010 ダンジョン攻略1
ダンジョンに入ると騒々とした空気が一変、厳粛とした重い雰囲気で包まれている。外の空間とは断絶しているかのように音の出入りがなくなり、風の音さえもが消え去っていた。
また、巨大な六本の柱が正六角形を形作っており、大理石調とした意志であるため、どこか神聖ささえも感じられるものだった。
「それで、罠は何階からあるんだ?」
「基本的には二階からだよ。階が上がるにつれて、罠も凶悪になるんだ。それに罠と魔物が連携をしだすのが五階以上からだね。」
「厄介だな。」
二階から、か。案外序盤から斥候の技能が必要とは。最悪、前世の知識があるため、斥候技能を多少再現することも出来るのだが、やはり本職には勝てないのだ。
英雄時代の斥候に一度も勝てはしなかったからな。基本的には怠け者の癖して、お宝とかには目がなく、ちゃっかり自分が最初に宝を手に取れるようにしていたな。
「お二人は何も目的としているのか、聞いてもいいかい?」
「そうだな。守護者の修練所の探索をクリアできるようにするためだな。五階までクリアできれば一人当たり6000だから、日当としては悪くないからな。」
「お金を稼ぐためなんだ。僕も分かるよ。世知辛いよね。」
いや、全くだよ。もっと稼げるクエストがあれば、実際にそれを行うのだが、そういうクエストは大体他の冒険者に取られるか、特殊技能が必要な場合が多いからな。ランク制限もきつい。
そう考えると、6000確定の魔物の討伐数でさらにお金を稼げるようになれば、週二日クエストを攻略するだけでよくなる。しかし、これを三人で分けると4000になるから二人だからこそ成り立つクエストだな。
「ふふ。皆お金には困っているんだね。」
「ははは、そうだな。冒険者がその日暮らしってことがよく分かるな。」
「二人とも、気を付けて!!魔物が近づいてるよ。……音的にリビングアーマーかな。」
ヴァンの警告に従い俺とアリスちゃんは揃って音をたてないように気を付ける。……今気がついたが、ヴァンは常に足音と気配を消しているようだった。あまりにも自然なように思えて、意識さえ出来なかった。
それに早い。魔物の気配はここからでは全然感じないが、ヴァンには感じられたようだった。流石は斥候というところか。
「リビングアーマーはとにかく固いよ。代わりに鈍足だけどね。」
「ああ、攻撃力も低いと聞くな。遠距離から倒すのがベストだな。」
「うん。いつも通りだね。」
っと、ようやくリビングアーマーが見えてきた。足取りは遅いが、ずしりとした重量を感じられる。魔物にダメージを与えても、びくともしなさそうだ。とりあえず、鑑定。
CN―Lv20/100 Race:リビングアーマーLv6/50 Rank:3
HP 2672/2672 MP 2051/2051 SP 2189/2189
STR 108 VIT 158
INT 132 RES 155
AGI 136 DEX 160
「“ライトアロー”。」
いつも通り聖剣エレメシアを構えてリビングアーマーに対して魔法を繰り出す。光の矢はリビングアーマーに当たり、霧散した。
その時にようやくリビングアーマーはこちらの存在に気がついたのか、のしりのしりと歩み始めた。それに対して鑑定してみる。
CN―Lv20/100 Race:リビングアーマーLv6/50 Rank:3
HP 2502/2672 MP 2051/2051 SP 2189/2189
STR 108 VIT 158
INT 132 RES 155
AGI 136 DEX 160
マジか!!まさかの170ダメージ。15~18回程度のダメージを与えないとならない。倒すことは可能であるが、戦闘時間が伸び、かつ消費MPも増加する。MPの方はある程度の余裕があるため、問題ないが戦闘時間が伸びるのは困る。
「“ダークアロー”。“ダークカッター”。」
「“ぷるぷる”。“ぷるぷる”。」
「“ライトブロー”。……弱点とかあるのか?」
「僕も聞いたことはないよ。」
計6発の攻撃が当たっているが、リビングアーマーはびくりともしていない。とはいえ、ダメージ自体は確実に蓄積されてはいるから、勝つことはできるのだろうと思う。
「これでは戦いが終わる気がしないな。中級魔法とか必要だよなぁ。」
「うん。中級魔法が使えれば、火力も何倍も上がるからそれだけで早く倒せるようになるね。」
「何か考えないといけないな。」
そんなこんなでリビングアーマーの討伐には成功した。ただ、火力不足の問題を解決しないことにはもっと上の階層では通用しないだろうし、そろそろ武器を強化する必要がある。
けれど、そのためにはお金が必要というジレンマ。どうにか安く購入できるように素材を自分で調達するとか、もしくは、ダンジョンの宝箱で入手するとか夢を見るのがいいのか。
「時間かかったな。これくらいの戦闘時間ならまだいいけれど、上の階層に行くには心許ないな。」
「僕は十分だと思うけどね。本来六人など大勢で組んで攻略をするものだよ。」
「それはそうか。」
とはいえ、下手な人間をパーティーに入れるわけにはいかないし、今の収入で人数だけ増やすと成り立たなくなるのが見えているから、それを実行するわけにはいかない。
魔物の討伐報酬だけで成り立たせようと考えると、このダンジョンでは一体当たり300だから、一人頭150。30体は倒さないとならない。……厳しいなぁ。
「あ、ドロップアイテムだね。」
「え?お~、アリスちゃん、ナイスだね。」
どれどれ。ドロップアイテムはマナメタル(中級)か。売値500か。おぉ、これはドロップしてくれるだけで全然違うな。それに、このアイテムを素材にして装備を作るでもいいしな。
まぁ、装備を作るのにどれだけの素材量が必要なのかって話にはなるのだけどね。
「よし、この調子でダンジョンを攻略していこう。」
「「お~!」」
世の世知辛さに嘆きながらも、ダンジョン攻略はまだまだ続く。




