019 新たなる力
「さて、では戻るか。」
「ん。……あ。」
「どかしたか?」
カルアに背を向けて他のみんなの所に戻ろうとしたときに、カルアが何かを思い出したかのような声を出した。
カルアの方を振り返ると、カルアはこちらに真面目な表情を浮かべており、こんな大人な表情も出来るのかと、ドキリと胸が高鳴る。
「アル……ヴァンをよろしく。」
「ああ、任せろ。」
カルアに頼まれるなら、それを絶対にやり遂げる。今度こそ。
「悪いな。話は済んだよ。」
「それならよかったよ。……何の話をしていたかは聞いていいのかい?」
「あぁ、実はカルアのファンなんだよ。」
まぁ、嘘ではない。カルアのことは好きだしな。それにカルアの耳と尻尾は虜になるだけのモフモフさだ。あのモフモフさは高級なベットよりもふわふわで、それはもう至高なものだ。
だからカルアよ。わざと照れたように手を後ろ頭に当てる仕草をするんじゃない。無表情だし。ヴァンはカルアがそういう子じゃないの知っているでしょ。
「そうなんだね。分かったよ。それ以上は聞かないさ。」
「悪いな。」
「ん。それで何の用?」
案の定、確実に嘘だってことがバレているじゃないか。別に問題はないけれど、どうにか誤魔化そうとしようよ。いや、誤魔化そうとした結果がこれなのか。
「カルアさんにお聞きしたいのは、守護者の修練所にあるという秘密の部屋のことです。」
「ん。何それ……?」
「えっ、覚えてないのですか……?」
驚愕に目を見開いたのはヴァンであった。カルアから聞いたはずのことが本人は分からないって言うんだもんな。その気持ち分かるぞ。俺もそれを何度経験しただろうか。
本人にとって優先度が低いと、途端に忘れるのがカルアだぞ。多分、見つけた時は興奮したんだろうけれど、他のことをしているうちに興味を失ったんだろうな。カルアは多趣味だったから余計にな。
「カルア。とりあえず、ダンジョンに行くぞ。」
「ん。了解。」
「えぇ!?いつもダンジョンに来てくれないじゃないですか。」
「そうなのか?」
それは意外だ。カルアならダンジョンと聞くとすぐに飛んでやってくるのに。お宝大好きガールだぞ。そんなカルアはカルアではない。まさか、偽物か?
まさかのカルアが本物であるか疑わないといけないとは。はっ、さっきも変な仕草してたし、まさか。
「はい。いつもは頼んでも絶対に来てくれません。」
「私、物に触れられないから。」
「あ~、それは辛いなぁ。……って、どういうこと?」
確かに宝箱を見つけても開けられない、アイテムに触れないのは辛いな。お宝大好きガールには堪えられないだろう。
けど、触れないってどういうこと?完全に実体あるようにしか見えないのだけれど。光の粒子が集まってできているのは見たのだけれど。
「それはカルアさんが英霊だからだよ。英霊は物に触れられないのさ。一応、それにもいくつか抜け道があるし、生前に特に執着しているものは対象外ということもあるよ。」
「英霊……。」
「ん。そのせいで宝が拾えない。」
やっぱり、死んでしまっているのか。そうだよな。この時代まで生きていられるわけがないよな。分かっていたが、それが目に見える形で分かると辛いな。
この手がカルアに触れることは叶わない事なのか。頭を撫でることも、耳に触れることも、尻尾をも振るのも出来ないのか。そんなの……
「あれ……?」
「ん。触れられる。」
「そんな!!僕では触れられなかったのに!!」
カルアの頭にポンと手をおくことができた。生物に本来触れられないはずのようだが、どうやら俺は例外らしい。俺が英霊みたいなものだからか、あるいはカルアがそう望んでくれたからか。
感慨に更けているとカルアと俺の身体が光輝き始める。そして、二人の間に溢れる光の粒子がルーン文字を形成して、魔法陣に置き換わっていく。それがどんな効果なのかは分からないが、光量は増えていき、眩しくて目が開けられなくなる。
そして、背中に何かが突き刺さったかと思うと、ズキズキと痛み熱くなる。何がどうなったか分からないが、痛みが引き、熱さがなくなるとカルアとどこかが繋がっている感覚があった。
「アル……。」
「カルア……。」
カルアと目が合うとと、背中に刻まれた証が熱を持つ。それが何かは分からないけれど、悪いものではないと確信を得ることができている。
どんな変化が刻まれたのだろうか。鑑定。
CNイリア=ローズベルLv25/100 Rank:3
Race:光天族Lv20/50 Job:魔術師Lv15/30 村人ALv28/50
HP 2717/2717 MP 2737/2747 SP 2744/2744
STR 119 VIT 116
INT 136 RES 160
AGI 137 DEX 154
Skill
英雄賛歌,英霊招来
剣術,体術,光属性魔法,無属性魔法,聖剣召喚
魔力操作,歩法,
鑑定
英霊招来?これが新しいスキルか。英霊というカルアの話と英霊に触れたこと。それが条件になったのか。
英霊招来
英霊の力を宿らせて、その力を扱うことができる。限定的に固有スキルも用いることも可能。また、英霊に身を委ねれば英霊の意志で戦いを可能とする。
器のランク*5%だけ英霊のステータスを上乗せする。
使用中はランク/毎秒分だけSPを消費する。
「お、カルアの力を借りることができるようになったみたいだな。身体のまた貸しも出来るようだな。」
「本当?ダンジョン行こう。早く……!!」
ふんふんと鼻息荒くカルアが先へ進もうとする。どうやらお宝が触れそうな事態に興奮しているようだ。今まで相当我慢したんだろうな。
ははは。早速カルアの後についてダンジョンに向かおう。




