016 隠れた名店
「ま、待ってくれ。」
「うん?」
カッコよく前を歩き出したが、後方から親分の引き留める声が聞こえる。流石に無視するのは気分がいいものではないし、楽しませてくれたしな。
それにしても何の用だろうか。他に語るようなことはない気がするが。
「はぁ、はぁ。お前ら、いや、イリアさんは武器を探していたんだよな。」
「そうだけど、それが?」
「今回の詫びと言っては何だが、いい武器屋を知っているから、どうかと思ってな。」
おお、なんという僥倖か。まさか武器屋を紹介してくれるとは。街の住民だからこそ知っている隠れた名店みたいなものを知っているのだろうか?助かる~。
「ほう。聞こうじゃないか。」
「個人店だがな。付いてきてくれ。」
「……。」
「今度はちゃんと付いてきてくれよ?」
個人店か。本来なら様々なリスクが発生するものだが、俺にかかれば鑑定があり、リスクの大多数が回避できる。後は現金を引き出さないといけないか、お金が足りるかってだけだな。
そして、グラムよ。やはり面白い奴だな。自分からちゃんとついて来いよとあらかじめ言うとは。意地悪をしてやりたくなるが、そんな事もう出来ないな。
「ははは、もちろんさ。教えてくれ。」
「ああ。分かった。」
グラムの後を続いて歩く事十数分。指さしたところにあったのは見た目はただのボロ屋であった。店という看板さえなく、そもそも何をやっているかも分からない怪しげな場所。それが第一印象。
「ここが?」
「そうだ。見た目はボロ屋だが、歴とした武器屋……というよりは鍛冶場だ。」
なるほど。武器屋ではないから看板もないのか。……って、納得できるか~。鍛冶屋なら一層ちゃんとした設備になるのではないのか?実は関係なかったりするのか。
まぁ、中身を見て気に入るものがあれば買えばいいし、割に合わなければ買わないでいればいいだけだから、特に問題はないと言えばないんだけれどな。
「へぇ、ここで打っているのか。」
「ああ。基本的には街の武器屋に下ろす用の武器を作っているが、いいモノや高級品はここで取り扱っている。」
「助かるよ。」
「いや……改めて悪かった。こいつらの教育不足だったし、付き合ってもらって悪いな。」
最後まで殊勝な奴だな。自分の非を認めて、頭を下げるなんて大人でもできない奴が多いのに。物凄く真っ当な人間なんだろうな。
それに引き換え、若干不貞腐れた様子の子分たち。それでも、まぁ、赦せる。なんと言っても親分はこれだし、何とかするだろうってそう思えるからな。
「いや、いいよ。今度会ったら飯でも食おう。」
「ああ!!……その時は是非頼む。」
「じゃ、今日は楽しかったぞ。」
そう言うと、グラムは腰を九十度曲げて、頭を下げる。その様子を見て子分たちも頭を軽く下げている。
次に会った時は楽しい時間を過ごせるといいな。普通に飯食って、普通に談笑してな。それから、手合わせしても面白いだろう。
「……らっしゃい。」
ボロ屋の中に入ると意外と中は奇麗であり、狭いながらも敷き詰められた武器たちが出迎えてくれた。
その奥にいるのは一人の老人であり、顔に多くの皴を作って厳つい見た目をしている。掛けたメガネの先には手に持った本があり、読書をしているようだった。
「武器を見に来ました。」
「……。」
こちらが返答しても、ただ片手をひらひらと振るだけだ。どうやら話をする気はないようで、勝手に見ていろということなのだろう。
そう言うことなら、こちらも好きに見させてもらおう。何かしらいいものが見つかればいいのだがな。
「お、杖はあっちみたいだな。」
「うん。楽しみだね。」
どれ、さっきの店にあったものと同じものだな。街の武器屋に卸しているというのは本当らしいな。まぁ、この品ぞろえを見て嘘とは今更思えないけれどな。
EN:陽樹の魔杖+12 Rank:3
攻撃力 40(+15)
Ability
1.魔法攻撃力強化Ⅰ
INTを10上昇させる。
え?明らかに性能がいい。先ほどの店では35+3だったぞ。それを40+15?全くの別物じゃないか。これならランク4として売り出されていてもおかしくない。それが……同じ値段。12,000?
「す、すごいな。ここのはいい武器だぞ。」
「そうなの?なら、ここのを買えばいいのかな。」
「ああ。絶対にここのを買うべきだ。」
ここ以外から買う意味が完全になくなった。このレベルのものが同じ値段で売られている場所があるとは考えにくい。さっさとここで買ってしまうのがいい。他にいいものはないのだろうか。
EN:陽樹の魔杖+12 Rank:3
攻撃力 42(+16)
Ability
1.魔法攻撃力強化Ⅱ
INTを20上昇させる。
ぶっ……。あっさり超えてきやがる。これが一応ここにある中では一番強いものだな。圧巻の能力だ。これが12,000で買えるのか。もう、何が何やらだな。
それに真に恐ろしいのはそれではない。このランクの装備もすさまじいが、もっとやばいのが隣にあるものだ。
EN:妖命樹の魔杖+18 Rank:6
攻撃力 75 (+32)
Ability
1.闇攻撃強化Ⅲ
闇属性攻撃のダメージを8%上昇する。
2.闇属性吸命Ⅱ
闇属性攻撃のダメージの2%HPを回復する。
「こ、これはヤバい。420,000だぞ。」
「あわわ。手が出せないね。」
「な。でも、とびっきり強い。これ以上があるとは思いたくないが、何を隠し持っているか分からないな。」
鑑定書付きのものだ。この店はどうなっているのだろうか。おかしなものが売っていやがる。こんなものこんなボロ屋に置いておくなよ。王都にでも持っていったら、高値で売れるだろうに。
最高級品が何か気になるな。出してくれたりするかな。
「と、とりあえず、この杖を買おう。」
「うん。イリアちゃんが言うなら、安心だね。」
「すみません。」
「……12,000。」
ちらりと商品を見ると、老人は金額だけ提示する。それと共に四角の箱を取り出し、テーブルの上に置いた。それはレジスターだ。ギルドカード照合に使えるものだな。
どうやらギルドカードを使えるようで、つまりはこの店は相当の信用があるということでもある。グラムよ。本当にいいところを教えてくれたな。
「一つお聞きしたいのですが、この店の最高級品はどれですか。」
「……これだ。」
お、杖を一度見ると、テーブルの下から剣を取り出した。青黒い刀身に透き通るような刃。圧倒的な存在感は前世に使っていた聖剣にも匹敵しそうなほどの品。無骨なまでに機能性を重視した剣は素晴らしいできだ。
EN:アストラルベイン+35 Rank:10
攻撃力 113 (+112)
Ability
1.属性攻撃強化Ⅷ
属性攻撃のダメージを20%上昇する。
2.弱点属性特攻Ⅶ
属性対象が*1.000より高い属性場合、ダメージを35%上昇する。
3.貫通攻撃Ⅲ
防御力の8%を無視してダメージ計算を行う。
4.【アストラルベイン】
MPとSPを攻撃力の六倍消費して、攻撃力の二倍の威力で弱点属性攻撃を行う。
「これは、凄まじいな。28,000,000……。」
「……。」
「また来る。」
ランク10は世界でも最高峰の証。上に三つしかないわけだしな。それらのランクの武器はまずお目にかかれないから、ランク10が手に入れられる最強の武器と言ってもいいだろう。
もちろん、未踏破のダンジョンには何が残されているか分からないけどな。




