007 退屈な日々にさようならを
「えっ」
驚いたのはむしろ、シズクのほうだった。エネルギー弾と銃弾が、氷のように固まってしまったからだ。
それと同時に、強盗たちも驚愕の表情を浮かべている。まさか、こんな幼女に自分たちの攻撃を止められるとは、夢にも思ってもいなかったからだ。
「クソッ、逃げろぞ!」
その一声で、マスクを被った強盗たちは窓から飛び降りる。それでもフロティーは寝息を立てていて、いろんな意味で羨ましいと感じてしまう。
「まぁ、なにもないのが一番だけどさ」
そう呟き、シズクは自分の部屋に戻っていく。その気になれば犯人も捕まえられるだろうけれど、実害がないのなら放っておいても良い。
*
襲撃事件の次の日。シズクは起きて、洗面台で歯磨きし始める。ボーッとした表情で、金髪の翠眼になった自分を見つめていた。
「可愛いなぁ」
自分に見とれてしまうくらい、今のシズクは美しい。体型もスマートで、顰め面しても様になる始末だ。
「おはよん、シズク」
「おはようございます、フロティーさん」
「なぁ、きのう強盗入った?」
「入りましたけど」
「ぶっきらぼうな返しだな……。ッたく、プレイヤー家を襲うなんて度胸のあるヤツらだ」
「そうですね」
「まぁ良いや。朝飯、ブレックファストで良いよな?」
「えぇ」
「ちょっと作ってくるよ。父ちゃんが家にいねぇときのほうが多いから、料理が得意になったんだ」
フロティーはリビングへと向かっていく。同時にシズクも歯磨きを終え、ダラダラとリビングへと向かうのだった。
「少し待ってろ。あと10分もすれば出来上がるからさ」
「ねぇ、フロティーさん」
「なんだね」
「MIH学園は、私服でも登校できるんですか?」
「できるよ。パジャマで行くこともできる。ただ、女子の制服は可愛いからな。ほとんどの女子は、学生服で授業を受けるぜ」フロティーは続ける。「けどまぁ、シズクはきょうから編入だからな。制服を作る時間もない。仕方ないんで、あたしの服貸してやるよ。パジャマで学校ってのも、嫌だろ?」
そんな会話を交わしているうちに、ブレックファストが出来上がった。トーストと目玉焼き、豆などが皿に盛り付けられている。
「イギリス料理はまずいって言いますけどね」
「作ってもらっておいて、失礼なヤツだな……。ま、イギリスで美味いもん食べたきゃ朝飯を3食食べれば良い。とりあえず食べてみろよ」
「はい」
フォークで豆を拾い、シズクはそれを食べる。
「うまい」
「だろ?」フロティーはカチャカチャと食べながら言う。「アンゲルスの食文化は、不毛の一言で片付く。元々イギリスの植民地だったし、農作地も痩せきっていたからまずいものしかなかった。最近は輸入でだいぶ良くなったけどな」
「ご飯がまずいと、気力がなくなりますもんね」
「そー。まずいもんばっか食ってると、自ずとうつ病になっちまうのさ」
食べ終わり、シズクはフロティーから私服を借りる。洗面所で着替え、シズクは思わず溜め息をつく。
「あぁ、僕はもう女の子なんだな……」
アンゲルスは寒い国なので、タートルネックの長袖黒Tシャツと青いコートを着るとちょうど良いようだ。
「似合ってるぞ。ガキの頃、父ちゃんに買ってもらったもんだけど」
「ありがとうございます」
「さて、MIH学園へ行くか。スクールバスとタクシー、どっちが良い?」
「どっちでも良いですよ」
「なら、タクシーだな。あたし、スクールバス嫌いなんだよ。高位の魔術師だから、良く睨まれてさ」
「僕もランクA相当だから、睨まれそうですね」
「そりゃそうさ。MIH学園は、ホープ先生から聞いたと思うけど、強さこそ美徳であり下剋上を狙う生徒も多いしな」




