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英雄賛歌 ~元英雄が二度目の世界を再攻略する~  作者: 如月
第二章 英雄、冒険する
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009 そうだ!ダンジョンに行こう

「おぉ、ここが守護者の修練所か。」

「大きいね。」


 塔型というだけあり、天高くそびえたっており、見上げても果てが見えないほどだ。天辺に登った時に下の景色を見渡すと絶景を眺めることができるだろう。

 そのダンジョンの下には仮設のテントが複数置いてあり、その中では食べ物の販売やポーション類の販売、はたまた買取所の併設がなされている。


「戦士@1。第三階まで潜ります!!」

「斥候@1。第二階層でモンスター討伐をします!!」

「魔術師@1、戦士@1。第五階層に進行予定です!!」


 ダンジョンに近づくと鎧やローブを着たパーティーのリーダーらしき人物がパーティー募集を行っていた。ダンジョンを攻略する上で必要な人員をその場で集めるためだ。

 こういう光景も前世ではよく見たものだが、結局その場で構成したパーティーはもめ事を起こして解散することが多かったな。最終的に信頼できるメンバーでパーティーを組むのが最善だった。


「あ、君たち。パーティーメンバーはいるのかい?一緒にどうだい?」

「すみません。」

「あ、そう。残念だね。」


 どこかのパーティーのメンバーなのだろうが、声掛けを行ってきた。相手がすぐに退いてくれる人で助かった。冒険者ギルドの時見ないに無駄ないざこざにはしたくないからな。

 まぁ、あんな事はそうそう起こらないだろうけど。特にこう言った場でそれをすると他の冒険者に周知されるため、すぐに立ち行かなくなってしまう。


「良かったの?」

「ああ、即席パーティーは碌なことにならないし、今回は下見だけだからな。」

「うん。確かにそうだね。なら、二人でも大丈夫かな。」

「ちょっと待った。本当に大丈夫か?」


 アリスちゃんとの会話をどこで聞いていたのか、同い年くらいだろうか。年若い少年が話に割って入ってきた。

 この子は誰なのだろうか。アリスちゃんの知り合いでもないだろうし、赤の他人だ。なのに、何の用があるというのだろうか。


「大丈夫、とは?」

「ここのダンジョンは罠があるから、斥候役がいないと思わぬケガをするよ。」

「そうなの?」

「そうさ。」


 どんと少年が拳で胸を叩く。少年の金色の短髪がたなびき光をきらりと反射する。白と黄色を基調にした服はどこか高貴さを思わせるものだが、布面積はそこまで多くなく、上品さを感じさせるものだ。

 この少年はどのような立場の人間かは分からないが、何故ダンジョン前にいるのか不思議だ。


「大けがをする前に斥候を雇ったらどうかな?」

「……今回はただの下見だからな。」

「下見こそ斥候の出番じゃないかな。今回なら無料で斥候を紹介できるよ。」


 一理ある。どころか言っていることが真っ当である。確かに下見の時に斥候がいないのは矛盾しているな。地形や階層の特色、モンスター情報などを現地で確認するための下見なのに、それを把握できる役割の人間がいないのは破綻している。

 それに無料!!無料より怖いものはないというけれど、今すぐ大勢の前で紹介できるなら、それもありかもしれない。パーティーを即席で組むデメリットはあるものの、斥候がいる利点の方が大きい。


「そうだな。なら、今すぐここで紹介できるのか。」

「もちろんさ。紹介しよう。この迷宮一番の斥候、この僕をね。」

「は?」

「僕はヴァン=アンドリッヒ。よろしくお願いするよ。」


 ……質の悪いナンパだったか。ここで自分を紹介するなんて、パーティーを入れてくれってことで、可愛い女の子がいるから入りたいとか、そう言うことだろ。うわ~、一理あるって思ったのがバカみたいだ。

 実際に一理あるのも質が悪い。指輪にネックレスとチャラそうな雰囲気をひそかに感じる。なんか、細かいところで嫌な部分が見えだすな。


「ナンパは結構ですけど。」

「ナンパじゃないけど!?ちゃんとした話だよ。こう見えても風魔法には自信があるし、ダンジョンの構造を探知するのは得意なのさ。」

「それにしてはアクセサリーとかチャラチャラしてるし。」

「失礼だね!?これは大事なもので、他のは補助アクセサリーだよ。僕は戦闘能力に関しては期待できないからね。」


 大事なものと言って触れたのは金のネックレス。その先に楕円形の箱が取り付けてあるものだ。中身に何かが入っていて大事なのか、単純に形見とかなのか。それは定かではないが確かな感情の籠った目線を向けているため、信じていいのだろう。

 とはいえ、戦闘能力は期待できないというけれど、実際のところはどうなのだろうか。風属性は使いようによっては強力な攻撃性能を発揮するはずであるが。それとも完全に魔力特性的に攻撃に向いていないということなのか。


「……何が目的だ?」

「目的は当然、ダンジョン攻略だよ。実はあのダンジョンには秘密が隠されているようなんだよ。それを見つける必要があってね。」

「秘密?何故それを初対面の……私たちに?」

「簡単な話だよ。信頼できる人間だから。それだけさ。」


 秘密。どうして初対面の相手にそれも、確実にパーティーを組むわけでもない相手に開示するんだ。詳細は話していないが、その情報を開示する意味が理解できない。

 秘密があるだけでは到達しようもないのも確かであるが、その言葉を言うメリットが不明だ。もしくはこうやって選択肢を与えて悩ませるのが目的?分からないが、目を見ると嘘を言っているようには見えない。


「……理解できないな。報酬の分け方は?」

「僕は今回いらないよ。次も雇ってくれるならその時は山分けにしてくれると嬉しいかな。」


 すべてにおいてこちらに有利な条件だ。初回であるからと報酬を投げてまでパーティーを組もうとする。もう怪しさしかないが、逆にその怪しさこそがこの少年が怪しくないことの査証のようで、判断のしようがない。


「「……。」」

「分かった。今回は組もう。アリスちゃんもそれでいい?」

「うん。私は大丈夫だよ。」

「じゃあ、よろしくな。」


 ここで沈黙を埋めるために言葉を発さないところもそう。こういう人間は信用できると経験則で理解しているが、さてはて吉と出るか、凶と出るか。

 ヴァンという少年に手を差し出すと、彼も手を伸ばしてにこやかに応じたのだった。

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