008 近未来とイジメが交わる学園
向上心の高い生徒が多いらしい。まぁジョン曰く、強力な魔術師には国からお小遣いがもらえるというのだから、学生時点でやる気にもなるものなのだろう。
シズクとフロティーは流しのタクシーを拾い、いよいよメイド・イン・ヘブン学園──通称MIH学園へと向かっていく。
*
小規模な街並みの校舎は、近未来化が進んでいる。10個以上ある校舎は、ガラス張りになっていて、セグウェイを使って移動する生徒もいる。大広場があって、公園のように落ち着ける空間も置かれていた。
ただ、治安はよくない。そこらで誰かが誰かを殴打し、火の玉や雷撃──魔術でイジメられっ子を傷つける始末だ。
「フロティーさん、すごい学校ですね」
「そりゃあ、1年の学費が500万メニーだぞ。すげぇに決まってる」
「いや、そうじゃなくてイジメが」
「そういうもんだよ。仕方ないさ。持たざる者が悪い」
「薄情な言い草ですね」
「ここがMIH学園である以上、あたしの言ってることは正論になるのさ」
シズクは、若干フロティーに嫌悪感を覚えた。イジメを見てみぬふりするのが、正しさというのなら、それはMIHのルールが間違っているとしか思えない。
果たして正しいのはシズクか、フロティーか。まだ答えは出ない。
そうしてMIH学園内を歩いていると、
金髪の少年が、魔術かなにかで壁に磔にされていた。顔がピンク色に染まり、今にも呼吸困難で死にそうな雰囲気だった。
「さすがにあれは、助けたほうが良いんじゃないですか?」
「あれはウィンストン・スペンサーの一味だから、関わらないほうが良いぞ。この前言ったろ? アイツらから20億メニーのポーションを奪ったって」
あくまでもフロティーは無視を決め込むつもりらしい。そんな態度に少し腹を立てたシズクは、スタスタと磔にされる少年とそれを見て面白がる3人のイジメっ子の元へ歩いていく。
「やめとけってのに」
フロティーの忠告も完全にシャットダウンし、シズクはイジメっ子のひとりの背中を叩く。
「あ? ……おぉ、9歳でランクAに指定されたエリートじゃねェか。なンか用か?」
「イジメ、辞めましょうよ。格好悪いですよ」
「カッコイイとか、カッコ悪いとかの問題じゃないんだよなァ」それらしい理由がありそうな雰囲気だ。「コイツ、おれらの先輩が下ろしてくれたポーションを奪いやがった。20億メニー相当だぞ? 磔で済ませてるだけ優しいと思ってほしいもんだよ」
(フロティーさんが奪ったヤツか……)シズクはジトッとした目になる。「分かりましたよ。なら個人的に気に食わないので、力ずくで辞めてもらいます」
「おいおい! 9歳児に殴られたら大恥だぜ? いくらランクAだからって、所詮期待値込みだろ? だいたい、幼女に暴行したくねェし──」
言い切る前に、シズクは右掌で不良生徒の背中を叩く。
そうすれば、彼の背中は少しずつ凍っていく。
「痛てェ!!」
当然だが、凍傷というものは痛いものである。
だからたまらず不良生徒たちは臨戦態勢に入るが、
その前に、シズクは足元をパキパキ……と凍らせていく。
数十メートル範囲がスケート場のようになり、同時に不良たちの足が凍る。
「て、テメェ……!!」
足が凍っただけなので、まだ魔術を放つ余裕はある。
しかし、足に走る激痛で魔術なんて打てるとも思えない。
シズクは退屈げに不良たちを無視し、壁に磔にされていた金髪少年の元へ歩み寄っていく。
「大丈夫ですか?」
連中の魔術で磔になっていたからか、彼は自由に動けるようになった。腕をブンブン回し、やや涙目になりながら、
「大丈夫……」
そう力なく呟く。
「とりあえず、医務室へ行きましょう。どこか痛めてそうだし」




