2.別世界からの呼び声
俺は右手に現れた大剣を軽く振った。昔からずっと一緒だったような感じで、とてもしっくりくる「 「ジ・・・ジル・・・?」
ティーダの声がして、慌てて近くに寄った。かなりの攻撃だったのか、結構な数の傷がある。だが、命に関わるほどでもなさそうだ。
「大丈夫か?」
ティーダは軽くうなずいた。
「僕は平気。ジルは?」
「俺は大丈夫だ。しばらく休んでろ。」
そういって、ふりかえると影の軍勢へ剣を構える。
それを見て影の軍勢は俺を中心に円のように広がる。
すると不意になにか聞こえた。
―アイツ、危険。サッサト、喰う。―
―気ヲツケロ。食イチギッテヤル。―
―アノママ消シテヤル。―
ザワザワした耳障りな声。
「・・・こいつらの声か?」
そう思ったら次の瞬間目の前にいる奴が襲ってきた!こちらに向かって鎌を振るってくる。ぎりぎりでかわすと、そいつの腹に一撃をくらわせる。一気に真っ二つにした!
コレなら勝てる!そう思ってると、背後から重い一撃。
振り返るともう一匹が襲ってきてた。すると周りの奴らが一斉に襲ってくる。
「・・・いくぞてめえらぁ!」
剣を振り回して一匹一匹倒していく。戦い方なんてわからないけど、それでも思いっきりやってみる。手と剣が同化していくような感じだ。やられた奴らは影に消えていく。
ところがこいつらがなかなかしぶとい。残り三〇匹ほど。一周させるように剣を振り回した。
だが、あまり当たらず、逆に右肩に深い傷をつけられた。
「ぐっ・・・。」
剣が持ち上がらない。思いっきり押し倒された。上に乗られて鎌を振り上げてる。
「くそっ。」
剣で防ごうとするが、一瞬早く鎌が俺の腹を襲った。
血があふれでてくる。
「ぐはぁ・・・。」
やばい、やられる!そう思ったときだった。
「―剣に意識を集中して!」
瞬間的に言うとおりにした。すると青い炎が一瞬広がって相手を切り裂く。重荷が無くなった俺は剣を杖代わりに立ち上がる。「・・・今の声って・・・。」
反射的に言われたとおりにしてしまった。再び声が聞こえる。この声って・・・?
「―全部の力を剣に込めて。」
「・・・おまえは誰だ?」
聞いてみるが、答えがない。
「・・・ちっ。」
痛みをこらえ、剣を構えて目を閉じる。
怪物どもが、走ってくる音が聞こえた。必死で集中する。
目を閉じていても、青い炎が剣に集まっていくのがわかった。
炎が俺の体を通っていくのを感じる。俺を通路にしていく。
怪物どもが一気に踏み込んでくる足音。そして、
「はぁっ!!!」
一気に剣を振るった。
青い炎が形を成して、まとめて突っ切っていく。当たった奴からすぐに消えていった。
そのときの青い炎の形。強靱な力を形容するかのように・・・。
「・・・龍・・・?」
まさしく龍のようだった。その龍がすべての敵を蹴散らし、消滅させ俺のことを見下ろす。
その目は温かく、俺を見つめていた。
何かのまなざしに似ていると思っていると、不意にすーっと形が消えて元の炎に戻り、俺の剣に戻っていく。
「ふーー。」
力が抜けて口からため息が漏れた。
辺りを見回すと、周りの世界が、また元の色のついた世界へと戻っていっていた。
ティーダを探すと、傷だらけで座り込んでいる。俺の戦いをずっと見ていたせいか、その目線は俺の腹の傷と、剣に注がれていた。
「ジル・・・大丈夫・・・?」
声を聞いて、俺も安心した。急に、慌てたようにティーダが騒ぎ出す。
「ジル!あいつからブレスレットをとって!」
忘れてた。ブレスレットを抜け殻と化した不良の手からとり、Hory Knightで突き刺す。
キチキチ・・・と音がして割れ、粉々になる。それを確認して、息をつく。そのとたんに、
「ぐっ・・・。」
不意に腹の傷が響いてきた。血がどんどん流れてきて意識がもうろうとする。
「ジ、ジル!?」
すーっと意識が遠のき、結局俺は、そのまま気絶してしまった。
・・・qwertyuiopaaasdfghjklzxcvbnmqwertyuioasdfghjklzxcvbnm12qasde45tgfhui987yjkmnhui9o087tghjmnbvcdxrtyuiop0987ytghjkkoiytghjkhuio0oiuhdthjk・・・
耳に入る言葉のような音・・・。それが頭を、首を、胸を、腹を、全身を貫いていく。
ペンダントが燃え出す。蒼炎が、また人のかたちをとる。今度は、はっきりした少女の形。
「・・・あんたなんだろ。俺を救ってくれたのは。あんた、誰なんだ!?俺は、どうしたんだっ!」
少女は、俺に向かって口を開く。
「・・・サラ・・・。」
それが少女の名前なのか、それとも何かの言葉なのかわからない。
もう一度口を開こうとしたとき、一気に目の前が明るくなって・・・。
目が覚めた。目の前にはティーダの顔がある。心配そうだった顔が、一気に晴れる。
「ジル・・・。良かった・・・。」
安心して力が抜けたのか、ばっと倒れ込んできた。
「心配したんだからね・・・もう。」
それはこっちの台詞だ。と言いたいところだったが、生憎そんな体力はもう残ってない。体の神経が全部切れたみたいに、ピクリともしない。
もう少し踏ん張って眼球を動かすと、さっき戦ってた場所。でも、もう明るくなってた。
「ずーっと眠ってたんだよ。もう8時間ぐらいたってる。」
・・・そんなにか。この感じだと、こいつもたぶん寝てない。
「ちょっと待ってて。今、近くの人を呼んでくるから。」
そういうと、ティーダはかけだしていった。「俺は大丈夫だ」と言いたいが、口が動かない。ぼーっと空を見上げることしかできなかった。
血は止まっていた。しばらくすると、俺は村のおっさん(確か大工だ)にかつがれて、家まで連れて行かれた。
ちなみに、俺に家族は居ない。父親は、俺がまだ9・10才の頃に事故で死んだ。落石につぶされそうになった村の子どもをかばって。母親は俺が生まれるときに死んだらしい。難産だったと親父は言ってた。
そんなわけで俺の家には俺一人しか住んでいない。だから家も、家屋って言うよりは小屋のようになっている。その超がつくほどわかりやすい部屋の、目につくベッドに寝かされて包帯でぐるぐる巻きにされた。しばらくゆっくりしてろといわれベッドの上での生活が始まった。
一週間後。
久しぶりに外に出た。傷自体はあまり長引かなかったんだけど、全身にたまっている負荷が多すぎたらしい。それで結局、こんなに時間がたった。まぁ、正解だったんだろう。ベッドの上で全く動けなかったことがそれを証明している。で、一週間たってようやっと(包帯だらけながらも)動けるようになったわけだ。
外に出れば一週間前と変わりない、穏やかな風景が広がっている。大人たちはわいわい話しているし、子供はそこら辺をかけずり回っている。
やっぱ平和はいいもんだ。俺はそう思う。
外でぼーっとしていると、ティーダがやってきた。
「ジル!動けるようになったんだね。やったぁ!」
ホントにこいつはお調子者だ。ココは一発・・・。
びしっ!
「いったー!デコピンなんてするなよぉ。」
「馬鹿かおまえは。やったぁ!じゃねえんだよ。第一、おまえだって・・・。」
ティーダを見る。
「絆創膏だらけじゃん。」
「ジルのに比べたら平気だよ。」
ふてくされながらも、威張るように言う。
「うるせぇ。」
そういって、笑いあった。こうやって、心から笑うのも一週間ぶりだ。
しかしティーダは、ペンダントを見ると顔を曇らせた。
「ジル・・・。それまだつけてるの?」
「ああ。」
ティーダは、その言葉を聞き、ため息をつく。
「この間のこと、忘れた訳じゃないよね。それのせいかもしれないんだよ!?」
最後は、迫るような言い方だった。それをいさめるように、俺は言う。
「何であろうと、これは死んだ母親から、親父を通してもらった、二人の魂がこもった大事なものなんだ。一回確かに危険な目にあった。でも、そのとき助けてくれたのはコレだった。おれは、コレをお守りとしてこれからも持ち続ける。」
いったん言葉っを切って、言った。
「わかってくれるよな・・・?」
ティーダは、渋々といった感じでうなずく。
「よし、じゃあどうする?」
そうティーダに聞いたときだった。
ペンダントが、また燃え出す。
「「えっ・・・?」」
俺とティーダの声が重なった。ペンダントは、まるで何かに引き寄せられるかのように、どこかへ行こうとする。
周りを見回しても、コレに気づいている人はいない。俺たちだけに見えているようだ。
「ジル・・・。」
「行ってみるか。」
顔を合わせてうなずくと、二人で一緒に歩き出した。
引き寄せられる方向に行くと、そこは村から少し離れた場所の森だった。
村人には、「獣人の森」と言われている。ここに昔、狼男のような獣人が住んでいたという言い伝えがあるかららしい。
「森の中なのか・・・?」
「ジル、どうする・・・?」
どちらかと言えば臆病な性格のティーダは、森の雰囲気に圧倒されているらしい。ここは危険だと、大人たちに言われている。
「おまえは、帰っててもいいんだぞ。」
ティーダにはそう言ったが、なんやかんやで結局ついてきた。
一本道を通っていけば、2、30分歩いたところに湖がある。おそらく、そこに行こうとしているのだ。
とりあえず、走り出していく。一週間前の答えがあると思った。
湖に近づくたびに、ペンダントの動きが強くなる。少し走らないと、首が痛くなるぐらいだ。
そして、20分ぐらいで湖に着いた。特に変哲のない湖だが、中には大きな肉食魚が住んでいる(らしい)。
「多分ココだよな。」
「うん。そうだと思うよ。ペンダントもさっきから・・・あれ?」
見ると何故かペンダントの炎が小さくなっていた。
「何でだろう?」
「さぁ・・・。」
ペンダントをじっくり見ていても、何の変化もない。
「っかしーなー・・・。」
周りを見回しても、特に変わりはない。
「ホントにここなの?」
「多分・・・。」
ティーダに言われてだんだん自信が無くなってきた。と、そのときだった。
・・・ポチャン・・・
何かが落ちる音がした。水面を見ると、その波紋が広がっていく。
「鳥がなんか落としたのかなあ。」
ティーダが何事も無いようにそう言っても、俺はしばらく湖面を見つめる。すると・・・。
空から光の柱が、湖に降り立った。そしてその中にいたのは・・・。
「・・・うそ・・・。」
ティーダと顔を見合わせる。中にいたのは・・・。
「「あれ、人じゃないか・・・?」」
声が重なった。光の柱は、螺旋状になり、そのまま空気に溶かされていくように消えていく。中にいた人影は、少女だった。整った顔立ちに、ミステリアスなほほえみ。憂いと悲しみを含んだような眼。そしてなにより、あの少女は・・・。
「・・・俺の夢の・・・あの女の子だ・・・。」
周りにかすかな光をまとわせつつ、湖の上を滑ってくる。そして、俺たちの前まで来ると、こうつぶやいた。
「あなたがそうなんですね・・・。」
そのほほえみから漏れた、透き通るような声。それが耳に届いたかと思うと、
その少女はその場で気を失ってしまった。
「えっ、ちょっ・・・。」
あわてて駆け寄って腕を掴むが、そのまま俺も湖に落ちて、おぼれそうになる。が、何とか持ち直して引っ張っていくと、その少女をそっと岸辺に寝かせた。
「ふーーー。」
息を吐いて、容態を確かめる。問題はなさそうだが、とりあえず村まで運ぶことにする。
「おい、ティーダちょっと手伝ってくれ。」
・・・返事がない。
「ティーダ?」
振り向いてみると、顔を赤らめてぼーっとしてる。あきれて頭をたたくと、ようやくはっとした。
「馬鹿かおまえは。早く手伝え。」
「あっ、うん。」
・・・やれやれ。
「とりあえず、太い木の棒二本を探して持ってきてくれ。人が乗っても折れないようなやつな。」
「わかった。」
そういって駆け出していく。俺はその間に近くにあった石を削って、ナイフの代わりにする。それを使って羽織ってきた上着を裂くと、一枚の大きな布になる。その作業をしている間に、ティーダが太い木の棒を持ってくる。
それを布の両サイドに巻きつけて、俺特性の「即席担架」の出来上がり。少女を乗せて村の医者まで。
「じじぃ、どうよ?」
少女(サラ?)を村の医者に連れて行くと、とりあえずベッドに寝かせておいてくれることに。
しばらく起きないので聞いてみたら、鍋が飛んできた。慌ててかわすと、後ろでぼーっとしてたティーダの顔面にストライク。鼻血の洪水でけが人倍増。おいおい。
「人のことをじじぃって呼ぶな。」
それだけ言うと再び検診に。
この医者はシャイルというどっかラどう見てもチンピラにしか見えない男。実際元々不良だったらしい。歳は20代後半から30代前半あたり。うちの村唯一の医者である。
「ヂョッド、ジャイルゼンゼイ、ヴァナヂ、ドマンナイ・・・。」
後ろから妖怪みたいな怪しい声が聞こえた。鍋が顔面にストライクしたティーダ。白っぽかった服がどす黒い赤に。
「あ、わりいわりい。」
止血して事なきを得るものの、鼻の下についた赤い跡が消えなくて、興奮して鼻血が流れてるみたいでおもしろい。
「笑わないでよぉ。」
思わず笑いそうになった俺は釘を刺され、口をもごもご(笑いをこらえてるってこと)。
「おい、ジル。ちょっといいか?」
シャイルに言われて、話を聞くことにする。
「こいつはずいぶんと変わった女の子だな。」
「なんで?」
シャイルは色々と疑問が残ったらしい。
「すごく体がしっかりしてる。一見すると細身だが、そこいらのチンピラにゃ負けんだろうよ。多分相当強いぜ、この子。」
「なんかで鍛えたんじゃないのか?」
「この歳で、しかも下手すると死ぬような怪我をするような鍛え方か?」
・・・流石にそれはない。ぱっと見、15・6歳だ。傷が見ていないが、こいつが言うんだから間違いないだろう。とすれば、たしかにおかしい。
・・・ん?
「シャイル、おまえ、この子の服脱がせたのか?」
「なんか問題あるか?」
あちゃー・・・。
「シャイル、おまえなぁ、いくら何でもそれやったらセクハラだろ!?いい歳してそれぐらい理解しろってーの!!」
「・・・。」
返事がない。
「・・・おい。なんか言えや。」
そう言ってもシャイルは黙ったままだ。というか・・・。
「おい、どうした?」
・・・固まってる。動かない。揺らしてみようとすると、
手が通り抜けた。
「まさか・・・。」
触れない。何度やってもだ。
「おい、冗談だろ・・・?」
腕を振り回すと、どこもすり抜ける。
そのとき。はっと気づいた。
「ティーダ!?」
呼びかけてみるけど、ティーダは見向きもしない。
でも、声は聞こえた。
「ジル・・・?ジル、どこ・・・?」
・・・気づかないんじゃない。届かないんだ!
「ティーダ!おい、ティーダ!ここだ!」
「ねぇ・・・ジル!」
ティーダがそう叫ぶ。
「ここだ!ここにいる!」
やっぱり聞こえてない。
「ジル・・・!!」
そのとき。
あのときの黒い球が、
降りてきた。
光の出所は・・・
ティーダーの腕。
あのブレスレットを、
形成している。
「え・・・嘘・・・やだよぉ・・・!」
はき出すようなその苦しい声。
もう聞いてられなかった。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!」
ペンダントが、燃えだして、再びHoly Knightを形作る。
その剣が完成すると同時に、ティーダが気づいた。
「ジルっ!?」
そのまま、ブレスレットに剣撃を喰らわせる。
キリキリ・・・と音がして、割れた。
ばらばらと落ちるブレスレット。
「あっぶねー・・・。」
「ジルッどこ行ってたんだよっ!」
ティーダに言われる。
「そこにいたっつーの。」
返す。
「ホントにもぉ・・・。」
ティーダに言われるが、どうやら返す間もないらしい。
「・・・下がってろ。」
黒い球体からは、光が発射され、
ブレスレットの欠片に当たってあの怪物を、作り出した。




