001 王都到着
第三章と四章は三人称視点で進行します。前編と後編で分かれているため、まとめ等は第四章に集約いたします。
イリア一行は何事もなく王都に到着することができていた。王都までは街からおおよそ二週間程度の距離にあり、途中で魔物の討伐や村でのクエスト等で路銀を稼ぎつつの進行となった。
村々ではギルドカードによる決算など出来るはずもなく、街で現金を下ろしてその現金により買い物を行う形であった。
「わ~、大きいね。」
「ああ、流石は王都だな。」
アリスが感嘆の声をあげながら王都の城壁を見ている。街の城壁より数倍は大きいその城壁は初めて見ると、誰もが驚き立ち止まるほどのものだ。
所どころ補修されて年季の入った城壁の前で立ち止まる人は多いもので、王都の中に入ろうとする人々はそれを微笑ましそうに見つめていた。
そのことに気がついたアリスはきょろきょろと辺りを見渡してから、静かに顔を俯かせた。耳までもが赤くなっており、恥ずかしがっている彼女を見て、増々周りの人々の微笑ましそうな目線は強くなるのだった。
「は、恥ずかしい。」
「ははは。よくあることだな。ヴァンも実は同じだぞ。」
「い、いや、僕はそんなことないさ。城壁なんて何度見たことか。」
アリスがイリアの背に隠れるように身体を寄せると、イリアはその行動を微笑ましそうに見ながら、ヴァンも同じように立ち止まっていたことを暴露してしまう。
これに慌てたのは当然本人であるヴァンだ。あたかも自分は関係ないとでも言う用にすぐに姿勢を正して、見知らぬ顔をしていたがイリアにはお見通してあったのだ。
若干どもりながらも、必死に言い訳をするヴァンだが、明らかに誤魔化しているのが分かる態度であり、イリアは微笑ましそうに見ており、対照的にアリスは冷ややかな目線で見つめていた。
イリア一行は城門を潜り抜けて王都へと入った。するとそこは一面人の群れ。流石は王都といったところだろうか。所狭しと人間がひしめき合い圧倒的な熱量を放っていた。
「凄いね。迷子になっちゃいそう。」
「ああ、だけど、こんなに混雑しているのは門の周辺だけだな。」
「大きな道に人が流れていくんだね。」
王都でここまで人が集中する場所は門の周辺の広場か、あるいはイベント時の各場所に点在する広場くらいだろう。
当然、王都を建てる際の設計で当時の想定収容人数からさらに数倍まで人が集まることができるようになっている。それでも、限界ギリギリになっているのだけれど。
都市計画を失敗したというよりは、それ以上に発展をして人口が増えたのだ。起点は230年前。魔王討伐により人類の脅威が一つなくなったことが挙げられるだろう。
「こんなに大勢の人が破綻なく同じ場所にいられるのはすごいことだよ。」
「あぁ、昔では信じられない光景だ。」
「……昔?」
「あ、想像でな。カルアの生きていた頃はもっと人が少なかったんだろうと、な。」
カルアの生きていた頃、すなわちアルベルトが生きていた頃の話である。当の本人が口を滑らせてしまっているが、深くは追求しないヴァンであった。
そして、アリスは元々そこをスルーするものだから、奇妙な均衡が保てているのだった。簡単にバレそうな挙動なのにバレないのは、基本的に周りがスルーしているからである。
「とりあえず、向こうに行くぞ。」
イリア一行の向かった先にはなんと冒険者ギルドがあるではないか。……もちろん、前世から位置が変わっていないためだ。だが、その様相は大きく変わっており、建物自体が数倍もの大きさに拡張されている。
「おぉ!!流石は王都のギルドだな。街のギルドより圧巻だ。」
「うん。王都は全て大きいんだね。」
その証拠にイリアが驚きに目を見開かせており、普通のお登りさんのようにギルドの建物を見上げて、感嘆の声をあげていた。
冒険者ギルドには今も様々な人種が出入りしており、その背には多種多様な武器が担がれている。色人族、獣人族、森人族、鉱人族。ここまで様々な人種が集うところはそう多くはないだろう。
武器種もまた、剣、槍、斧、弓、杖と様々で一つの武器種をとっても大きさ、形状などが一つ一つ特色が出ている。
「よし、早速ギルドに……」
その時にふとイリアの目にはある光景が映り込む。一人の男を屈強な男が囲い、胸ぐらを掴みながら路地裏へと入っていく姿。
囲まれた男は恐怖からか、大した抵抗もせずにずるずると引きずられていく。その光景を周りの人々は気がついていないようで、誰も止めることはなく路地裏に連れ込まれてしまった。
「今、人が路地裏に連れ込まれた。追いかけるぞ。」
「え!!大変だね。助けなくちゃ。」
「何かある前に助けないと行けないね。」
その男を見捨てるイリアではなく、イリア一行もまた心を同じくする。こうしてイリア一行は急足で路地裏へと向かったのだ。
そしてそこに広がっているのは一人の倒れた男の姿と、立っている複数の男の姿。
「だ、大丈夫か!?」
「助太刀……するよ。」
こうして、王都に入って早々にトラブルに巻き込まれるのだった。




