1.暗黒の景色
「ジル!ねえジルってば!」
ティーダの声がする。頭の中がぼうっとしているが、一応ココが現実と確認。
夢だったのか・・。ところで。
「おいティーダ!何で朝から堂々と侵入してきてンだよ!」
昨日の夜も言ったはずだ。ったく毎朝毎朝こりもせずに入り込みやがって。一発ぶん殴ってやろうか・・。
ところがティーダは、不満そうな顔をして
「そんなこと言われても・・。もう十時だよ?」
「へ?」
時計を見るとほんとに十時だった。ってことは・・。
「・・すいませんでした。」
ティーダを怒れる時間じゃなかった。でも、いつもだったら起きるまで待つんだけどな・・。
と、いうことは。
「何があった?」
ぜってーなんかあった。じゃないとこいつは無理矢理起こしたりしない。
案の定、ティーダはこう言った。
「喧嘩なんだよ。」
もちろん
「却下。」
寝る姿勢に入る。ティーダにはすまないが、帰ってもらおう。
心の中に引っかかるものがあるけど無視。
「でも・・。」
次に一言。聞いちゃう。
「やられてるのが僕の友達なんだよ。いじめられてる動物を守ろうとして・・。」
無視しようとしたが・・。出来ない。
「・・・しょうがねえなあ。」
とゆうわけで。表に出れば喧嘩(いや、いじめか?)の真っ最中だった。いかにもいじめっこっぽい奴らがたくさん。よくみれば真ん中に男の子がいた。やれやれ。俺的には腹立って、疲れるタイプのやつらだ。
ま、しょうがない。
「はいはいそこまで。いい加減にしようか?」
割ってはいるとギロリと睨んできた。と思ったらにやにや笑い。肩幅は結構がっちりしてる。背も高いし、多分こいつらのリーダーだ。やっぱり疲れるタイプなんだよなぁとか思ってたら、こっちに迫ってきた。
「あれれ?どこから来たのかなあ。ぼくぅ?怪我したくないなら早く帰んなよ。」
取り巻きの連中は馬鹿笑いをしてるが、俺も一緒になって笑う。嘲笑だけど。
「そういうおまえこそどこから来たんだ?暴れるしか能がないなんて三歳以下じゃねぇの。」
ピクリ、とボスの額の血管が動く。挑発に乗ってるみたいだ。俺はわざと目線をそらしていじめられてた男の子を見る。多分十歳ぐらいだろう。あんまり怪我はしてないみたいだ。心の中でほっとする。不安そうに見ていたので目で「さっさと逃げろと」合図を出した。男の子はこっそり動物をかかえて逃げた。さてと。
「ふぅーん。あんなに小さい子を大勢でいじめるなんて、もしかして超弱いんじゃね?」
ピクピクッと額の血管がやばいくらい動いてる。いい感じ、いい感じ。よし、ぶちぎれるとどめの一言。
「あ、そうか。あんな小さい動物も大勢でいじめてるんだもんな。そりゃ弱いか。」
ボスの体が動いた。拳が顔面を狙ってくるが、かわす反動で後ろに逃げた。ボスは指を鳴らしながら脅してくる。
「なめてんのかてめぇ。大怪我してもしらねえぞ。」
指でやれ、と合図を出すと取り巻き(手下?)の連中がおそってきた。俺の周りを囲んで逃げ道をふさぐ。ざっと、二十人ぐらい。人数は多いけど、逆にこれだけの人数でやっていたと考えると腹が立つ。怒りも込めて、連中を睨みつけた。すると呼応したように連中が木剣を出す。さすがに見ていた見物人らも、
「おいまずいだろ。」
「ただの怪我じゃすまないぞ」
「止めた方が良いんじゃないか?」
と言う声が出てくる。でも心配はいらない。武器を持った時点で、ステータスがわかる。くいっと来いよと指で俺の目の前にいた奴が、叫びながらおそってくる。木剣の振りはそこそこ早いけど、余裕だ。首をひねってかわし、顔面に拳をたたき込む。一瞬で失神したがそれを見てか、連中がいっぺんに襲いかかってきた。でも、刀を止めれば攻撃は出来ない。つまりは、相手の刀を両手両足のどこかで止めて残りで攻撃をする。コレを連続で繰り返した結果、
五分後、全員が失神してぶっ倒れてた。
さあ、残りはボスだけだ。ボスは顔が青ざめているが、しっかり睨みをきかせている。
「さあ、コレでやめるか弱虫?」
顔が一気に真っ赤になった。腰から出したのはやっぱり剣。でも、
真剣だった。刃の鉄が光っている。
「しばらく起き上がれないぜ・・。」
無理矢理笑いながらおそってくる。目の前に刃先が迫ったとき・・・・・・!
ボスの動きが止まった。いや、止めた。真剣白刃取りってやつだ。
全身の筋肉に力を入れて・・・。
「はっ!」
気合一閃。刀をへし折った。ボスの顔が青白くなる。ずいっと迫って、右手を左足で踏むと、睨む。
「・・・覚悟はできてんだろうな。」
「ひっ・・。」
そして。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
逃げていった。これでまぁ、村は安心。多分あいつももう暴れたりしないだろう。刀もへし折ったし。
俺は、逃げてったボスに伝言を伝えさせるため、取り巻きの連中をたたき起こし、こう告げる。
「いい顔おまえら。これからは自分より弱い奴をいじめたりすんじゃねえ。人に限らずだ。もし今度やったら俺が殺すからな。」
がくがくうなずきながら連中も逃げてく。ほっと息を吐くと周りから歓声が聞こえた。人混みの中に男の子を見つけて行く。
かなりおびえられてた。俺は笑顔で頭に手を置く。
「怪我ねえか?」
男の子はうん、とうなずきながら抱いていたちっこい動物を見せてくれた。なでると動物もうれしそうに尻尾を振って、男の子も笑顔になった。
再び周りから歓声が起きた。
その日の夜。一人寂しく晩飯を食ってたところに、訪問者がきた。
トントン、トントントン、トントントントン、トントントントントン・・・。
ノックの音がエンドレス。誰だろう?
「はーい。」
扉を開けてでると、昼間助けた男の子だった。
「あれ、どうした?」
男の子は掌を開いて、手に持っていたものを押しつけると、
「ありがとうございました。お礼です。」
と言って走ってってしまった。見るとブレスレットだったので、早速腕につける。
すると、見計らったかのようにティーダがきた。
「よぉティーダ。どうした?」
毎晩うちにきてるが、いつもより早い(・・・いや、くるなとは言ってるんだけどね)。
「フィール、来た?」
「フィールって?」
聞き覚えのない名前だ。
「えっと、昼間助けた男の子なんだけど・・。」
「ああ、来た来た。」
成程成程。そういえば名前聞いたこと無かった。
「どうだった?」
「よくわかんねぇ。渡すもん渡して、さっさと帰った。」
「恥ずかしがり屋なんだよねー。」
あ、そういえばこいつの友達とか言ってたな。俺はティーダにブレスレットを見せる。
「これ、もらったやつ。せっかくだからしばらくつけてる。」
「そう・・。よかった・・。」
ティーダはティーダで心配してたらしい。めっちゃ顔が緩んでる。
ところが、ブレスレットを見たとたんにまたこわばった。
「ジル、あのさぁ・・。」
「ん?どうしたんだよ。」
ティーダの目が恐怖に見開かれている。
「・・・実は昨日の夜変な夢を見て・・。」
「夢?」
俺にも思い当たる節がある。あの懐かしい感じのした不思議な夢・・。
「うん・・。」
ティーダは夢の内容を説明し始めた。
「いつの間にか眠ってたんだけどね。気づくと森の中だったんだ。そしたら黒っぽい人たちが急に出てきて・・。怖くなって逃げ出したんだ。そしたら追ってきて・・。頑張って逃げてたら、腕から変な怪物が・・。」
「怪物?」
半ば信じられないような話だけど一応聞いてみる。
「うん。そのとき腕についてたのが・・。」
ブレスレットを指さして
「コレだったんだよ。それから、その黒い人たちが空に穴を開けてもっとたくさんの怪物を出してきたんだ・・・。村中が怪物に襲われ手パニックになって・・。で、ココで目が覚めた。細かいところは飛ばして、だいたいこんな感じ。」
と言った。
「ふーん・・。」
ただの偶然としてみることも出来るけどやっぱ気になる。ブレスレットを手の中で転がしてると、水晶体のようなものを見つける。
キラッ・・。
「ん?」
「どうしたのジル?」
「今、なんか光った!」
ティーダの顔が不安そうに。
「早く捨てなよそれ。なんかやだよ。」
無理矢理腕から外そうとティーダがつかんでくるが、俺はそれをつかむと、
「いいからいいから。大丈夫だって。」
と振り払う。相変わらず不安そうな顔をしてたけど、ティーダは渋々手を離した。それでもやっぱり、「怖いよぉ」と連呼する。あまりにもしつこいので、振り払う。
「そんなに言うなら、このブレスレットのことフィールとかいうやつに聞いてみるか。それでいいだろ?」
渋々って感じでティーダがうなずいた。
てなわけで、現在時刻八時〇〇分。ティーダの案内でフィールの家へ。見ると普通の家だった。が、家の周りに人の山が出来ていて、入れそうもない。
しょうがねえな・・、とか思っていると、聞き覚えのあるドスがきいた声がした。誰だっけと思ってティーダと顔を見合わせる。そして・・・同時に思い出した。
「さっきのボスの声だ!」
声が同時にそろう。会ったら会ったでやっかいごとになりそうだったので、急いで建物の陰に隠れた。そして、そっと耳を澄ませる。
「・・・さっきのあのガキはどこだ?さっさと言えよ。」
「・・・知りません・・。本当です・・。」
「嘘つくんじゃねえよ!殺されたいのかてめぇ!」
見ると、胸ぐらつかんで持ち上げている。フィールの顔はとてもおびえていた。
ブチッ・・。
俺の頭の中で、何かが切れた音がする。気がつけば俺は、そのリーダーに体当たりをかましていた。
どーんと派手な音がしてボスが倒れる。誰がやったと見回して、俺の姿を見つけた。そして、にやりと笑う。
「・・・よお、昼間は世話になったな。」
「・・・こんなところで何をしている?」
俺は、ありったけの怒りを込めて睨みつけた。
「昼間のことに、懲りてないのか?」
「・・・うるせぇんだよ!」
不意に、ボスの拳が俺の顔面をおそった。不意打ちだった俺はガードできず、まともに吹っ飛ぶ。
「昼間は確かに疲れていた。けど今は仲間もたくさんいるし、それに・・。」
懐から取り出したのは・・、拳銃。そしてそれをフィールの方に向け、懐からもう一丁出して俺たちに向ける。一瞬にして動けなくなった。
ボスは引き金に指をかける。そして、顎で仲間に合図をした。すると、それを見て俺を捕まえる。ざっと五十人。いくら何でも、全員いっぺんに倒すには無理があった。縄で縛られ、ボスの前にひざまずかされる。
「昼間の礼は、たっぷりさせてもらうぜ。」
まずは一発顔面に蹴り。それから連続で蹴りを入れられた後、さらに立たされて仲間の連中にがっちり押さえられる。そしてパンチの雨。腹を殴られ、さらに顔面を殴られる。ガキッと歯が折れる音がした。口が切れて血が出てくる。さらに、タックルをかまされた。一回一回やられるごとに体がグラグラする。縄をほどかれ、地面に倒された。起き上がる力もない。声だけがかろうじて出た。
「・・コレで・・満足・・か・・?」
この声を聞いて、背中を踏みつけられる。口から「うぅっ」と情けない声が漏れた。
「調子にのってんじゃねえよ!」
そう叫んでボスがさらに俺を蹴る。仲間たちも一緒になって俺を蹴り出した。一瞬だけ、おびえているティーダの顔が見えた。逃げろっと目で合図をする。ティーダは少し迷っていたが、フィールとその家族を連れて 森の中に逃げた。
さーてと。後は俺がやられればみんな助かるもんな。とか思いつつずっと攻撃を受けまくる。
しばらくしてからボスの顔がゆがんだ笑みに変わった。
「そろそろ勘弁してやる。」
立ち去りかけようとしたとき、何かを思い出したようにこっちを振り向いた。
「おっとそうだ。この腕輪はもらっていくぜ。」
そう言って腕輪を盗っていった。当然のごとく腕にはめて仲間に見せびらかす。
ギラッ・・・。
「えっ・・・。」
また腕輪が光った。でも、さっきより暗い光だった。しかも、まだ光ってる!ボスがその腕輪を見て固まってる。
「な、なんだよこれ!?」
そういった瞬間に・・・!
ブレスレットから光が伸びた!
しかも、空に穴が開いてる!
空が一気に暗くなって、穴だけが広がっていく。その中から黒い球が落ちて・・・いや、降りてくる。ある意味では美しさまでもを漂わせている黒い球。それが地面についたとたん・・・。
世界が一気にシルエットになった。暗黒だけの世界。
どこを見回しても闇の風景。色がついているのは俺の周りの人間だけ。手の感覚はもはや無い。
「ね、ねぇジル・・・?」
ティーダの不安そうな声が聞こえる。
「心配すんな。大丈夫だ。」
そうは言うけど俺だってどうしたらいいのかわからない。闇の中だと自分がどこにいるのかさえわからなくなる。
「おい、そこのガキ。」
「何だよ。この期に乗じてなんかしようってんじゃねえだろうな。」
ボスはびびってんのがわかりやすいほど現れている。体が震えている。でも、最低限の威厳を保っていた。
「んなんじゃねえよ。ただ何がおこってんだ?」
「知るか。おれだってわかんねえんだよ。」
ペキッ・・。
「えっ・・・?」
妙な音がして俺はボスを見る。が・・・。
ボスの体が、裂けていた。よく見れば他の不良も体が裂けていた・・・!
「な、なんだコレ。助けてくれぇ!」
「そ、そんな・・・。」
慌てて近寄って安否を確かめる。顔面をのぞき込めばもうそこに顔はない。闇だけしか残ってなかった。
他の奴らも一緒だった。もう顔がない。
全員見たが、誰一人助かる様子もなかった。
「ジル・・・?」
ティーダの声がする。俺は世界に唯一残ったティーダと背中合わせに立つ。
「なにがあるかわからねえから絶対に油断するな。」
ティーダにはそう言って俺は考える。俺の時は反応しなかった腕輪。暗闇を作り出した球。虫の脱皮のように裂けていた体・・・。
・・・脱皮した体?
そう思った次の瞬間目の前を影が突っ切った!一瞬だけ見えたその体は虫のような動物のような奇妙な生き物。しかし、そんな体はどうでもよかった。命の危機が、まさしく今ある。赤く光る目は、暗い力を放っていた。
「ティーダ!油断するなよ。」
「わかってるって!」
声が震えていた。俺が一歩足を踏み出す。だがそれを合図にしたように、その虫みたいな奴らが襲いかかってきた。
連続で打ち出される攻撃の雨。ほおが傷ついた。殴ってもすり抜ける。
「うわっ。」
後ろでティーダの声がした。振り向くとティーダが襲われている。慌てて助けに行こうとしたが今度は俺が捕った。
地面に引き倒されて周りを囲まれる。
「おい、しっかりしろ」
「助けて、ジル!」
声だけしか聞こえない。姿はもう見えなくなった。
「放せこのっ。」
やっぱりよけるようなことはしない。両手についた鎌が俺の体を傷つける。全身が血だらけになった。
「た・・・助けて!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ティーダ!」
助けに行きたい。でも、出来ない。
最期の最期ぐらいはっ・・・。あいつを助けたい。でも・・・今のままじゃ・・・。
悔しさと悲しさが入り交じる。もうだめだ・・・。畜生・・・。
俺は気づかないうちに、母親からもらったペンダントをつかんでいた。
ボッ・・・。
「え?」
首のペンダントが燃えている。青い炎を放ち、俺を包むように広がっていく。おびえた怪物どもは、俺から離れていく。
気持ちいい炎だ・・・。そう思うと活力が湧いてきた。
そうだ・・・。おれはまだ、負けるわけには ・・・・・・いかない!
大事な奴を・・・ダチを・・・守る・・・!!!!
一気に炎が燃え上がる。俺の右手に光が、炎が集まっていく。そしてそれは形を作り、握れとばかりに浮かぶ。
そして・・・。叫んだ!
「Hory Knight・・・!」
次の瞬間、俺の手には青い炎を宿す大剣が握られていた!




