冒険者ランク精度があるため、昇格試験は公正に、かつ社会的地位が保障される人間により実施されるのだ。
「その前にロックウルフに関して知っているのかい?」
「ロックウルフは皮膚が硬く、群れで行動する習性を持っているね。それに土属性魔法も扱ってくるから、ロックウルフ内で役割分担がしっかりしていて連携力が高いのが特徴だよ。」
「流石アリスちゃん。詳しいね。」
アリスは流石と言うべきか、説明にかければこのパーティーで勝るものなし。世界でも相当に知識量が豊富で、何十年もの知識をその若さで頭に蓄えている。
いつものことながら、魔物の情報、地形の情報、組織の情報。あらゆる情報をイリアにもたらす最強のナビゲーターであった。
「えへへ。お婆ちゃんに教えて貰ったからね。」
「ミザー婆さんか。」
「それだけ詳しいなら、安心だよ。」
アリスと一緒に住んでいたミザーは、これまでの生きてきた情報をアリスに渡し続けているものだから、当然アリスの知識の源はミザーであり、ナビゲーターアリスちゃんの概念はそこから生まれているのだから、何と言っていいのか。
どこか本人はナビゲーターアリスちゃんという概念を本人は気に入っているようで、偶に強引に知識を紫色の目を光らせながら語る。それが良いことか悪いことか。それは不明である。
「中々いいパーティーだ。それでは早速行こうか。」
「ああ。」
「うん。」
「そうだね。」
一行は平原を超えて、王都近辺にある山までやってきていた。傾斜は崖というほど急ではないが、山に慣れていない人にとっては厳しいものだった。
「結構傾斜も急だね。」
「そうだな。足を滑らせたら大変だから、気を付けないといけないな。」
意外と冒険者の死亡理由に多いのが環境による要因である。特に崖からの落下や雪崩に巻き込まれる、溺水すると言ったことが多く起きている。その他にも毒沼や食中毒、洞窟の崩落など様々な環境要因が冒険者の命を狙っているのだ。
そんな環境要因への対策として打てるのは結局、危険な環境に近づかない、危険な状況にあっても被害を小さくする。危険な行動を取らないと、根本的な環境を変えたりなどの原因を潰すことが難しいのだ。
「実際に死亡事故もあるからな。どうにかしたいと思っているが難しい。道の補装には力を入れているが、途中から魔物も強力になるから、中々進まないというのもある。」
「補装した道を魔物に荒らされることもあるからな。」
「ああ。特に冒険者と魔物が戦うと、どちらも道まで考慮はしないから、地面が抉れることも多々ある。」
戦闘が起るとお互いに命を奪い合うものだから、武器が地面に打ち付けられ、魔法が地面に被弾してと道がボロボロになっていく。それを考えると道の補装をしても利益が出るわけもなく、維持コストが高いものだから誰もやりたがらないのだ。
一応、補装された道には魔物除けを実現するためにいくつかの細工が組み込まれているが、その効果が100%発揮するわけは当然なく、道を魔物が横切ることなど日常茶飯事であるのだ。
「大変だな。」
「いるよ!!ロックウルフだよ。相手は気づいていないみたいだけど、多分すぐに気がつかれる。」
「分かった。アリスちゃん、いつも通りで。」
「うん。スラちゃんもお願いね。」




