014 VS親分1
三人組はこちらに背を向けると、店の外に向かって歩き出した。
……このままついていかなかったらどうなるんだろうか。気づかないで帰ってくれないかな。それが一番平和的な解決だろ。
「って、おい!!ついて来いよ。」
「そのまま帰ってくれたらいいのに。」
「「な、なめやがって~~~~!!」」
「ちっ、調子狂うな。いいから、付いて来い。」
しかし、そうは問屋が許さないらしい。扉の前で立ち止まった親分がこちらに振り返り、付いてきていないの見ると、目を大きく見開かせた。
つい本音を出してしまうと、子分立ちが顔を真っ赤にして地団駄を踏んだ。その様子を横目に親分は頭をガシガシと掻き、困ったような表情を浮かべていた。
「……ついてきているな。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……よし、大丈夫だな。」
心配性なのかな。きちんと三人組について行っているが、親分はこちらを振り返りながらゆっくりと歩いている。その後方を程よい距離感を開けて歩いているが、止まったらどういう反応をするか気になる自分がいる。
数度確認しながら歩いていた親分であるが、こちらが付いていく気があるのを見ると、振り返ることなく、真っすぐ歩みを進める。
「……。」
「って、付いてこ……。え?付いてきてる?」
試しに足音を消してみたら、すぐに親分が振り返りツッコミを入れる。が、足音を消しただけでちゃんとついて行っているんだよな。
くくく、きょとんとした顔をしてる親分を見ると、中々愉快なものだ。確かにこの親分なら揶揄いながらも、付いて行っていいと思える何かがある。カリスマってやつだろうか。
「ははははは。面白いなぁ。」
「……厄介な奴だな。はぁ~、ここでいいか。」
「ん?話す気になったのか?」
ついつい足を止めてきょとんとしてる親分を見て笑いだしてしまった。隣のアリスちゃんも何やかやで肩を震わせている。笑い声をあげないように必死にはなっているけどな。
また、困ったような表情で頭を搔いた親分は諦めたようにため息を吐くと、きりっとした表情を浮かべて、真っすぐこちらに目を向けてきた。
「まずは謝罪しよう。二人が悪かったな。すまなかった。」
「「なっ、親分!?」」
「ほう。」
親分が頭を下げる。それにしても謝罪か。想像していた展開とは違うな。何だか真っ当な人物らしい。子分二人は驚いたような表情をしていることから、こうなるとは思っていなかったらしい。つまりは自分に不都合なことを隠して、報告したんだろうな。
それなのに親分はその報告を鵜呑みにせずに情報を集めたか、そもそも信じていなかったか。どちらにせよ、人をよく見ている。
「……だが、下がやられて黙っているだけって言うのも出来なくてな。悪いが戦ってもらうぞ。」
「「お、親分~~~!!」」
「くはは、いいぞ。相手になってやろう。お前みたいなのは好きだからな。」
「ふっ、そう言ってもらえると助かる。」
いいねぇ。いいじゃないか。こんな熱い人間中々いないぞ。道理を弁え、仁義を重んじる。下の責任を取りつつも、それでも下の為に立ち向かってくる。
テンション上がるなぁ。この男と出会うために酔っぱらいとの喧嘩があったというなら、それは素晴らしいことだ。
「俺はグラム。ただのグラムだ。いざ尋常に」
「イリア。イリア=ローズベル。いざ尋常に」
「「勝負!!」」
親分改めてグラムの武器はバスターソード。背にバカでかい剣を背負っているとは思っていたが、やはりそれが得物か。非常に重量が重く、扱うことさえも難しいとされるその剣を両手で掴んでいる。
どしりと構えられたその構えは何らかの武術をやっていたのか、隙がない。酔っぱらい二人がダメダメな構えだったのに対して、こんなに一本の芯がある構えを取るとは、増々楽しくなってきた。
「“聖剣召喚”聖剣エレメシア。……では、行くぞ!!」
「来いっ!!」
構えを取るグラムに対して駆ける。バスターソードは攻撃力が高い反面、取り回ししにくく、隙も大きくなりがちだ。対人用というよりも、対魔物用という側面が強いだろうか。
グラムに距離を詰めるものの焦った様子はなく、重心を下に浮かび上がらせることはない。ここで重心が浮くような甘さが見えたら、簡単に決着がついたかもしれないが、そう楽ではないか。
「ふんっ!!」
「ふっ、そんな大振り当たらないぞ。」
「くっ、おらっ!!」
グラムの攻撃範囲に侵入した瞬間、風を切る音と共に剣が振るわれる。だが、大振りの攻撃であり、何よりも攻撃するタイミングを予測できるため、当たるわけがない。
胸のあたりを狙って薙ぎ払われた剣は俺が姿勢を下に下げることで頭の上を通過していく。そして、グラムが降り切る途中でどんっと地面を蹴り、トップスピードに乗る。
グラム目掛けて振るった剣であるが、しかし、無理に剣を引っ張り上げたグラムの柄に引っかけられて、攻撃が届くことはない。
「よく間に合ったな。」
「……。」
「くく、無言か……。」
弾かれた勢いのまま地面を蹴って、そのままグラムと距離を取る。ふわりと地面に降り立つと、グラムは厳しい顔のままこちらの様子を伺っている。
無言のままグラムは剣を構える。やはりその構えは大木のように安定しており、感心するほどのものだ。
さて、どう攻めたものか。じりじりとすり足でグラムに近づく、それに対してやはりグラムは動き出さずにこちらの様子を伺っているようだった。
「「……。」」
ばちりと目が合う。その瞬間にとんと音を鳴らして飛び込む。俺の行動に反応してグラムはすぐに剣を振るう。先ほどの攻撃に対して軽い攻撃。当てる気がない牽制目的だ。その剣に対して、思いっきり聖剣をぶつけてみる。
――――――ガキンッ!!剣と剣がぶつかり合って火花が散る。どちらもが打ち負けたわけではないが、お互いに衝撃が腕に伝わり合う。
顔を歪めたグラムはしかし、そこまで痺れはないのか剣を振るう。これもまた軽い一撃。大振りをすると隙をつかれると考えたのだろう。隙を最小限に抑えようとする動き方。
それに合わせて、俺もまた剣を振るう。ただし、こちらは全力でだ。それでもなお痺れが若干蓄積する。近づけない状況にストレスを感じるが、だが踏み込むと一撃のもと倒されてしまう危険がある。
――――――ガキンッ!!ガキンッ!!心地よいリズムで繰り返される衝撃に腕の痺れが酷くなる。この打ち合いは圧倒的に俺が不利だ。
どうにか状況を打開したいが、どう打開するものか。魔法を使えば簡単ではあるが、この戦いに魔法を持ち込みたくない俺がいる。
さて、困ったな。




